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第五十六話 帰還

 始めは特に魔物の姿は見当たらなかったが……床の割れ目からは白色のガスが吹き出し、そのガスが一か所に集まりだした。

 一か所に集まったガスはしばらくもぞもぞと動いていたが……次第にハッキリと形を形成しだし、しまいには巨大な鎌を構えた人型の魔物が完成した。

 と同時に、この空間に繋がっていた通路には扉が出現し、俺は完全にこの空間に閉じ込められることとなってしまった。


「……トリガーフィールドか」


 トリガーフィールド。

 NSOの洞窟に時折見られる、特定の条件を満たした際に特殊な魔物が出現する場所が、そう名付けられている。


 おそらく、ゴールデンスクアルエルの殲滅あたりが、この空間のトリガーだったのだろう。

 トリガーフィールドに魔物が出現したら、その魔物を倒すまで頑丈な扉で空間が閉ざされてしまうため、ここから出るには魔物を倒すより他ない。


 ……いや正確には、扉にも耐久値が設定されているため「崩壊粒子砲」あたりで無理矢理ぶち壊すことは不可能ではないのだが。

 そんなことをやってしまうと周囲への被害が甚大なことになってしまうので、まあ普通に攻略するとしよう。


 問題は出現した魔物の種類だが……あの外見は、ホーリーネクロマンサーでほぼ間違いないな。

 ホーリーネクロマンサーは、洞窟内で一年以内に死んだ魔物を自由に蘇らせ、下僕として戦わせることができる魔物だ。

 ただし強い魔物ほど蘇生には時間がかかるので、例えば「セイントザウルスレックスを倒すたびノータイムで復活させられる」みたいな絶望的な状況になることはない。


 一個注意すべきなのは、ホーリーネクロマンサー固有の特殊技である「身代わり蘇生」。

「身代わり蘇生」で蘇生させられた魔物は範囲攻撃無効かつ蘇生順に倒さないとダメージが入らない上に、全滅させるまでホーリーネクロマンサー本体にダメージが入らなくなるので、雑魚を無視して本体から倒すということができなくなるのだ。


 だいたいの場合、ホーリーネクロマンサーは「身代わり蘇生」で雑魚を大量蘇生しつつ、それらが倒されるまでの時間を利用し強力な魔物を蘇生してくることが多い。


「断聖の刃」


 試しに一体目の「身代わり蘇生」が完了する前に決着をつけられないかと思い、間髪入れずにホーリーネクロマンサーに斬撃を飛ばしてみたのだが、ギリギリのところでラッキーラビットを蘇生させられてしまった。

 ちなみにホーリーネクロマンサーが蘇生したラッキーラビットは古来人参を咥えていないので、本当に何の価値もないただの雑魚兎だ。


 ま、NSOでもホーリーネクロマンサー相手の先制攻撃が成功した試しはないので、だいたいこうなるのは分かっていたことだ。

 即座にラッキーラビットを倒すも、その頃には既に10匹のスクアルエルと50匹ほどのゴールデンスクアルエルが蘇生完了してしまっていたので、もう正攻法で攻略するしかなさそうだ。


「国士無双、Xの眼」


 範囲攻撃は効かない以上、この数のスクアルエル系を相手するには「国士無双」を使わざるを得ないので、とりあえず発動。

 そして「Xの眼」で最短時間での殲滅ルートを確認しつつ、全ての蘇生体を討伐した。


 さて、ここまで約30秒。

 このくらいの時間があれば、そろそろセイントザウルスレックスが蘇生されてもおかしくないはずだ。

 警戒しつつ、俺はホーリーネクロマンサーに向かって剣を構えた。

 が……新たな魔物が出現する様子は、全く見られない。


 というか……ホーリーネクロマンサーの表情は、心なしか若干焦っているように見受けられた。

 まるで俺がこの時間でスクアルエル系の群れを殲滅したのが、計算外だったとでも言わんばかりにだ。


 それを見て……俺は確信した。

 コイツ、大天使アルムを蘇生しようとしているんだな。


 確かに、大天使アルムがこの場に出現するとかなり厄介なことになるところだった。

「国士無双」発動中の人間がいる空間では大天使アルムは即刻目が覚めてしまうし、「チェンジ」が刻まれた聖属性の魔石を持ち合わせていない以上、「セイクリッドライフル」を放たれる前に倒すのはかなり難しい。


 やるとしたら、かつてジーナにアースクェイクの魔石を渡して作ってもらった魔道具を用い、それ専用の新たな奥義を取得して必殺技を放つくらいしか対処法はなかっただろう。


 だが……そんな大天使アルムを蘇生するには、ホーリーネクロマンサーの実力では3分ほどかかってしまうのだ。

 むしろ、ありがたい計算ミスをしてくれたものだ。


「ありがとうな」


 何度か「断聖の刃」で斬りつけると……ホーリーネクロマンサーは霧散し、そこには魔石一個だけが残った。

 そして同時に、俺を閉じ込める貯めに出現していた扉も透明になって消滅した。


「ストレージ」


 この魔石は……アルムコアほどではないにせよそこそこ希少価値の高い部類なので、まあ売らずにいつか何かに自分で使うとしよう。

 トリガーフィールドの魔物は倒すと莫大なスキルポイントが手に入るのだが、コイツからも例に漏れず389000ものポイントが入手できたし、収穫は文句なしだったな。


 トリガーフィールドが機能を取り戻すには3〜5か月の時間を要するので、ここでリスポーンを待ってポイント乱獲とはいかないのが残念なポイントだが、まあ贅沢はいうまい。

 むしろ問題は、ここのホーリーネクロマンサーが大天使アルムを蘇生しにかかってくることだな。

 万が一セイクリッドライフルを放たれては一巻の終わりなので、ギルドには「ここにゴールデンスクアルエルの群れが復活していても全滅させてはだめだ」と伝えておくことにしよう。


 やっと調査が終わったことに晴れ晴れとした気分になる中、俺は地上を目指した。

 地図のプリントアウトとかやることを終えたら、早速ギルドに報告だな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 連載当初の最初は面白かった。 [気になる点] 100話の壁を越える以前に、駄文になった。 [一言] システムじゃんけんの設定説明が毎回毎回で、長々とされたら駄文になるんよ。 大好きな食べ物…
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