第二十四話 隣の席のメユリさん
英雄学園の闇属性 「闇属性だから」とクズな両親に虐げられていましたが、本当の家族や友達に愛されて英雄になる夢を叶えます!【俺は必ず英雄になる!!】
元々は「英雄学園の闇属性」だけだったのですが、アクセス数の伸ばしたいという理由もあり、題名を変更しました。
昼休みが終わり、午後の授業が始まった。
コウシロウに作って貰った美味しい弁当でお腹いっぱいになってうたた寝しそうになるが、今日の授業は居眠り許されない。
「はい、それじゃあアクアちゃん。ここを答えてね〜」
そう。今日の授業は担任の母さんによる指名解答があるのだ。
ちなみに母さんは怒ると怖い。めちゃくちゃ怖い。
昔は【怒髪天のスカーレット】と呼ばれていたらしく、怒ると赤髪が燃え上がる。
そんな母さんに怒られない様に必死に
「すぴーすぴー」
隣の人を見ると馬鹿らしくなって来る。
隣のメユリさんはいつも寝ている。
自己紹介の時も、授業中も、昼食の時も寝ている。廊下を歩く時ですら寝てる。巨大なクッションまで持参している。
幸せそうな寝顔だ。眠っているせいか、あどけない表情はとても可愛らしい。
って、そうじゃない!
「それじゃあ次は〜、メユリさ〜ん、メユリさ〜んっ」
母さんにメユリさんが指名された。
このままじゃまずい、【怒髪天】が復活するぞ!
眠るメユリさんに顔を近付いて忠告する。
「お、おい、起きろって」
…………起きない。
仕方がない、と肩を揺すろうとした。その時だ。
次の瞬間には俺は全く別の世界にいた。
ウェディングケーキの様に巨大な城にお菓子の家、それにクマやウサギのぬいぐるみが兵隊の格好をしてラッパを吹きながら行進している。
可愛い空間が広がっていた。
「ど、どこだよ、ここ……」
突然の事に困惑した。
さっきまでいた教室とは全く別の世界だ。
そもそも、こんな場所はこの世に存在しない。するわけがない。
まるで夢の世界の様なーーーー。
「あれ〜? ラストじゃん。何でいるの〜? 私が夢想しちゃった〜?」
上から声が聞こえた。
そこには空に顔の付いた雲に乗ってぷかぷかと浮かんでいるメユリがいた。
「メユリ!」
「やほ〜」
相変わらず雲?に体重を預けてぐで〜ん、としているが目が開いてるのは初めて見た。
緑髪緑眼の彼女は垂れ目だった。
「ここはどこなんだ?」
「私の夢魔法 夢想世界だよ〜」
これが魔法? 夢属性なんて初めて聞いたぞ。
世界を創造する魔法なんて規格外にも程がある。あり得ない。
「ん〜? どうしてラストが夢の世界にいるのかな〜? ん〜、分かんないな〜?」
何やらのんびりとした口調で困惑している様だ。
「まあ〜、とりあえず〜、お茶でもしよっか〜」
ぽぽんっ、と可愛らしい音を出して俺の前には机と椅子、さらに紅茶セットと豪華なお菓子が現れた。
周りの風景も変わり、のどかな草原になった。
「これは」
「どうぞ〜」
「っ」
いつの間にかメユリは座って、紅茶を淹れていた。とりあえず俺もメユリと向かい合う様に座る。
淹れられた紅茶を飲むと美味しかった。
「あ、美味しいな」
「そうでしょ~ぅ?」
ついでにクッキーを一枚口の中に放って噛むとサクサクして甘さが溢れる。こんなに甘いクッキーは食べた事がない。
「でもこれって夢の中なんだよな? 何で味がするんだ?」
「んっとね〜」と唇に指を当ててユメリが教えてくれた。
「私の夢魔法は想像を創造する魔法なんだよ〜。だから〜一度食べた食べ物は創造できるし〜、食べた事のないお菓子も創造できるんだよ〜」
は、反則過ぎる……。
俺が考えたA組の勢力図が大きく見直されるぞ。下手すればメユリが最強説もあるぞ、これ。
想像を創造するなんて、想像力次第で何でも生み出せる事になる。
あー、紅茶が旨い。
「って、そんな事よりも大変なんだメユリ!!」
机に身を乗り出して、メユリの肩を強く握った。
突然の事でメユリはパチパチと瞬きしている。
「ど、どうしたの〜?」
「母さんに、先生にお前が指名されてるんだよ!」
「へ? そんな事で……?」
「そんな事って、母さんは昔【怒髪天】って呼ばれてて怒るとめっちゃ怖いんだぞ!」
やばい、あれはやばい。
【怒髪天】は本当にやばい。
やばいやばいやばい。
肩を震わして【怒髪天】に怯えているとメユリが
笑った。
「あはははっ!」
「なっ、笑い事じゃねえ!」
「だってそんな事でボクの夢の世界まで来たんでしょ〜? 変だよ〜」
「変じゃないって! 母さんはまじでやばい! ほら、起きるぞ!」
「うん。分かった。早く起きよ〜」
くすくす笑いながらもメユリは起きる事を決心してくれた様だ。
さささ
「あのね、ラスト〜」
「どうした?」
「これ、恥ずかしいんだけど〜。そろそろ離して〜」
あっ、そう言われてやっと気が付く。
未だに俺はメユリの肩に掴まっていた。
まるで
「ご、ごめん……」
「いいよ〜、もう」
ユメリは白い頬を薄紅色に染めた。
「たまには遊びに来てね〜。ラストならいつでも歓迎だよ〜」
その言葉を最後に俺の意識は元の世界に引き戻された。
どうやら時間は経っていない様だ。
母さんはメユリの解答待ちだ。
「むにゃ」
「あら。正解よ〜。流石はメユリちゃんね〜!」
ぷかぷかと文字が空中に浮かび上がった。
正解だったらしく、母さんもご機嫌だ。
「……起きてねえじゃん」
夢の中だと起きると言っていたメユリはまったく起きてなかった。
全く。最初から最後まで眠ってる奴だったな、メユリは。
「ラスト〜」
どんな夢を観ているのかわからないが、メユリは幸せそうに眠る。
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