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勇者になれて  作者: うととまる
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プロローグ5

森をぬけると、辺り一帯、黄金の草原に出た。ある程度舗装された道を進んでいく。

空は快晴。

空気は澄み渡っていた。

道の奥の方を見ると石造りの城壁が見える。

あれがドワーフの街なのだろう。

右の方へ視線を向けてみると大きな山が見え、その山の麓にガッ!ガッ!という変な鳴き声を大きな鳥が飛んでいた。


「何あれ……? 」


どこか呆れつつ、上空のそれに指を伸ばした。

赤い大きな翼に黄色いくちばし、鳥にも見えるが何故か足が4本ある。


「あれは、カイキョウじゃよ。普段は山の奥にいるんじゃがな 」


意味ありげにそんなことを言うバルク。

山の麓ねぇ……

再び山へ視線を向けると 先程までいなかったスライムのような黄色い物体が湧き出ていた。

体長は2、3メートルくらいだろうか。

距離的には遠いためこちらになにかしてくることは無さそうだが、ビジュアルがなんとも気持ち悪い。


「まじか……」


さすがにこれは異世界に来たんだろう。

そう判断することにした。

ドッキリにしては凝りすぎているし、面白くない。

気分を変えようとバルクに話しかけることにした。


「カイキョウが山の麓にいたらおかしいの? 」


「最近、魔物が活発になってきておるんじゃよ。これも『魔神王(……)』復活の兆しじゃ 」


「『魔神王(……)』、なにそれ凄いかっこよさそうじゃん 」


その響きにちょっとワクワクする自分がいた。

クラスの男の子の話から察するに僕は異世界に召喚され、その『魔神王』とやらを倒す勇者なのかもしれない。


「何を言っておる。世界を滅ぼす存在じゃぞ 」


「 もしかしたらさ、その魔神王ってやつを倒すのが僕だったりしてさ 」


というか、ならなぜこの世界に呼ばれたのか分からない。


「カッ、カッ! よく言うわい。そんなひょろひょろの身体で、勇者なわけないじゃろ 」


バルクはこちらに振り向かず、ケタケタと笑う。

確かに、体は貧弱。

運動部に入ったことは無いし、体育の授業の時も、中の中。面白くないほど普通だ。

だけれども、


「なんでそう言いきれるのさ 」


その決めつけに少しイラッとした。

神に与えられた能力で圧倒するほどの身体能力を得ているかもしれないのに。


「まあ、でも、あながち間違っても無いかもしれんぞ 」


「おお? 」


「ドワーフの街には伝承があっての。神の使いがお主がいたあの森に舞い降りてドワーフの街を救うっていう話があってな 」


「おとぎ話? 」


「カッカッ! ただのおとぎ話じゃ。それに神の使いの姿はドワーフじゃったしな。ユマニのお主じゃ無理じゃ 」


笑いながらそんなことを言う。


「えー、なーんだ……。つまんな 」


本当にドワーフの街に伝わるおとぎ話なのだろう。現れたのがドワーフっていうのが何ともそれっぽい。

それにしても、いきなり無双して街1つ救うとか出来たらなぁ、とかそんなことを思いつつ、バルクと共に街へ向かった。



街に着くとバルクが言う通りドワーフの街だった。

見かけるのはドワーフばかり、人間を見ることは1度もなかった。

中世ヨーロッパのような街並みで、街の通りには馬車が、出店には人がごった返していた。

やけに人が多いが、バルクが言うには明後日に開かれる祭りの前夜祭みたいなものらしい。


「……すごい見られるんだけど」


街行く度に、無遠慮な視線の波に晒されていた。

そんなに『ユマニ』は珍しいのだろうか。

街中にはドワーフばかりなのもそうなのだが、『ネコミミ?』みたいなのとか、『エルフ? 』とか、『リザードマン?』みたいなものまでいる。

その中では『エルフ?』が一番多かった。


「ユマニの国々は別の種族との交流を嫌っておる。訪れるとしたら冒険者くらいじゃよ 」


「へー。なんか、ユマニはほかの種族に悪いことされたりしたの? 」


「そうじゃない、あやつらはユマニ至上主義なんじゃよ。自分らが特別だと思って、他の種族は動物かなんかだと思っておるんじゃ 」


「この世界も色々あるんだね 」


それは所謂、白人至上主義みたいなもんなのかな。


「そういえば、冒険者って言っおたよね? 」


冒険者って言葉が引っかかった。

あの子から察するに冒険者ってのは、徐々にクエストをクリアして魔王を倒す存在だよな。


「なんじゃ興味あるのか?」


面白そうだが、僕は勇者かもしれない。ここで、冒険者になって冒険をするとかごめんだから、仲間としての検討をしたい。


「うん。どんな人達がいるのかなって 」


勇者として旅をするなら冒険者を仲間に入れるのも悪くない。

魔法使いと盾役みたいなのは必須だよな。

あとは回復する役職みたいなのがあれば最適かも。


「一言で言えば、なんでも屋じゃ。掃除や犬の世話から魔獣討伐やお宝探し、貴族の護衛とかなんでもやる奴らじゃ。だけど、なるのはやめといたほうがいいぞ 」


「なんで? 」


「あやつらは社会のはぐれもんじゃ。国からすごい嫌われておるから、生きづらくなるぞ 」


それじゃあ、『魔神王』討伐には参加させられないのかな。



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