第九十八話 武器の新調
結局、禁書の棚の残りの部分をチェックしてみるも、特にめぼしい本はなかった。
というより、残りも全部開くだけで呪いがかかる本ばかりだった。
本当に、「開發の書」だけが例外だったようだ。
禁書の棚をチェックし終えた後は、普通の図書の棚を見ていくことにした。
普通の図書の棚にある本は全部古文書だったが、《鑑定》が+255もあれば完全に翻訳できるのでどうということはない。
タイトルを順に鑑定して見ていった限り……肝心の本の内容は、実用書に関しては全てが古代魔法関連のものだった。
古代魔法は、「永久不滅の高収入」がやってる生贄を必要とする儀式を経ないと使えないので、それらが俺の役に立つことはないだろう。
他には歴史書とかもあったが、今すぐ役に立つ何かがそこから得られる感じではなさそうだった。
ジョブ別のスキルの指南書系はスキルポイント制のノービスには関係ないのでパスだ。
というわけで、俺は図書館を出ることにした。
今度また来るとしたら、「永久不滅の高収入」を完全に退治できた後、歴史書を余生の趣味として読みに来る時とかになるだろう。
図書館を出てからは、この古代遺跡の他のパートを見ていくことにした。
すなわち、博物館と研究所だ。
適当にそこらへんの魚介系魔物を相手に無双ゲージを再充填すると、さっきとは別の扉を開いた。
今度は博物館だった。
入っていろいろ《鑑定》してみるも、歴史的価値こそありそうなものの実用的なものは皆無という印象だった。
ここもまた、「永久不滅の高収入」を完全に退治できた後とかに、考古学者を連れて案内しにでも来るとしよう。
そして最後に入ったのが、研究所。
こちらは最初の二つとは違い、入る時の《絶・国士無双》が多いに役に立った。
というのも……ドラフトチャンバー的なものと思われる魔道具が機能停止していて、部屋中に様々なヤバい薬品が充満していたのだ。
あまりのカオスっぷりに、ここから何か有用なものを見つけるのはほぼ無理だろうと思い、俺は扉をそっ閉じしてきた。
全部の施設を見終わったので、真上に向かって泳いで海上に出る。
またいつでも来れるように、《ストレージ》から浮遊移動魔道具を取り出して乗ると、今いる座標を「古代遺跡の真上」という名前で登録しておいた。
◇
そのまま、俺は屋敷に直帰した。
まだ昼過ぎだったが、今日は「ゲリラステージ」での狩りよりも優先したいことがもう一つあるのだ。
何かというと……武器の新調だ。
俺は普段使いの武器として、今までディバインアローの剣を使ってきた。
素材となったディバインアローはかなり貴重な魔物で、その分「《三日月刃》の威力を劇的に上げる」という効果を持つ、非常に優秀な素材であった。
ゆえに、俺はこの剣をずっと重宝してきた。
が……いくら貴重で優秀な素材とは言っても、それは俺がまだ大して強くなかった頃の話。
「ゲリラステージ」で7桁級の魔物を狩れる今となっては、手持ちにもっと強力が武器を作れる素材がいっぱいある。
だから、ここらで武器を切り替えようと思ったのだ。
というわけで、屋敷に着陸すると、俺は歩いて王都の鍛冶屋に向かうことにした。
ディバインアローの剣を作った時みたいに、塩対応されるのはもうご免だからな。
今回はそのリスクのない、以前自分用のチャレンジコインを作ってもらった鍛冶師に依頼しようと思っている。
鍛冶屋に入ると、鍛冶師はすぐ俺に気づき、話しかけてくれた。
「おう、君は例のチャレンジコインの子じゃねえか!」
どこぞの塩対応鍛治師とは違い、気さくな対応である。
「その節はお世話になりました」
「いいってことよ。それより……聞いたぜ? あの後幻蝶の長官と飲んだんだけどよ、君と一緒に行動したメンバーたち、コイン貰って感極まってたってな」
「そ、そうなんですね……」
そんな気軽な感じに「飲みに行った」とは、この鍛冶師、幻蝶と結構親交があるんだな。
……おっと、俺は世間話をしに来たわけではないのだ。
早速、武器づくりの本題に入らせてもらおう。