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第十七話 国士無双

 鍛冶屋を出ると、俺は可能な限りスライムの魔石を集めて帰り、ジーナに明日の分の魔道具を用意してもらった。

 そして次の日からは、「エリアメナス→大量ファントム狩り」のルーティーンを、一日三回ずつ行った。


 そうして三日後……スキルポイントが159230pt溜まったところで、俺は一気にスキルの取得や強化を行うことにした。


 一応、ディバインアローの剣の加工が終わり、剣を受け取るための模擬戦をする日までは近接戦闘に磨きをかけるつもりだが……このくらいのポイントがれば、ひとまず当初の目的であった「ラッシュボアをガチンコで倒す」はできるようになるはずだ。


 俺は中間目標の達成確認のため、それをすることにしたのである。



「スキルコード0011 『身体強化』強化×30、スキルコード2001 『武術』強化×30」


 まず俺は、今まで重点的に+値を上げていたこの二つのスキルを、+値30分ずつ強化した。

 これで、この二つのスキルの+値は47。

 これでもう、基礎は完全に仕上がったといっても過言ではなくなった。


 +値は、1変わるだけでも、それまで苦戦する相手だった魔物との戦いが楽になるくらいの変化が現れるもんだが……それが一気に倍以上にもなると、もはや別人といっても過言ではないくらい世界が変わってくる。

 ここまで上げておけば、ひとまずクラーケンやワイバーンといったような災害級魔物と対峙するようになるまでは、この二つに関しては十分と言えるだろう。


 というわけで、次。

 さっきのでスキルポイントは110550消費したので、あとは残り48680ポイントの配分だ。


「スキルコード3022 『結界』取得、強化×15」


 次に俺は、「結界」というスキルを取得し、そして立て続けに15回それを強化した。


「結界」は防御魔法だが……身体能力や近接戦闘関係を重点的に強化する方針にも拘わらず、これを今取得したのには理由がある。

 このスキルは、単に敵の攻撃を防ぐだけでなく、空中で自身の足場としても使えるからだ。


 空中に自在に足場を用意できるようになると、それだけ身のこなしの選択肢が増えるようになるので、+値の高い「武術」との相乗効果でより効率的な戦い方ができるようになる。

 つまり「結界」の取得は、近接戦闘能力の強化を意味すると言えるのだ。


 本気で踏み抜いて大丈夫な結界を展開するには、だいたい「身体強化」の3分の1の+値が必要になるので、俺はこのスキルを+15まで強化した。

 これで、空中戦は俺のものだ。


 スキルポイントは26100消費して、残り22580。

 次は……。


「スキルコード2003 『Xの眼』強化×10」


 今度は、魔物分析スキルである「Xの眼」の強化だ。

 このスキルは、+値無しの状態でも十分有用なのだが……+値を10まで上げると、今度は地形も味方にできるようになる。


 どういうことかというと、例えば魔物を投げ飛ばす際、通常ならただ単純に強く投げ飛ばすだけのところを「ちょうど地面の小石にツボを打ち付け、ツボを破壊できるよう軌道を計算して投げ飛ばす」といったように、空間を味方につけて戦えるようになるのだ。


 このように「周囲の空間を味方につける」ということができれば、多少であれば、相手の身体能力が自分を上回っていてもその差を覆せるようになる。


 そのアドバンテージを得られるところまで、とりあえず強化することにしたのである。


 これで残りスキルポイントは、4000引いて18580。

 今回のスキル取得ラッシュは……次で最後だな。


 最後に取得するスキルは、もう既に決めてある。


「スキルコード9001 『国士無双』取得」


 俺が最後に取得することにしたのは、「国士無双」というスキル。

 このスキルはどういうものかというと……一定条件を満たすことで、究極必殺技を発動できるようになるスキルだ。


「国士無双」を取得している人の場合、敵に技を放ったり敵の攻撃を受けたりするたびに、「無双ゲージ」というものが少しずつ溜まってくる。

 そしてその「無双ゲージ」が満タンになり、「国士無双」と詠唱すると、一定時間特殊な無敵状態になることができるのだ。


 この無敵状態の間は、たとえ全裸で寝ているところにドラゴンのブレスを受けても微塵もダメージが入らないような状態になる上に、MPはいくら使っても満タンのまま、通常の50倍の威力のある大技を高速で連射できてしまう。

 要は、「国士無双」はノービスの最終奥義の一つとも言える技なわけだ。


 ノービスの奥義は、他にもいくつかあるが……その中でも国士無双は、使い勝手の良さという意味で他の奥義とは一線を画している。

「無双ゲージ」は割とコツさえ知っていれば簡単に溜められるので、発動条件は本当に奥義かってレベルで低いのだ。

 一回の戦闘中に下手したら二〜三回発動できる奥義など、これの他には無いだろう。

 そんな理由もあって、俺は比較的早い段階で、このスキルを習得しておきたかったのだ。


 問題は、取得だけで10000もスキルポイントを消費することだが……これに限らず、奥義系スキルは基本的に+値強化という概念が無いので、一回取得しておけばもう安泰だ。

 このスキルにはこれといった強化方法がなく、できることがあるとすれば装備アイテムに「強化結晶」という結晶をはめてゲージ消費スピードを鈍化させるくらいだが、まあそれは気長にやっていくとしよう。



 せっかくここまで強化したので、何か魔物と戦ってみたいものだな。

 できればラッシュボアがいい。


 そう思い、俺は「サーチ」を発動して、魔物を探し始めた。



 ◇



 30分ほどして……俺は一体のラッシュボアを見つけることができた。

 早速、今の俺の力がどこまで通用するか試してみよう。



 俺は「縮地」を発動してラッシュボアの脇腹辺りに移動すると、まずは挨拶代わりに一発蹴りをお見舞いした。


「グエエエエェェェェッ!」


 するとラッシュボアは、勢い良く横転し、そのまま転げまわりながら悶絶しだした。


 ……なんか、このまま追撃すれば、そのまま息の根を止められそうだな。

 そう思ったが、俺はラッシュボアが立ち上がるのを待ってみることにした。


 せっかくなら、「国士無双」で華麗に決めたいと思ったからだ。


 5分ほど待つと……ラッシュボアは、怒りに染まった眼をこちらに向け、ようやく立ち上がった。

 そして、全速力で俺に向かって突進してくる。


 それを……俺は若干の微調整はしながらも、あえて直撃でくらうことにした。

 ラッシュボアの直撃をくらった俺は、6〜7メートル吹っ飛ばされる。


 吹っ飛ばされた先で、俺は「Xの眼」が示唆する最善の受け身を取り、ほぼノーダメージで立ち上がった。


「『無双ゲージ』確認」


 そう唱えると、俺は無双ゲージが10分の1くらい溜まっているのが確認できた。


 実は……今俺は、できるだけダメージは少なく、しかし吹っ飛ばされる距離はできるだけ大きくなるようにラッシュボアの突進を受け止めた。

「無双ゲージ」の溜まり判定は割とガバガバで、たとえ被ダメージが大したことなくとも、吹っ飛ばされた距離等何らかの「敵から受けた影響」が大きければ、それだけでゲージが一気に溜まる。


 俺はその性質を利用して、無双ゲージを手っ取り早く溜めようとしているわけだ。


 そんなことを露ほども知らないラッシュボアは、着地した俺めがけて再び突進してくる。

 俺はそれを、また同じように受け……そんなことを10回繰り返し、「無双ゲージ」を満タンにした。


 よし、発動だ。


「国士無双」


 俺がそう唱えると……俺の全身から、黄金色のオーラが湧き出した。

 このオーラが出ている間が、俺の「無敵時間」だ。

 今のうちに、この戦いにケリをつけるとしよう。


 殴り、蹴り、投げ飛ばし……俺は流れるような連撃で、ラッシュボアに猛攻撃を加えた。

 無敵状態だと、手刀ですら「三日月刃」が飛ばせるので、それも織り交ぜる。


 ゲージを消費しきるまでずっとそんな事を続けていると……最終的に「三日月刃」の連撃を受け、地上に落ちてこれなくなっていたラッシュボアは、無数の肉塊となってようやく地面に落ちてきた。


 かなり激しく動いたというのに……無敵時間の恩恵で、息は全く上がっていない。


「やっぱ、ノービスといえばコレだよなあ……」


 NSOをプレイしていた時以来、久しぶりにこの技を使えたことで……俺は清々しい気分になれた。


 戦闘が終わった俺は、戦利品の回収のため「ストレージ」を発動する。


 だが……そこで俺は、ラッシュボアの死体を見て我に返った。



 ……しまった、やりすぎた。

 なんかもうバラバラ過ぎて、どこが素材として使えるのか分からないような状態になっちゃったぞ。


 まあ、「国士無双」を試すのが今回の目的の一つでもあったので、それはいいのだが……こんな素材を持ち帰ったら、最悪買取拒否されるかもしれない。


 そんなことを思いつつも、俺はとりあえず何とか原型を留めている部位のみを集め、収納したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴットイーターみたいなのです
[気になる点] 書き忘れた。 「結界」は防御魔法だが……身体能力や近接戦闘関係を重点的に強化する方針にも拘わらず、これを今取得したのには理由がある。  このスキルは、単に敵の攻撃を防ぐだけでなく、…
[気になる点] ここまで使い勝手がいい奥義がたった1万ポイントで取れる?嘘だろ。500万でも驚かないレベルの性能だぞこれ。 ラッシュボアたった100匹分狩れば取れるスキルの性能じゃない。 で、そのラ…
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