第二話 初の魔物討伐とスキル獲得
謎の記憶を思い出した俺は、早速魔物を倒しに行ってみることにした。
街の雑貨屋にて、なけなしの金でナイフを購入し、それから街外れの平原に移動する。
初期のノービスは、身体能力も低ければ、ジョブ固有の魔法も一切使えないので……今の俺に倒せる魔物は、実質スライムだけだ。
というわけで、俺はスライムだけを相手にするつもりで、平原を歩き回った。
ここがNSOと完全に一致するなら……スライムが相手でも、(微々たるものとはいえ)倒せばスキルポイントが手に入るからな。
まずはそうやってスキルポイントを集め、比較的低いスキルポイントで手に入るスキルを獲得し、より強い魔物を倒せるようになろうというわけだ。
本当にスキルポイントが手に入れば……ノービスの俺にも、世界最強の冒険者になれる可能性だって見えてくる。
期待を膨らませつつ歩いていると、早速俺は一体のスライムに遭遇した。
気づかれないよう、後ろから忍び足で近づいて……
「……えい!」
思いっきりナイフを突き立て、スライムを貫通させる。
すると、スライムの身体が溶け……その場には魔石のみが残った。
これで討伐完了のはずだ。
早速、ステータスを見てみよう。
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ジェイド
ジョブ:ノービス
HP:10/10
MP:10/10
スキルポイント:1
【スキル】
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見てみると……確かにステータスのスキルポイントの欄が、0から1に増加していた。
「……よっしゃっ!」
それを見て……俺はますますこの世界がNSOと一致する確信を深めた。
魔石を拾うと、俺は次のスライムを探して歩きだした。
◇
そうして狩りを続けること、約二時間。
俺は計10体のスライムを狩って……スキルポイントも、10溜めることができた。
NSOでは、10ポイントあれば、必要スキルポイントが最小のスキルを1個手に入れられた。
ゲームと同様の手順でそれが手に入れられるか、この10ポイントで試してみよう。
「スキルコード1111 『サーチ』取得」
緊張が高まる中……俺はNSOでスキルを獲得するのに使ったコマンドを唱えた。
<ジェイドはスキル:「サーチ」を入手しました>
すると俺の脳内に、そんな声が鳴り響く。
「スキル獲得時に脳内音声が流れる」なんて今まで聞いたこともないが……おそらくこれは、俺がNSOのシステムに則ってスキルを獲得できたという証拠なのだろう。
──本当にスキルを入手できたかどうかは、試してみれば分かることだ。
「サーチ」
早速俺は、スキル名を唱えてみる。
すると……確かに俺は、近くにいる数匹のスライムの位置を、気配から完全に把握することができた。
「ほ、本当にスキルが獲得できた……」
思わず俺はそう零してしまった。
これまでの状況から、この世界がNSOそのもの、あるいは酷似しているのはほぼ確定だったが……実際にスキルを発動できてみると、また違った感動があるな。
——そうと決まれば、更に本格的にスキルポイントを集めるのみだ。
「魔石が10個……アレを作るか」
とはいえ、これからもひたすらスライムを狩り続けるというのは効率が悪い。
そこで俺は、手に入れた魔石を活かし、NSOではおなじみだったとある作戦の準備を始めることにした。
◇
街に帰還した俺は、残りの有り金のほぼ全てで宿をとり、部屋の机に魔石を並べた。
そして俺は……その魔石に、ナイフで幾何学模様を彫り始めた。
俺が今彫っているのは、魔法陣。
俺は魔法陣を魔石に刻み、魔道具を作ろうとしているのだ。
魔道具は通常、「魔道具師」のジョブを持つ者が、職業固有スキルで魔石に魔法陣を刻んで作るのだが……実はそれ以外にも、魔道具を作る方法が存在する。
それは、「魔法陣を物理的に彫刻して魔道具を作る」という方法だ。
これならスキルが要らないので、ノービスでも魔道具を作成することができる。
俺はそっちの方法で、魔物を倒すための魔道具を作ろうとしているわけだ。
謎の記憶内の俺は、あまりにもNSOが好きすぎて、登場する魔法陣を自由帳に描いたりしてたくらいだからな。
だいたいの魔道具の魔法陣は、細部まで鮮明に覚えているのだ。
だからこそ俺には、この方法で魔道具を作るのは容易なことだ。
ちなみに俺が今彫っている魔法陣は……NSOだと、主人公がゲーム中盤でたまたま発見する魔法陣だ。
この魔法陣は、「魔道具師」の固有スキルのラインナップにはない、手彫りでしか刻めない魔法陣である。
ゲームの中盤で出てくるだけあって、この魔法陣を刻んだ魔道具は他とは一線を画す効果を持っている。
どのくらい凄いかというと、今の俺でも、中級冒険者パーティーが苦戦する魔物を倒せてしまうくらいの強力な代物なのである。
彫ってたら日が暮れるだろうから……実際にこれを使うのは、明日になってからだな。
俺は明日の戦果の想像を膨らませつつ、魔法陣の彫刻に専念した。
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