第百七話 立入禁止区域だった
新たな基地に向けて移動している間、俺はせっかくの暇な時間を使ってスキル強化を行うことにした。
「スキルコード1111 《サーチ》強化×215、スキルコード1536 《ストレージ》強化×145、スキルコード……」
今回は《サーチ》《ストレージ》《身体強化》などを始めとする、自分がよく使う(もしくは自分の基礎スペックに直結する)スキルを軒並みカンストさせることにした。
具体的にどのスキルを強化したかというと……。
「変更点確認」
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HP:640669/640669→2008485088/2008485088
MP:734972/734972→1745932/1745932
スキルポイント:→747796510→731416070
【スキル】
サーチ+40 (ステルスサーチ+5)→サーチ+255 (ステルスサーチ+5)
ストレージ+110(マネーカウント)(ピアツーピアストレージ共有)(条件付き生物収納)→ストレージ+255(マネーカウント)(ピアツーピアストレージ共有)(条件付き生物収納)
超集中+10→超集中+255
身体強化+90→身体強化+255
基礎MP強化+210→基礎MP強化+255
武術+57→武術+255
Xの眼+20→Xの眼+255
暗殺術+20→暗殺術+255
ヒール+10→ヒール+255
結界+70(耐放射線結界)→結界+255(耐放射線結界)
術式崩壊+20→術式崩壊+255
フォースリダクション+40(低下無効貫通)→フォースリダクション+255(低下無効貫通)
パラレルジェイル+110(次元移動無効貫通)(帰還時体勢調整)→パラレルジェイル+255(次元移動無効貫通)(帰還時体勢調整)
クロノクラッシャー+110(停止無効貫通)→クロノクラッシャー+255
ハイボルテージトルネード+30→ハイボルテージトルネード+255
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ざっとこんな感じだ。
《身体強化》+値の上昇に伴って、HPは桁がたくさん増えてしまった。
MPに関しても、HPほどではないが2倍以上となった。
各スキルの威力・効能が上がっただけでなく、一回の《国士無双》あたり撃てる「崩壊粒子砲」の弾数も増えたので、かなり強くなったと言えるだろう。
てか、こんだけ強化してスキルポイントが誤差程度にしか減ってないのなかなかヤバいな……。
こうしてみると、本当にスキルポイントを稼ぎすぎてしまったことがよく実感できる。
こんだけ余ってれば、万が一戦闘中不利な状況に陥っても、後出しで戦闘スタイルをガラリと変えて対応することだって可能だな。
まあ、そんなことにはならないだろうが。
……ん? 「クラウドストレージ」に反応が。
何も注文していないのに何だろう。
「《ストレージ》」
自分の《ストレージ》から接続してみると、そこには手紙と共にお守りが一つあった。
『絶対に無事で帰ってきてください。信じてます ジーナ』
よく見ると……お守りの中の石はスライムの魔石で、そこには「チェンジ」が刻まれている。
……帰ったら福利厚生と賞与をもう少し充実させるか。
などと考えつつ、俺は目的地への到着を待った。
◇
目的地周辺で手動運転に切り替え、しばらく上空を散策していると冒険者ギルドらしき建物が見つかったので、俺はそこに寄ることに決めた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ちょっと調査したい場所がありまして……。ここから北に12キロ、西に8キロほど離れた場所に『永久不滅の高収入』の拠点がある可能性が出てきたのですが、そこに伺ってもいいですか?」
状況的にほぼ確定ではあるものの、まだ「永久不滅の高収入」の基地だとこの目で確認したわけではないので、まずは調査にいくということで話をすることにした。
まあもちろん、行って本当に基地だったら証拠を持ち帰るとともにある程度壊滅させてくるつもりだが。
「崩壊粒子砲」で更地にするとかは、一旦基地を見てみてから追って相談しようと思っている。
それ以前の問題として、一個心配なのは、ここのギルドに「永久不滅の高収入」で話が通じるかどうかだ。
世界の破滅を目論むカルト集団だということが他国のギルドまでちゃんと伝わってるかどうかは定かじゃないからな。
これでことの重大性が伝わればいいのだが。
……ど、思っていると。
受付嬢から、思ってもいない方向性で難色を示されてしまった。
「12キロ、西に8キロですか……。すみません、その地域は立入禁止区域に指定されているため、行っていただくことはできないんです」
立入禁止区域……だと?
まさか、そんな指定がされているとは。
「Sランクでもダメですか?」
たとえ立ち入りが制限されていようと、Sランク冒険者なら立ち入れる、むしろ問題解決のために歓迎されるというケースは少なくない。
なのでまずは、冒険者証を見せながらそう食い下がってみることにした。
「Sランク冒険者様でいらっしゃいましたか。これは大変失礼いたしました。しかし……大変申し上げにくいのですが、今回とばかりはSランク冒険者様であっても許可できかねます。軍のほうから、軍の関係者でなければどんな立場の人間であろうと入れてはならないとのお達しが来ていますので……」
が、なんとSランク冒険者証を見せても尚断られてしまった。
そんなことがあるのか。
だが……そういう理由なら、むしろチャンスはある。
「では、これでどうですか?」
次に俺が見せたのは、もちろんパニッシャーコイン。
パニッシャーコインは軍隊が相手であればどの国でも通用するグローバルな通貨なので、これなら関係者として立ち入りを認めてもらえるだろう。
「ぱ……パニッシャーコインをお持ちなのですか!? 冒険者でそちらをお持ちなんて、珍しいですね。Sランクであってもそんな方、滅多にいないと聞いているのですが……」
パニッシャーコインを見せると、受付嬢はそう言って固まってしまった。
「あの……立ち入り許可のほうは?」
「す、すみません。普段まずお目にすることがないもので、取り乱してしまいました。そうですね……弊ギルドの方では何とも言い難いので、軍の本部に直接掛け合っていただけますと幸いです。地図と紹介状だけ、すぐご用意いたしますね」
返事を促すと、受付嬢はそう言って奥の部屋に駆け込んだ。
ここですぐ許可は降りなかったものの、やはり軍関係のこととなるとパニッシャーコインは一定の効力を示すようだ。
「……お待たせいたしました。こちらです!」
数分して、受付嬢はカウンターに戻ってくると、そう言って二枚の紙を渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、お力になれなくて恐縮です。……調査の許可、降りるといいですね」
これでもうギルドですることは何もないので、俺はギルドを後にした。
そしてもらった地図に従い、ミミア王国軍の本部がある場所を目指して移動した。