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プロローグ1
「僕はさ、いつも皆から透明人間として扱われているんだよね 」
彼はユリアナの太ももの上に座っている。
「透明人間? 私は見えてるわよ」
抱きしめながら、ユリアナは首を傾げた。
「それも良いって思えている自分がいるんだ。誰も僕を気にしないってことは、僕は好きな事をやってもいいよね? 」
彼の表情は純真無垢な笑顔。
だけれど、その瞳から獰猛さがこちらを見つめていた。
「……どうしたの、様子が変だけれど 」
少し普段と雰囲気が違う。
何か『嫌な予感』がする。
そう感じた次の瞬間には――――
「……うっ 」
体の芯に刺さるような痛み。
ユリアナの腹にはナイフが刺さっていた。
「僕はもう誰にも止められやしない 」
彼はそんな笑顔だった。