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第十二話 入学試験

題名を【嫌われ者の闇属性に産まれましたが、英雄になる夢を諦めたくありません! 〜本当の家族と破壊神が超絶過保護なんですが、学園でさらに過保護が増えました〜】から【英雄学園の暗黒使い】に変更しめした。


題名は変わりましたが、これからもよろしくお願いします。



 英雄学園がある王都にまでやって来た。

 流石は王都だ、様々な種族が集まって路上は出店で賑わっていた。王国中の物品が集まっているのか、見た事がない食べ物もあった。


「後でお土産に買って行こうかな」


 なんて暢気な事を考えながら英雄学園に向かって歩く。


 しばらく歩くとようやく学園に着いた。

 入り口で既に長蛇の列になっているが、どうやらアレが原因の様だ。


「こちらで入学試験の受付をしてまーすっ! ちゃんと順番を守ってくださーいっ!」


 英雄学園の入学試験は受験生が多い為、会場を幾つかに分けて行う。そのため、この入口の受付で番号の割り振りをしなければ行けない。

 人が集まるのを見越して受付を十個設置しているが、それでも受験生を捌き切れていない。見えるだけで二百はいそうだ。


 大人しく並んでいると自分の番が来た。


「では名前を教えて下さい」

「ラスト・タキオスです」


 俺の名前を聞いて、嫌そうな顔をして受付は対応した。


「……では、せいぜい頑張って下さい」


 それがこれから試験に行く奴にする態度か、と口に出そうとしたが我慢した。

 





 俺が割り振られたのは、闘技場・東。

 観客席が待合室扱いになっているので、適当な席に腰を下ろした。


 闘技場と名が付いているだけあって、建物の全体が円形だ。下の闘技場所は地面にはタイルが敷かれている。

 ちらほらと見えるが、全部で二、三百人はいそうだ。これだけの人数を今日一日で終わらせるのは厳しいのではないだろうか。


 試験の内容は一対一のタイマン試合で、その試合の内容を見て総評で評価される。負けてもチャンスはあるし、勝てばまた良し。

 シンプルなルールだが、分かりやすくて良い。

 要するに勝てばいいのだから。


「こんにちは」

「っ、どうも」


 突然、声をかけられて驚いて振り返るとそこには美少女が立っていた。挨拶をしてくれたのに、思わずぶっきらぼうな返事になってしまった。


「少し緊張してしまって、お話相手が欲しかったんですよ。隣いいですか?

「勿論良いぞ」


 許可が与えられたのを聞くと美少女は俺のすぐ隣に腰を下ろした。


「私はアクアです、よろしくお願いしますね」

「よろしく」

「ところで貴方の名前は……」

「それよりアクアはこの試合、どう見る?」

「えっ、そ、そうですね……」


 無理矢理に不自然な程に話題を逸らさせて貰った。いつかは俺の名前もバレる事も覚悟しているが、でも同年代の友人が欲しかった。

 だからせめてもの、俺の抵抗だ。


 そしてアクアと二人で行われて行く試合の見解を話し合いながらしていると、アクアが肩を震わせている事に気が付く。

 不思議に思い、どうしたのか聞いてみる。


「この闘技場って独特の雰囲気ですよね、特にこの観客席では他の受験生の殺気が加わって来て……」


 固唾を飲むアクア。

 緊張からか恐怖からか、それが肩を震わせた原因か。

 確かにこの会場では重い殺気とプレッシャーが感じられる。


 こんなものは気にしなければ良いのに、とは言えない。

 俺が大丈夫なだけで、アクアには無理なのだ。

 俺の常識を押し付けてはいけない。

 

 ならばどうするか?と考えていたその時だ、アクアの番が来たようだ。


「受験番号 百五十四番 アクア・リーズバルド!」


 ビクッ、とアクアの肩が震えた。

 だが、どうやら緊張に呑まれているようだ。


 …………野郎ならともかく、アクアとは一緒に学園生活したいからな。

 ガシっ、と両手でアクアの両頬を挟んで無理矢理、俺の目を見させる。


「アクア、こっちを見ろ」

「へ?」

「いいな? アクアなら絶対に大丈夫だ」


 真っ直ぐにアクアの目を見て言う。


「根拠は特に無いが少なくとも俺が保証するよ。きっと大丈夫。頑張れアクア!」


 何とも説得力の無い応援だな、と言ってる自分でも思う。


 今度はアクアの右手を俺の両手で包む様に握る。闘魂注入では無いが、頑張れと気を送っておく。


 けれどアクアはこんな事で元気が出た様だ。


「行って来ますね、終わったらまたお話ししましょう」

「おう」


 笑顔でアクアは舞台に降りて行った。

 その目はさっきまでの恐怖に染まった物ではなく、自信に溢れていた。


 



 闘技場の舞台に降りたアクアは試合相手と対峙していた。


 ザッパリー・ヤルマーク。事前情報では、炎魔法の使い手で将来有望と言う話も良く耳にしていた。


 しかし、アクアの試合前の緊張はすでに消え失せていた。代わりに両頬と右手に残る暖かい感触に、頬が緩みそうになる。


「……そう言えば、男性に触れられるのは初めてでしたね」


 この呟きは誰にも聞き取られなかった事がアクアにとっての


「アクア様だ」

「流石は王族、凄まじい集中力だ」

「御父上にも匹敵する才能を持っているんだろう?」


 などと観客席が騒がしくなる。

 それほどまでにアクアの、王族という存在は注目を浴びるのだ。


「お初に御目にかかります、アクア王女。ですが、今日は全力で勝たせて頂きます」

「…………え、あ、はい、よろしくお願いします?」


 実は考え事で聞いてなかったのは秘密だ。


「試合開始っ!」


 審判から開始の合図と共にザッパリーは炎魔法 突貫炎槍ファイアフレイム・スピアを放った。一点集中の突貫型の魔法だ。

 王族の魔力は凄まじく、持久戦になればザッパリーは簡単に負けてしまうだろう。だから短期決戦に持ち込むために先手必殺の技を放った。


 作戦で言うならば十分過ぎるものだった。しかし。


 ーーーー海魔法 大海の渦


 突如として現れた“渦”がザッパリーの魔法を飲み込んで無効化した。


 それにはザッパリーだけでなく、観客席のラストも驚愕を受けた。


(防御系の魔法か? いずれにせよ、あのレベルの魔法を簡単に無効化できるのはヤバいな。俺が全力でも敵うかどうか…………)


「くっ、ならば吸収出来ないほどの魔法で倒すまで! 炎魔法 大爆炎鳥クリムゾン・フレイム・バード!」


 ザッパリーは作戦を切り替え、物量で押す作戦を取った。開始早々攻撃スタートダッシュアタックが通用しなかった以上、この状況ならそれしかない。


「海魔法 大海鯨マリンホエール


 しかし、それすら乗り越えるのが王族、アクアである。


 渦が一瞬で形状を変形させ、巨大な水の鯨を生み出した。そのデカさは簡単に闘技場の舞台を呑み込むほどで、ザッパリーを魔法ごと吹き飛ばした。


「しょ、勝者、アクア・リーズバルド!!!」


 圧倒的だ。完封勝利とはまさしくこの事。

 これがアクアの実力、海魔法の力か……。


 この大量の水で破壊された闘技場の舞台を見て、会場は一瞬で静かになっていた。

 自信を失った者もいるのか、何人かは席を立ってどこかに去って行った。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

作者のモチベーションアップにも繋がりますので、ブックマークや高評価、感想など是非よろしくお願いします。

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