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第十三話 VSナックル・バーン①



 試合が終わり、アクアは観客席に戻って来た。

 緊張で震えた時とは違って、試合に完勝して満足そうな笑顔だった。


「どうでしたか?」

「凄かったよ、まさかあんなに強かったなんて思ってなかった」

「ふふふっ。実は私、そこそこ強いんですよ!」


 若干ドヤ顔で自慢してくる。可愛い。

でもこれ以上のこの話題はアクアがさらに鼻を伸ばしそうなのでやめておこう。


「それにしてもアクアは王女様だったんだな」

「ええ。知らなかったんですか?」

「生憎と世情に疎くて」

「最初、私の事を知っていても敬語を使わずにいてくれて、少し嬉しかったんですよ?」


 ぷくっ、と頬を膨らませる。

 アクアは王族、王女様ともなれば友人目線でタメ口で話せる相手なんて稀だろう。


「まあ、これからもタメ口で喋るから、勘弁してよ」

「なら、許します」


 アクアは嬉しそうに足をぷらぷら揺らして、微笑んだ。






「受験番号 三百五十四番 ラスト・タキオス!」


 




 俺の名前が呼ばれた。

 ついに来たか、と唇を噛む。

 楽しかった時間もこれで終わりだ。


「え、ラスト?」

「それってタキオス家の……」

「タキオス家の闇属性か」


 観客席からぽつりぽつりと声が聞こえる。


「貴方がタキオス家の……」


 アクアの口からまでそんな呟きが漏れた。

 怖くて顔を見えない。


 タキオス家の闇属性。

 どこからその情報が漏れたのか、英雄クロノスの孫が生きていて、その子供は闇属性だったと言う噂が国中に広まっていた。

 別に俺が貶されるのは構わないが、家族タキオスが悪く言われるのは嫌いだ。


「あっ、あのーーー!」


 アクアの言葉を最後まで聞かずに闘技場に飛び降りた。






 舞台に降りると会場中の視線を一身に浴びた。


「あれが闇属性の」

「ケッ、何だってあんなクズが英雄学園に来てるんだよ」

「俺らに厄介事が来ねえ様に塩撒かねえとな、塩」


 好き放題言われてるが、他人から何を言われようが別に堪えない。


 相手を待つ事、数秒。


「待たせたなぁ!!」


 俺は観客席から飛び降りて来たが、相手はご丁寧に反対側の出入り口から現れた。


「ナックル・バーン、参・上!」


 その男、一言で言えば奇抜な格好をしていた。赤黒い髪はコーンロウという頭皮に沿って三つ編みのラインを編み込んでいた。

 ヤケに派手な羽織りには背中に喧嘩上等の四文字が刻まれている。

 イカツイサングラスの奥から睨みを効かされる。


「よう。テメェ、闇属性なんだってなァ!」

「まあ、そうだね」

「そんな奴が英雄学園に来て何しに来たんだよ」

「英雄になりに、かな?」


 そう答えるとナックルは下を向いて肩を震わせた。と思ったら顔を上げて。


「ならよ、俺と一緒だな!」


 ニカっ、と笑った。


 こんな返答が来るなんて思って無かったのでポカンとする。


「俺もよ、没落貴族なんて呼ばれてる落ちこぼれなんだよ」


 ほれ、と観客席を指指した。


「あれが没落貴族のナックルか」

「バーン家は素行の荒い者が多いと聞くが、あいつは特別だな」

「スラム街じゃあ、家の無いガキ共を束ねて何かのチームを作ってるらしいぜ」


 聞くと観客席の他の受験生が俺と同じくらい好き勝手言われていた。


「オレはスラムの子分共のためにも、負けてやるわけにはいかねぇんだ」

「それは俺も同じだ」


 爺ちゃん、父さん、母さん、クレア姉さん、ライオウ兄さん、リリとララ、みんなに助けて貰って俺はここに立っている。

 こんな場所で躓いている場合じゃない!


 審判が手を振り下ろし、試合開始の合図をした。


「試合開始っ!」


 試合開始早々、ナックルは地面に拳を叩き付けた。

 その地点から炎が渦巻き、地を這う様に拡散して行く。





「熱烈歓迎 灼熱絨毯レッドカーペットッ!!」





 っ、広範囲攻撃か!?

 炎が届かない距離まで飛び退いた。


 と思ったら、ナックルは走っていた。

 俺が後ろに退くのを予期していたのか、「灼熱絨毯レッドカーペット」を放った直後に既に走り出していたのだ。


「灼熱鉄拳 紅蓮灼拳ブンナグリッ!!」

「闇魔法 黒腕こくわんッ!!」

 

 ナックルは拳に炎を纏い、俺は拳に闇を纏ってお互いの拳にぶつけ合う。

 ビリビリっと衝撃波が駆ける。


「殴り合いを所望する!」

「望む所だ!」


 こうして、ナックルとの試合(殴り合い)が始まった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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