表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/120

第十九話 いざ、試合開始

 次の日……ディバインアローの剣を受け取るためヴェルグ工房を訪れると、店主の他に長身の男が一人待機していた。


「ディバインアローの剣を受け取りに来ました」


「まさか本当にその意思が揺るがないとはな。今ならまだ、金を素材を売ると言えば間に合うんだぞ?」


「……あの、模擬戦ってどこでやるんですか?」


 店主のペースに合わせていたら時間だけ無駄に経ちそうなので、単刀直入にそう聞く。


「……どうしても気が変わらないってか。分かった、私有地の簡易闘技場があるからついてこい」


 すると店主はそう言って、店の裏口のドアを開けつつ俺たちに手招きした。

 それに続き、俺、そして長身の男も、店主が歩いて行く方についていく。


 その道中……長身の男は、店主にこんな質問をした。


「俺がディバインアローの剣を賭けて戦う相手って、この子っすか? なんというか、そもそもどうやってディバインアローを討伐できたんだって感じに見えるんっすけど……」


 どうやらこの男も、俺のことはひ弱な男と思っているようだった。

 問題は、俺の真の実力を見極めれていないのか、見極めた上で言っているのかだが……まあ間違いなく、後者はあり得ないだろう。

 流石に、今の俺なら「チェンジ」に頼らずともディバインアローくらいなら倒せる。

 なので後者なら、「どうやってディバインアローを討伐できたんだって感じ」などという発言は出てこないはずなのだ。


「余裕で勝ってもらわなければ困るよ、ヴォイグ君。Bランク冒険者としての実力を買って、常連客として認めてやったんだからな」


 それに対し、店主はそう答えた。

 この男——ヴォイグという名らしい——は、Bランク冒険者なのか。


 ギルドの評価上は、三ツ星討伐者の俺と同格ということになるが……この情報だけでは、実際どちらが格上なのかの判断材料にはなり得ないな。

 BランクとAランクでは天と地ほどの差があり、Bランクなり立てとAランク昇格寸前では、同じランク帯でも全く実力が違ってくるからだ。


 まあ……もし分が悪いとしても、こちらには残りスキルポイントも「国士無双」もあるので、負けはしないと思うが。


 などと考えていると、俺たちは「ヴェルグ闘技場」と書かれた円形の建物に到着した。



「この闘技場は先祖代々譲り受けたものでな。時々、騎士様が対抗試合をする時とかに、貸し出したりしているんだ」


 そんな話をしながら、俺とヴォイグに木剣を渡す店主。

 俺はそれを受け取ると、闘技場の試合開始線のところに歩いていった。


 そしてその場で、ヴォイグが反対の試合開始線のところに来るのを待っていると……


「……おい、これを見てみろ。三日月刃」


 何を思ったか、ヴォイグはそう言って木剣を振り、上空に三日月刃を放った。


「俺はBランク冒険者だ。……降りるなら、今が最後のチャンスだぞ」


 そしてヴォイグは、俺にそう忠告する。


 だが……俺はそれを見て、むしろこう思ってしまった。



 このヴォイグという男……想定していたより、ずっと弱い。

 それも、強いパーティーにフリーライドして不相応にランクを上げたんじゃないかと思うほどに。


 というのも……ノービス以外の職業の場合、一つのスキルの威力を見れば、身体強化などをノービスの+値で換算した値がだいたい推定できる。

 ノービスと違いスキルポイント制ではないので、今の俺のように「身体強化は+47だが三日月刃は未強化」みたいなアンバランスな状態にはなり得ないからだ。


 そして……今のヴォイグの「三日月刃」は、+値でいえば5〜6相当。

 この場合、こいつのジョブが剣士だと仮定したら、身体強化の+値はだいたい5倍、すなわち25〜30あたりだ。


 これだけの差があると……言っちゃ悪いが、試合展開は弱いものいじめのようになってしまうだろう。


「いえ、戦います」


 だが、これはディバインアローの剣がかかった試合。

 可哀想であろうと、やむを得ないのだ。


 なので俺は、そう答えた。


「チッ……」


 舌打ちしつつ、しぶしぶと試合開始線に並ぶヴォイグ。


「始め!」


 そして店主がそう声をかけたことで、模擬戦が始まることとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓↓コミックス1巻発売!↓↓
html>
― 新着の感想 ―
[一言] 正直、この街の鍛冶師である必要はないよなぁ 肩書きで常連と認めたって言ってる時点で頑固職人の皮を被ったタダの偏屈野郎じゃん。 そんな奴を信用するのはどうなん? 少なくとも素材を預けるのは有り…
[一言] 甘い、甘過ぎる 信用なんて欠片も無い相手に素材 預けたままな上に やる必要も無い勝負吹っ掛けられてる のに、細かい取り決めも第3者の 立ち会いも無し あの素材見ているのが他に受付嬢しか …
[一言] これ街移動イベントの導入か 勝ったら素材返してもらって腕のいい鍛治師のいる街まで行くイベント
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ