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第四十七話 魔物を売りに行った

 ギルドの受付にて、俺は「ストレージ」からセイクリッドブル、バイコーン、そしてスレイプニールに死体を取り出した。


「こちらを売却したいのですが」


「分かりました!セイクリッドブルにバイコーンですね。……ところで、こちらの馬の魔物は一体?」


 受付嬢はそう言って、売りに出した魔物の確認を取っていったが——スレイプニールの死体に目をやったところで。

 彼女は見たことのない魔物だとでも言わんばかりに、訝しげな表情を作った。


「スレイプニールです」


「スレ……何ですかその魔物は……? 聞いたことありませんが……」


 洞窟の未探索領域にしかいないであろう魔物とはいえ、存在くらいは知っているかと思ったが……そうでもなかったか。

 掘削のこともかねて話すとするか。


「洞窟の最深部、異常に足音が響いたんで地面を爆砕してみたんです。すると更に奥に、空間ができてまして。そこで見つかったのがこの魔物です」


 というわけで俺は、この魔物に出会った経緯を伝えた。


「さ……最深部より奥!?」


 すると受付嬢は、目を丸くして口をパクパクさせつつ、そう聞き返した。


「あの洞窟に、続きがあったというのですか?」


「はい。超上級者向けという割には魔物が弱かったので、既出部分以外の場所もあるんだろうなと思いながら歩いていたら……足音で気づけました」


 まあ確かに、初めて入る洞窟に対し「地面を掘れば奥に繋がってるかも」なんて考えながら進む人なんて滅多にいないよな。

 俺だって、「最深部はこんなもんじゃないはずだ」という思いがなければ、そんな発想には至らなかっただろうし。


 などと思いつつ、俺はそう説明を付け足した。

 それを聞くと受付嬢は、呆れたようにため息をつきつつこう口にする。


「いや、あれはバイコーンとかが出てくるから超上級者向けという表記にさせていただいているんですが……」


 となるとこのギルドは、やはり冒険者の生還率を第一に考え、評価を厳しめにつけるタイプなんだな。

 それはそれでギルドの方針の正解の一つだし、決して悪い事ではないだろう。

 ギルドの方針にほっこりした気持ちになっていると、受付嬢は今度はこんな質問を投げかけてきた。


「ちなみにお聞きしたいのですが、スレイプニールってどれくらいの強さなんですか?」


 そんなギルドだけあって、新領域に対する関心は真っ先にガイドライン作成に向く、といったところだろうか。

 受付嬢が欲しがっているのは、新発見の魔物に関するデータのようだ。

 そういうことなら、単純な強さだけでなく、弱点なども教えた方がいいかもしれないな。


「単純な頑丈さで言えば三倍くらいですね。ただ動きが直線的なこと、鬣の付け根に急所があることを抑えていれば、実質的な戦闘難易度はバイコーンと変わらないです」


 というわけで俺は、倒し方まで含めそう答えた。

 ここに関しては本当に嘘偽りなく、バイコーンを倒せる実力のある冒険者なら工夫次第でスレイプニールは倒せるからな。

 力だけに極振りした、技術とか関係無しに敵を叩きのめすタイプにパワーファイターにとっては手こずる相手かもしれないが。

 その路線でバイコーンを倒せるレベルまで来る人はそうそういないだろうし、難易度は変わらないと言い切ってまず問題ないだろう。


「それは……どこで知ったんですか?」


「あー……見たら分かりました」


 流石に「ゲームで知りました」とは言えないので、俺は言葉を濁しつつそう答えた。


「な……なるほど! すごい洞察力ですね!」


 すると受付嬢はそう言って、小走りに奥の部屋へと向かった。


 まさか、「その洞察力を活かして新発見の魔物全ての特性を調べてください」的な依頼でもするつもりだろうか?

 まあ仮にそうなってしまったとしても、魔物の種類さえ把握すれば後はNSOの知識で補完できるので、特に困ったことにはならないが。


 などと推測していると、受付嬢が戻ってきた。


「あの……応接用の個室に来ていただいてよろしいでしょうか? 色々と話したいことがございますので」


 まさかの予想的中か。

 わざわざ個室に呼ぶってことは指名依頼にでもなるのだろうか?


「ええ」


 そんなことを考えながら、俺は受付嬢の案内する場所について行った。


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