第九十二話 属性変化領域、本格運用
書籍版2巻、絶賛発売中です!!
口絵も挿絵もマジでサイコーなので是非手に取ってみてください!
浮遊移動魔道具を操縦し、十数キロ離れた位置に移動する。
「じゃ、俺はここで戦いますんで。二人はさっきの地点なり、安全な場所に戻っといてください」
そう告げると、俺は浮遊移動魔道具から降りた。
「分かったわ」
ナーシャはそう言うと、浮遊移動魔道具のハッチを閉め、もと来た方向に飛んでいった。
さっきの場所は、リヴァイアサン系だらけだったからな。
少し場所を変えたんだし、せっかくなら今度はちょっと別の魔物も見てみたいものだ。
「《ストレージ》《国士無双》」
《ストレージ》から「ゲリラステージ」と「属性変化領域」を取り出すと、「ゲリラステージ」を起動する前に《国士無双》状態に入る。
それから「ゲリラステージ」を起動した。
すると……海面から、ボコボコと無数の泡が湧いてきた。
どうやら並行世界ではちょうど真下あたりに海底火山があるようだ。
それもあってか……今回現れた並行世界の魔物の中には、海にしては珍しい奴が一体混じっている。
全身が燃え盛る、隼を巨大化させたような魔物――ホルスだ。
まさか海上で、火属性の敵に会おうとは。
ちなみに他に見えている敵は、ドラゴニックメデューサとヒュドラの2体がいるのだが、これらはどちらも水属性の魔物だ。
ドラゴニックメデューサとは、髪が蛇ではなく竜のメデューサで、石化とかは使ってこない代わりに髪の竜一本一本はブレスを放ってくる獰猛な魔物である。
ま、元が何属性だろうが、今から全員まとめて聖属性にしてしまうんだがな。
俺は「属性変化領域」を発動した。
すると……テトロードと同じく、ホルスもドラゴニックメデューサもヒュドラも、全員が聖属性に変化した。
今回やるのは、「崩壊粒子砲」に頼ることなくコイツらを倒せるかの実験。
あとはひたすら《断聖の刃》を放ちまくるのみだ。
まずはどいつから狙おうか。
「……って、迷ってる余地はないな」
最初の狙いはヒュドラにすることにした。
というのも……ヒュドラ、聖属性になった直後から急激に弱りだしているのだ。
原理は分からないが、おそらく聖属性にしたことが原因で、自身が持つ毒への抵抗力を失いでもしたのだろう。
もしそうなら、ほっとくと奴は近いうちにアポトーシスを起こしてしまうはずだ。
自死されては、俺がスキルポイントを手に入れることができない。
それだけは回避せねば。
「《断聖の刃》《断聖の刃》《断聖の刃》……」
俺はヒュドラに向かって9回斬撃を飛ばした。
全ての頭が落ちたところで、ヒュドラは絶命した。
「いっちょあがり。次は……」
次の狙いは、ドラゴニックメデューサにすることに。
理由は、ホルスとドラゴニックメデューサだと、ドラゴニックメデューサの方が弱いからだ。
ドラゴニックメデューサすら倒せないようでは、ホルスを倒すことはできない。
実験を兼ねている以上、段階的に試していく方が理にかなっているだろう。
「《飛行》」
俺は高速で飛び、ドラゴニックメデューサの背後に回り込んだ。
なぜならドラゴニックメデューサの弱点が、後頭部の首筋あたりにあるからだ。
ヒュドラと違って、ドラゴニックメデューサは別に髪の竜全員に心臓があるわけでも全部倒さないと復活するわけでもないので、本体を仕留めてしまえばそれで終わり。
後頭部に斬撃を集中させて、一挙にかたを付けてしまおう。
「《断聖の刃》《断聖の刃》《断聖の刃》……」
再び何度もの聖属性特攻付きの斬撃を放ち、敵に浴びせる。
「グワアァァァァァァ!」
ドラゴニックメデューサは悶絶の叫び声を挙げながら、髪の竜からはブレスを乱発させた。
が、コントロールまではする余裕がないのか、全部真上に放たれているので何の問題もない。
「ガァ……ァ……」
そんなドラゴニックヒュドラも次第に衰弱し……そして絶命した。
あとはホルスだけだな。
ホルスは特に急所らしい急所が無いので、ひたすら斬撃を当てまくるしかない。
しかも動きも俊敏なので、飛び道具で攻撃するなら偏差射撃は必須だ。
「《Xの眼》《断聖の刃》《断聖の刃》……」
俺は縦横無尽に飛び回るホルスに的確に斬撃を浴びせ続けた。
十回、二十回と、斬撃の命中を重ねていく。
……の、だが。
「あんま効いてる感じがしないなあ」
正直、手応えはあまりよろしくなかった。
全く効かないわけではないのだが、どこにどう斬撃が命中しても、せいぜいミミズ腫れができる程度の傷しか負わせられないのだ。
この調子じゃ、《国士無双》終了までに倒せそうもないな。
かといって「崩壊粒子砲」を使うかというと、今から使い始めても、チャージ完了まで《国士無双》の効果時間が持たない。
「……一旦諦めるか」
俺は「ゲリラステージ」のスイッチを切り、ホルスを並行世界に帰した。
ホルスを残したまま《国士無双》の効果時間が終了すると、俺の身が危ないからな。
これを踏まえ……俺は一つの結論に到達した。
それは、「入手スキルポイントが6桁の魔物しかいない場合、聖属性化からの《断聖の刃》で倒すべし。7桁級がいる時は『崩壊粒子砲』を使う」というものだ。
ゲリラステージの魔物には一つ特徴があって、討伐時の入手スキルポイントは999999以下か1000000以上かで、強さがガクンと変わる。
そして俺は、6桁級の中では割と強い方であるドラゴニックメデューサを楽勝で倒せたのに対し、7桁級の中では標準的な強さのホルスには、「崩壊粒子砲」ナシでは有効打を与えられなかった。
そこから導き出される答えは……敵が6桁級か7桁級かで戦略を変える必要がある。
そういうことになるわけだ。
7桁級に関してはないものねだりをしてもしょうがないが、6桁級を「崩壊粒子砲」ナシで倒せる以上は、せっかくなら魔石以外の素材も集めたいからな。
次の「ゲリラステージ」戦からは、その方針で行くとしよう。