第十一話 四年後
あれから四年が経った。
全ての修行が終了して、休養期間だと言い渡されて今は屋敷でのんびりと過ごしている。
「「ラストお兄様っ!」」
「お〜、今日も二人とも可愛いな〜っ!」
「「えへへ〜っ!」」
成長した双子の姉妹、リリとララが今日も可愛い。
二人はそれぞれの髪色のドレスを着ている。
うん。可愛い。控えめに言って天使だ。
俺が挫けそうになった時、何度この可愛さに助けられたことか。
「今日はどうしたんだ?」
「お父様が呼んでたよ!」
「大事なお話があるんだって!」
珍しいな。父さんが呼ぶなんて。
リリとララの頭を撫でて「ありがとう」と伝えると嬉しそうに走って行った。
父さんの書斎だ。
三回ノックをして入る。
「失礼します」
「うん、入って良いよ」
「父さん、何か用事ですか?」
俺も四年間もこの屋敷にいれば、ようやく慣れて普通に父さんと呼ぶ事が出来た。
「まずは四年間の修行、お疲れ様」
「ありがとうございます」
もう何度目かになる「お疲れ様」だが、何度言われても嬉しいものだ。
「これを」と一通の封筒を机の上に置いて、スッと前に出した。
開いてみると試験案内状と書かれていた。
「英雄学園の入学試験だよ」
「学園、ですか……」
「うん、英雄になるための登竜門さ。英雄ランキング一位のガンドルフ様が理事長を勤めていて、実際に卒業生も英雄ランキングに入っている」
どこかで聞いた事があると思ったらライオス兄さんが通っている学園の名前だ。今がニ年生だから来年で卒業だが、それでも俺が入るとしたらその年には三年生だ。
「でも今更、そこに入ってもメリットはあるんですか? 冒険に出た方が幾分か良さそうなものですが」
「まあラスト君の言う事も最もだ。だけどね、そこにはラスト君と同年代の子も沢山いるだろう」
まあ学園だし、大体は同い年が集まるだろう。
「学園生活で仲間達と高め合って来なさい。英雄には常にライバルがいるものだよ。それにそう言う場所の方が友達も彼女も出来やすいだろう」
それは確かに……。
英雄には高め合うライバルや多くの友達や仲間がいた。その人達が英雄を強くして行った。
「まあ、三年くらいは楽しんで来なさい。これはせめてもの親心だと思ってよ」
優しい目で父さんは言った。
せめてもの親心と言うけど、父さんにはこれまでも何度も助けてくれた。
なら、このくらいのお願いは聞かないと。
結局、俺は英雄学園の入学試験を受けてみる事にした。
バタンっと勢い良く扉が開かれた。
「ええ!? ラストちゃん、学園に行っちゃうの!?」
扉の前で聞いていたのか、母さんが涙ながらに抱き着いてきた。
「いやいやいや! ラストちゃんがいないなんて寂しいもん!」
ギュ〜ッと抱き締められる。
おっぱいが柔らかい。
「え〜! ラストお兄様、出て行くの!?」
「やだー!!!」
今度はリリとララ、ちびっ子二人もやって来て足に抱き付かれる。
「やー!」と子供が駄々をこねるみたいだ。
何だろう、ライオス兄さんが学園に行く時はここまで騒がれてなかった様な気がするんだけど……。
そんな俺を見兼ねたのか、父さんが苦笑しながら助け舟を出してくれた。
「まあまあ、ラスト君のためだと思って。ね、ラスト君?」
「……………………やめようかな」
「ラスト君!!?」
いや、だって……これは無理ですよ。
正面から母さんに抱かれて、両足をがっしり双子にホールドされて、こんなの抜け出せない。
もうこの人達大好き……っ。
「はあ。この子らも大概だけど、君も家族大好きになっちゃったね」
「もう大好きですよ」
「ははっ。
「もちろん、父さんも大好きだよ」
「っ…………背中が空いてるね」
「どうぞ、アナタ!」
「「どうぞーっ!」」
結局、父さんも加わって俺は全方位から抱き付かれるハメになった。
家族に愛されて俺は幸せだ。
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