63 四人の相談 その2
前回のおはなし:四人で相談した。
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ゼノビアの指導について話し合った後、ロゼッタがアルティに尋ねる。
「そういえば、アルティってどういう経緯で総長先生に弟子入りしたの?」
「私の場合は事情が特殊なのです」
「特殊?」
「元々、父がお師さまの弟子だったのです」
「そうなんだ。アルティのお父様の推薦で弟子入りしたの?」
「いえ、五歳の時に父が亡くなって、それからはお師さまが親代わりです」
「あ、ごめん。悲しいこと思い出させちゃって……」
「気にしないでください」
アルティは気にしなくていいと伝えるために笑顔を浮かべる。
三歳の時に母が、五歳の時に父が亡くなったのだという。
そして、身寄りのないアルティはゼノビアに引き取られたのだ。
聞きづらそうにしているロゼッタの代わりに、俺が尋ねる。
「アルティ。弟子入りは何歳の時なんだ?」
「十歳の時です」
元々、アルティは剣の訓練が好きで、ずっと一人でやっていたのだという。
ゼノビアも気が向いたときに教えてくれたりもした。
その指導は弟子に対するものではなく、弟子だった父の代わりに教えただけだろう。
「弟子入りは守護神の寵愛値を測った後です」
現代の慣習通り、アルティも十歳で守護神寵愛値測定装置で計測した。
すると、剣神の寵愛値が尋常ではなく高かったらしい。
「そのとき、はじめてお師さまから弟子になりたいか尋ねられました」
「へー。そういう経緯があったんだな」
「あの、アルティ。弟子になって何か変わった?」
「毎日、指導してもらえるようになりました」
それまでは、まれにゼノビアが教えてくれるが、基本アルティは自主練ばかりしていた。
弟子入りしてからは、アルティが遠出していない限り毎日教えてくれるようになったという。
弟子になる以上、厄災の獣や教団と戦うことになる。
弱いままでは命を落としかねない。積極的に教えてくれるようになったのだろう。
俺は危険性について、ロゼッタにも言っておくべきだと判断した。
「ロゼッタは、俺たちと一緒に厄災の獣と戦うって言ってくれたよね」
「うん」
「でも、今は引き返すことは可能だ。やっぱり無理って言うのもありだろう」
「そんなこと……」
「いや、聞いてくれ。ロゼッタもティーナも、まだ真の強敵とは会っていない」
自分よりも、はるかに強い敵と出会って心が折れるかどうか。
それは、出会ってみるまでわからない。
心が折れてしまえば、もう魔王厄災の獣テイネブリスと戦うのは難しかろう。
「弟子入りすると、引き返しにくくなる」
「それは……そうかもだね」
「弟子入りしたとしても、心が折れてしまえば戦えないと思うが……」
心が折れてしまったものを、無理やり戦わせても碌な戦力にならない。
とはいえ、弟子入りしてしまえば、完全に戦いの場から退くのは難しい。
厄災の獣との戦いに回されなくとも、それなりの敵とは戦い続けることになる。
魔王以外にも、教団の魔人や凶悪な魔物など強い敵は少なくないのだ。
それらと折れた心で戦い続けることになる。
「正直、命を落とす確率も低いとは言えない」
「もちろん、残された家族は救世機関が責任をもって面倒を見ますが……」
アルティがローズのことを考えて、そう補足する。
「それは心強いね!」
ロゼッタは明るく微笑んだ。
「ティーナはどう思っているの? 怖くないの?」
「それは怖いわよ。わたくしなんかがお役に立てるのかっていう思いもあるし」
「ティーナぐらい強くて才能があってもそうなんだね」
ロゼッタの頭にはティーナの守護神が七神であることがあるのだろう。
それをティーナもわかっている。
「加護の数が才能ではありませんわ」
「そうかもしれないけど……」
そして、ロゼッタはゆっくりと話し出す。
「正直に言って、魔王や教団との戦いで死ぬこと自体は怖くはないんだ」
「…………」
俺や皆が黙って聞いていると、ロゼッタは恥ずかしそうに微笑んだ。
「……いや、ごめん。嘘ついた。本当は怖いけど」
「うん、わかるよ」
「でも、一番怖いのは足手まといになる事だよ」
「それもわかる」
「あたしが足を引っ張ってみんなが死んだらと思うととても怖いんだ」
それからさらに少し考えてロゼッタが、静かにつぶやく
「……いや、一番怖いのは、みんなの期待を裏切ることかもしれない」
「……わからなくもない」
もっとやれると思っていたのにロゼッタはまったくの役立たず。
心底、期待外れだ。
そんなことを、レジーナやゼノビアに思われるのが怖いのだろう。
そして、俺たちにもそう思われるかもしれないと恐れているのだ。
その気持ちはわかる。
絶対に死にたくないとか強い敵とは戦いたくないと言われたら弟子入りを止めるところだ。
逆に死ぬのは怖くないと、強がりではなく本心から言い切られても止めるところだった。
死ぬのが怖くないやつとパーティーを組むのは、こちらが怖いからだ。
まじめに考えるロゼッタに、
「そんなことはないと思うわよ?」
ティーナはそう言うがロゼッタの不安は解消されないだろう。
「ロゼッタ。よく聞いてくれ」
「うん」
「正直に言おう。俺もレジーナさまも、ロゼッタが思うほど今のロゼッタに期待していない」
俺がそう言うと、ロゼッタは少し悲しそうな顔でこっちを見つめてきた。




