第十話 シャドウレスラーとの戦いと謎の盗賊団
タイトル変更しても変更前とPV数に有意差は無かったので、今日からこれで行かせていただきます!
よろしくお願いいたします。
※感想でちょっと誤解されかけてたので補足しますが、賢者に転職するということはありません。
ただゲームの仕様に従うだけでなく、ゲーム内の知識を余すことなく活用する姿勢がもはや賢者みたいなものってことで、こんなタイトルにしました。
シャドウレスラーは俺を見つけると、一直線に俺に向かって迫ってくる。
それに対し……あえて俺は、その場から動かず立ち尽くした。
そうしていると、俺の目と鼻の先の距離まで来たシャドウレスラーは、張り手のための予備動作に入る。
そこで俺は初めて、横に一歩避けた。
直後……シャドウレスラーは俺がいた場所に向かって猛烈な張り手を開始する。
張り手は衝撃波を発生させ、後ろにある木を吹き飛ばした。
シャドウレスラーが張り手を始めてから、3秒きっかりが経過すると……シャドウレスラーは、手を突き出したままの体勢で一瞬硬直した。
俺はその隙を逃さず、シャドウレスラーの側頭部に渾身の蹴りをお見舞いした。
それにより、シャドウレスラーは吹っ飛んで数メートル転がる。
シャドウレスラーが俺を振り返った時には、怒りと困惑が入り混じったような表情をしていた。
シャドウレスラーは……強大な力を持つ割には、NSOでは弱い魔物扱いされていた。
その理由は、今見た通り。
シャドウレスラーの張り手は、行動の順序が固定されているからだ。
狙いを定めた冒険者に接近し、予備動作を行い、張り手をかましてから0.5秒の硬直時間に入る。
このルーティーンは、絶対に崩れることがない。
故にプレイヤーは、その特性を活かして立ち回れば、今のように一方的に攻撃を叩き込むことができたのだ。
木を吹き飛ばすほどの衝撃波を発生させる張り手も、当たらなければどうということはない。
むしろシャドウレスラーが張り手を始めたら、その後には無防備な硬直時間が待っているので、格好の餌食もいいとこなのである。
シャドウレスラーは……懲りずに再度、張り手をかましてきた。
それに対し、俺も再度、慣れた動作で避けてはカウンターの蹴りをお見舞いする。
あまり知能の高い魔物ではないため、そんな攻防は三度ほど続いた。
そして……それからようやく、シャドウレスラーは行動パターンを変えることにしたようだった。
今度は……シャドウレスラーは気をつけの姿勢で体を水平に浮遊させ、俺の方向に飛んで突っ込んできた。
静止の状態から一気に競走馬の最高速度ほどに加速したその巨体は、大砲の弾丸のように俺に迫る。
これがシャドウレスラーの第二の得意技——超速頭突きだ。
これをモロにくらえば、俺はやられた自覚すら持てないままあの世へ逝ってしまうだろう。
だが……俺としてはむしろ、このタイミングを待っていた。
というのも……この頭突き、シャドウレスラーの最大の攻撃であると共に、致命的な弱点でもあるのだ。
俺は冷静にシャドウレスラーが最接近するタイミングを計ると、最適なタイミングでジャンプし、シャドウレスラーの背中に飛び乗った。
そして俺は、シャドウレスラーの両腕を掴み……自身の膝で頭を押さえつけた。
シャドウレスラーは……頭突きの飛行状態をやめる時、必ずまず頭を上に向ける。
逆に言えば……シャドウレスラーは、頭を押さえられた状態だと、飛行状態を中断できないのだ。
仮にどんな障害物が目の前にあっても、シャドウレスラーは自分の行動を制御することができず、ただただ激突を待つのみとなる。
これを利用して……巨大な岩にでも頭をぶつけさせることができれば、シャドウレスラーはそのまま死ぬか最低でも脳震盪で気絶する。
そうなればもう、こちらのものだ。
必要ならトドメを刺し、「ストレージ」に収納してしまうまでである。
幸いにも……シャドウレスラーの進行方向には、とても硬そうな巨大な岩がある。
いや正確に言えば、頭突きをかましてきたシャドウレスラーを確実に仕留められるよう、岩を背後に立ち回るようにしてきたのだが。
その岩が近づいてくると、俺はシャドウレスラーの回避が絶対に間に合わないタイミングで、シャドウレスラーから飛び降りた。
直後、轟音とともに、シャドウレスラーの頭が巨岩にめり込む。
ステータスウィンドウを確認すると……スキルポイントが150から230に増加しており、俺はシャドウレスラーが絶命したのを確認できた。
「ストレージ」
俺はシャドウレスラーの死体を収納すると、再び街に向かって歩き始めた。
……なかなか良い戦闘だったな。
ゲーム内ではなくリアルに戦闘するのは初めてだったが、どうやらNSOのセオリー通り動こうとすれば、案外スキルの補正で思った通り動けるようだ。
この調子でいけば、ラッシュボアを「チェンジ」無しで討伐できるようになる日も遠くなさそうだな。
満足した気持ちになりながら、俺は230あるスキルポイントの振り方を考えた。
230pt……結構微妙なんだよな。
「身体強化」を+7から+8にするには500ポイントかかるし、「武術」を+6から+7にするのにも490ポイントかかるので、それらの強化にはポイントが不足している。
かといって、現状だと「サーチ」は今の効果範囲で十分なので、ポイントが足りるからと言って強化する気にもならない。
……うん、別に今焦って何かに振らずとも、明日以降追加でスキルポイントが手に入ったら、それと合わせて使えばいいか。
というわけで、俺は今ある230ポイントは温存することにしようと考えた。
だが……その時だった。
木が生い茂っている場所を通り抜けたところで……俺は、とんでもない光景を目にすることとなってしまった。
それは……数人の怪しげな男が、全員がかりで人を一人運んでいる光景だった。
運ばれているのは、おそらく同い年くらいの女の子で……その口には、猿轡を噛まされている。
もしかしなくても、誘拐だろう。
ぱっと見だけで犯罪だと断定するのは、流石に証拠不十分かもしれないが……よく耳をすますと「高く売れそう」だの何だの聞こえてくるので、それも合わせて考えればもはや確定だ。
「スキルコード2014 『暗殺術』取得」
俺は誰にも聞こえないような小声でそう呟き、150ポイントを消費して新たなスキルを入手した。
別に俺は、対人戦を極める気はサラサラ無いのだが……「縮地」等の一部の技は対魔物戦でも便利で、いつかはこのスキルを取得するつもりだったので、これを機に取得してしまって構わないだろう。
早速俺はその「縮地」を発動し、誰にも気づかれないよう盗賊の一人に肉迫した。
そして……その鳩尾に、的確に蹴りをお見舞いした。
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