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第五十四話 亜種討伐、そして例の魔物との邂逅

 俺の目の前に現れたのは、体高15メートルほどはあると思われる二足歩行の恐竜型の魔物。

 ──セイントザウルス・レックス。

 聖属性の代表的な恐竜型の魔物である、セイントザウルスの突然変異種だ。


 この魔物の特徴は——まず何と言っても、とにかくデカいこと。

 通常のセイントザウルスは体高6メートルほどなのに対し、レックスは2.5倍もあるので、目の前に現れた時の迫力は段違いだ。

 デカいだけあって、通常のセイントザウルスよりパワーに優れているだけでなく……皮膚もセイントザウルスとは比べ物にならないくらい頑丈で、そして理不尽なことに敏捷性までこの魔物のほうが上だ。


 だが……この魔物にはそれらの特徴が誤差に思えるほどの、セイントザウルスとの決定的な違いがもう一点存在する。

 通常のセイントザウルスの攻撃手段が炎のブレスであるのに対し、この魔物の主力攻撃手段は、全長の三分の二を占める異様なほどに長い尻尾なのだ。


 この魔物の尻尾はとにかく長いというだけではなく、その先端はオリハルコンで覆われていて、全身の中でもとりわけ頑丈にできている。

 そんな尻尾を、この魔物は鞭の達人のごとく自由自在に振り回してくるのだ。

 先端の最高速度はマッハ10を超えるため、当たった物は大抵木っ端微塵になるし、生物ならほとんどが即死する。

 その上この魔物は極めて高い空間認識能力と物理演算能力を持つため、武術を極めた人間であっても、躱すのは非常に困難だ。


 通常のセイントザウルスであれば、スクアルエルの群れに喧嘩を売ろうものなら「半数は殺せるが残りに噛みちぎられる」といった具合の戦況になるだろうが、この魔物の鞭術の前にはスクアルエルでは近づくことさえ不可能だろう。

 ここに餌を探しに来たのも頷ける。


 スクアルエルの方はぶっちゃけ「国士無双」無しでも何とかなる魔物だったが、こちらは正真正銘「国士無双」の無敵状態を活かさなければ手も足も出ない魔物だ。


 とはいえ……悪いことばかりではない。

 通常のセイントザウルスは一体倒しても13000ポイントしか手に入らないのに対し、セイントザウルスレックスは倒せば86000ポイントももらえるしな。


 張り切って倒伐させてもらうとしよう。


「国士無双」


 そう唱え、俺は二回目の「国士無双」を発動した。

 俺の全身が金色に輝くと同時に……無双結晶の方は、輝きを失う。


「ストレージ」


 次に俺は、ディバインアローの剣を収納した。

 尻尾の先端で剣を狙われたら、最悪破壊されかねないからな。

 ここぞというタイミングでトドメを刺す時のみ、取り出して使用するつもりだ。


 セイントザウルスレックスはしばらくの間、狙っていた魔物がいなくなっている状況を不思議がっていたが……俺に気づくと、瞬く間に尻尾を振り回し始めた。

 直後、俺は猛スピードでどこかに吹き飛ばされていくのを感じた。


「国士無双」発動中ゆえ痛みも怪我もないが、おそらく尻尾でぶっ叩かれたのだろう。

 洞窟の壁をブチ抜いたのか、気がつくと俺は来たこともない通路に立っていた。


「サーチ」の情報をもとに、セイントザウルスレックスのいた場所を目指して走る。

 すると……運がいいことに、通路を抜けた先には背中を向けたセイントザウルスレックスがいた。


 普通に元の場所を目指したつもりだったが、結果として回り道して背後を取ったような形になったな。

 相手も気づいていないみたいだし、今が絶好のチャンスだ。


 俺はセイントザウルスレックスの尻尾の付け根にしがみつき、そこからロープ登りの要領で先端を目指した。

 オリハルコンで覆われているところまでやってくると……俺は力ずくでオリハルコンを引っぺがしていく。


「ストレージ」


 オリハルコンを引っぺがし終わると、ディバインアローの剣を取り出し、尻尾のオリハルコンで覆われていた部分に剣を突き刺した。


「グギャアアァァァァァ!」


 豆腐を切り裂くかのように、ディバインアローの剣はスッと尻尾に突き刺さり、それと同時にセイントザウルスレックスが金切り声をあげて悶絶する。

 実は……普段オリハルコンに守られている分、その内部は刺激に慣れておらず、ちょっとした傷さえ激痛の原因となるのだ。

 だからこうして剣を突き刺せば悶絶するし、このセイントザウルスレックスはもう今までのように尻尾を振り回すことはできない。

 こうなってしまえばもう、この魔物にできるのは通常種と同じくブレスを放つくらいなので、「国士無双」発動中の俺からすれば無力化できたも同然だ。


 セイントザウルスレックスは痛みから全身硬直したまま、口を開けっぱなしにして泡を吹き始めた。


「断聖の刃」


 俺はその正面に周り、口の中に斬撃を放り込む。


「グッ……」


「断聖の刃」は喉の内部から頸動脈を切り裂き、致命傷を与えた。

 しばらくするとスキルポイントが86000増え、討伐完了の合図となった。


「ふぅ……」


 手間はかかったが、むしろ今までの魔物は歯ごたえなさすぎだったので、マンネリ解消にちょうど良かったな。

 本当は適度な頻度でこのくらいの魔物が出てきてくれればいいんだが、セイントザウルスからレックスへの突然変異はそんなに起きるものではないので、あまり期待はできないだろう。


「ストレージ」


 引っぺがしたオリハルコン含め、セイントザウルスレックスの死体を丸ごと収納する。

 これくらいの戦闘がもう一度くらいはできることを期待しつつ、俺は更に奥を目指すことにした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 壁をぶち抜いて吹っ飛ばされたって事は距離もソコソコあるだろうし パワーも距離も十分そうだから明言はされてないけど 無双ゲージ一回分位貯まってたりするのかな?
[一言] 書籍化おめでとうございます。 今日の夕方から一気読みさせて頂きました。 この作品は普通のチート無双物とは違って安っぽさは皆無で、一度たりともダレる事なく、爽快感を維持しながら読んでしまいまし…
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