表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

こども向け編

「だから!大人は使うなって書いてあるだろ!」

「ヘッヘッヘ、すまねえな旦那。」


全然悪びれた様子もなく筋骨隆々な冒険者は修理している俺に対して言葉ばかりの謝罪を投げかけた。

これで筐体をぶっ壊してくれた冒険者は通算七人目だ。


筐体の名は『抜け!聖剣ロック』。

岩に刺さった剣を抜く、というていの子供向けゲームだ。


このゲームを作るに至った理由はシンプル。

王都ラハツェンのこの区画にあるフランシュルス記念公園に”本物”があるのだ。

ときには観光スポットとして、ときには腕試しとして機能するそれは子供には少々大きすぎてケガをする子があとを絶たなかった。

行政に対策を軽い調子で頼まれ、その解決策として青竜亭の店先で試運転するに至ったのがこの筐体というわけだ。

もちろんただ子供向けとして出したのでは結局本物に群がるだろうことを予測して、ちょっと奮発してマナバッテリーを仕込み努力具合に合わせて点数を表示するというオマケをつけた。

結果は成功、はした金である銅貨一枚でチャレンジする子供はこちらに群がり、本物で無茶をする子はあまりいなくなった。

成功、しすぎてしまった。


「本物は公園にあるんだからそっちで腕試ししてくればいいのに…」

「あっちの方は点数が表示されねえからなあ、どうせ腕試しするならある程度結果がわかる方がいい!」

「おとなげないぞー」

「おとなげないぞー」


せっかくの新しいおもちゃをバキバキに壊されてしまった近所の悪ガキどもが図体のでかい悪ガキにブーブー文句を言っていた。

いいぞもっと言ってやれ。


「それなら大人が使っても壊れない筐体も作ったら?」

「そう!ぜひそうすべきだ!」


いつもの弟の余計な提案にがっつり食い入る35歳児。

まったくしょうがねーな…


=☆= 三か月後 =☆=


青竜亭のあるサウムロイストファーラム通りに大通りまで届きかねない大行列ができていた。

都市迷惑防止条例で行列は禁止されてるのに行政は何をやっているのだ。


「我々としても退去させたいのはやまやまなのですが、あいにく人の話を腕力で返してくる脳筋だらけでして…」

「つかえねー」


大人向け聖剣ロックは点数が出ることもあってむしろこっちで高得点を争う腕自慢が集うようになってしまったらしい。

行列を散らすには筐体の数を増やすのが一番いいが、あいにく青竜亭の前にはもう筐体を置くスペースがなくなっていた。


「兄さん!メインストリートの間借り店舗を借りてきたよ!」

「なんでお前はそんなに手際がいいんだよ。」

「会長、私めもおりますれば。」

「お前もかよ。」


俺の与り知らぬところで勝手に話を進めていた弟と経営代行に呆れつつ、現行の大人用筐体とその量産品を間借り店舗に押し込めたおかげで行列はあっというまになくなった。


=☆= さらに三か月後 =☆=


「間借り店舗が都市条例違反レベルのビルになってる件。」

「うちの街には高さ制限の景観法はありませんよ、残念ながらね。」


この街を実質牛耳る(自称)悪の六商会の中の一人のが淡々と説明するのを聞きながら俺は頭を抱えた。

いくらなんでもおかしいだろ、あんな筐体一種じゃ誰だってすぐ飽きるはずなのに。


「やっほー兄さーん」

「 お ま え の し わ ざ か 」


店の中をよく見たら現代日本にもありがちなビデオゲーム筐体などがずらりと並んでいた。

その中で弟は百戦錬磨そうな戦士(放心中)の対戦席に座っていた。


現地への技術的な介入は現地民の心理的成長によくないからと再三注意してきた俺は罰としてジェイドの頬を思いっきり横に引っ張ってやった。


「〇ぁっきゅーうん〇ー」

「お前は小学生か」

「ちょっと弁明させてもらうと、半導体に似た魔導回路がつい最近発明されたからいろいろ入れ知恵したんだけどね…命のやりとりしてる人との対戦って本当に面白いし…」

「それでもダメなもんはダメだろ、もしかするとこっちには想像もつかない商品が出たかもしれないのに。」


はっとして後悔した[orzった]弟は放っておいて、店内を改めて見まわす。

半分は酒場、半分はアーケードというていらしく筐体の横にリカーテーブルが置いてあったり、筐体そのものがテーブルとして機能しているものもあった。

照明や内装はシック、BGMもやかましいアーケード機の不協和音の裏でおとなしいジャズが流れてる。

店の奥に本格的なバーカウンターがあってバーテンダーやウェイターまでしっかり現代風に正装している。

とてもファンタジーな街の心臓部とは思えないありさまだ。

むしろファンタジーっぽさを前面に押し出してるただのゲームバーではないかと勘繰ってしまう。

なんということをしてくれたのか。


中にはこんな荒くれものが集まる場には似合わない知的そうな魔法使いやおとなしそうな聖職者の姿まであった。

以下はインタビュー内容の抜粋だ。


「いいですねこういうゲームは。もちろんただボタンを叩いていれば勝てるようなものは論外ですが、盤上の戦いでは戦略しか学べませんからね。とくに都市開発ゲームは癖になってしまいました。いずれは領地経営もいいかもしれませんね。」(『私の町の町長さん』に座っていた魔法使いで貴族のDさん)

「実は先輩に勧められまして…『差し込み』の勉強には非常に役立っております。ただただ回復すればいいものではないというのは痛いほどよくわかりました。実戦に挑む前で本当に良かったと思っております。」(多人数協力ゲーム『アドベンチャーシミュレーター』に座っていた聖職者のSさん)


ゲームで学んだことが実戦でどれほど役に立つかは知らんが、気に入ってもらえたようでなによりだ(白目)

ただ、最近は逆に子供や一般女性がこそこそ店に入ってくることもあるらしく、もめごとを避ける為に二号店を作る計画もあるようだ。

間借り店舗ってなんだっけ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ