第一話 貴族家の追放と前世の記憶の覚醒
「ジェイド、お前は我が家を追放だ! ノービスのまま帰ってくるとは、この恥さらしが!」
15歳の誕生日……すなわち成人の日の昼。
俺は父・サイモンに罵声を浴びせられていた。
理由は……父サイモンの発言にもある通り、俺が成人してもノービスのままだったから。
この国では、成人した15歳の誕生日に教会で「転職の儀」を受け、ジョブを得ることが決まっているのだが……どういうわけか俺はその「転職の儀」に失敗し、ジョブを得損なったのである。
その事を、家に帰って父サイモンに報告したら……父は途端に鬼の形相になり、勘当を宣告しだしたのだ。
「お前などもう、ウチの息子ではない!」
鼓膜が破れんばかりの声量で、父はそう続けた。
「……そんな!?」
正直……こうなるのは、俺には予想外だった。
確かにノービスは、力も無ければ魔法も使えず、最弱の役立たずというのが常識になっている。
そして父にはやたらと外面を気にする節があるので、息子がノービスのままと分かったら、決して良い気はしないだろう。
だが……だからといって、まさか実の息子を勘当するまで行くだろうか?
書類仕事に徹するなど、家の役に立つ方法が無いわけではないし、何より悪いことをしたわけではないというのに……。
「何が『そんな!?』だ! 情けない声を出しおって……」
だが……俺が何を言おうが、父はもう取り付く島もない様子だった。
母や兄弟も、ただ聞いてるだけで、特に反論してくれる感じでもない。
要するに……四面楚歌だった。
「せいぜい野垂れ死ぬなよ」
更に父はそう言いつつ、俺に意味ありげな視線を向けながら小袋を投げつけてきた。
受け取った瞬間、指にヒビが入ったんじゃないかと思うような衝撃が走る。
中身は、僅かばかりの硬貨だった。
最後の情をかけてくれているという様子でもないので……おそらくは、「領地の近くで死なれたら俺の評判が落ちるから、この金で遠くまでいって人知れず死ね」といったところだろうか。
俺は何も言い返せず、小袋を握りしめたまま家を出た。
そして……どこへともなく歩き出した。
◇
そのまま俺は、10分ほどあてもなく歩き続けたのだが。
そんな中……ふいに俺は、人生で一番強烈な頭痛に襲われた。
「痛っ!」
あまりの痛みに、俺は頭を抱えてうずくまる。
それと同時に……俺の頭の中に、不思議な記憶が入ってきた。
「何だ……これ……」
その記憶は……こんな内容だった。
俺はかつて、今とは違う人生で……こことは全く違う世界の「日本」という国で、ソシャゲにのめり込む日々を送っていた。
特に気に入っていたゲームのタイトルは、「Novice is the Strongest Online」、通称NSO。
ノービスが魔物を倒してスキルポイントを得て、スキルポイントで数多のスキルを習得し、最強へと登りつめるゲームだ。
記憶の中の俺は、NSOを隅々までやり込んで、ゲーム内の全ての知識を持ち合わせていた。
全く、この世界には「スマホ」なんてものは存在しないのに、何でこんな記憶が出てきたのか謎である。
「……いや、待てよ」
だが……俺は頭痛が完全に引いたところで、もっと重要なことに気が付いた。
それは……今俺がいる世界が、NSOの世界に酷似していることだ。
文明レベル、出てくる魔物の数、そしてノービスや魔導士、剣士といったような「ジョブ制」。
それら全てが、今俺がいる世界にそっくりなのである。
試しに俺は、謎の記憶からNSOの仕様を思い出しつつ、ある事を試してみることにした。
これが成功すれば……ここがNSOの世界だと、断定していいだろう。
「ステータスオープン」
そう唱えると……俺の目の前に、半透明の画面が現れた。
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ジェイド
ジョブ:ノービス
HP:10/10
MP:10/10
スキルポイント:0
【スキル】
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これは……確定だな。
俺がいるのがNSOの世界ってことは……ノービス、無能どころか、極めれば万能になれる最高のジョブだぞ。
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