51 剣を作ろう
前回のおはなし:ゼノビアから剣の素材をもらった。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の2巻も発売中です!
ゼノビアの部屋を出たところで、俺はふと思いつく。
「魔法の薬とかもあったほうがいいな……」
そこで、俺はミルトの部屋にも寄ることにした。
部屋を訪ねると、ミルトは笑顔で部屋の中に入れてくれた。
「どうされました? 師匠」
「実は武器を作ろうと思っててさ。よかったら余裕のある素材を分けて欲しいんだ」
「俺が持っている素材なら何でもどうぞ。どのような素材が入用ですか?」
ゼノビアからもらった素材の種類と量を説明して、ミルトからも素材をもらう。
ミルトがくれたのは、主に魔法の触媒などだ。
「助かった。これで良い武器が作れそうだよ」
「なによりです。武器が完成したら、後学のために見せていただけませんか?」
「もちろんだ。見せに来よう」
「ありがとうございます」
そう言ったミルトは本当に嬉しそうだ。
勉強熱心なことで何よりだ。
その後、俺はシロとフルフルと一緒に自室へと戻った。
「めえ!」
遊んでもらえると思ったのか、シロが俺の太もも辺りに尻尾を振りながら頭突きしてくる。
シロはゼノビアとミルトの部屋では大人しかった。無言で俺に頭突きする程度だった。
シロなりに、気を使ったのかもしれない。
「シロ、いまから武器を作るから忙しいんだ」
「めえ?」
仕方ないので抱っこして、しばらく撫でてやる。
シロは赤ちゃんなので寂しいのかもしれない。
「しばらく大人しくしているんだよ」
シロを床に降ろすと、俺は剣の生成を開始する。
「アルティの剣は……練習してからの方がいいかな」
まず自分用の短剣でも作って練習しよう。そう決めた。
先日の獣の眷族との戦闘を脳内で何度も再生する。
今の体格に合わせた武器は、今の体格で行った戦闘を参考にする必要がある。
自分の体格と速さ。力の強さ。間合い。魔法を使う際の発動までのラグ。
そういう情報を整理して、具体的な剣のイメージを固めていく。
イメージを充分固めたところで、剣の芯となるべき素材を選び出す。
あまり硬い素材だと折れやすくなってしまう。
ある程度柔軟で、非常に粘り強い素材を選ばなければならない。
「やはりこれかな」
俺は芯材としてオリハルコンを選んだ。
オリハルコンは定番だが、魔力の流し方で硬くも粘り強くも出来る。
魔力をうまく流したときの、オリハルコンの粘り強さは折り紙付きだ。
だが、その魔力をうまく流すというのが非常に難しい。
必要な魔力量も膨大だし、非常に繊細な魔力調節が求められる。
俺はまず魔法でオリハルコンの形を剣の芯に適した形に整えた。
それからオリハルコンを粘り強くするために魔力を流す。
一時間後。
「……ふう。やっと、できた」
俺は大きく息を吐いた。じっとりと背中と額に汗が流れていた。
ものすごい集中を要する作業だった。
「本気で作ると、ここまで魔力を消費するのか」
魔力をかなり消費しただけでなく、体力もかなり使った。
全力で二万メートルを走った後のようだ。
前回、つまり今アルティが使っている剣を作ったときは、魔力を剣の形に整えただけだ。
それでも魔力はそれなりに消費した。だが集中力も体力も大して使わなかった。
「クオリティそこそこの剣と、クオリティをできる限り高めた剣の差がここまでとはな」
俺の作れる最高精度の八割程度の剣でいいのなら一瞬だ。
だがそこから十割のクオリティに近づけるにつれ、必要な労力が跳ね上がる。
それを実感できただけでも、かなり有用だった。
とても良い訓練にもなりそうだ。
「いい剣になりそうだ。鍛冶神と剣神のおっさん。ありがとう」
俺は天を向いて感謝の言葉を述べる。
もちろん神の世界は、次元の違う世界にあるので地上と上下関係はない。
だが、神に感謝するときは上を向いた方がしっくりくる。
神の世界についてよく知らなかった前世からの癖のようなものかもしれない。
「疲れた。芯を覆う刀身は明日に作ろう」
あまり無理をするとクオリティを維持するのが難しくなる。
特に集中力が切れれば、質は落ちてしまう。休養は大切だ。
魔力を消費することでの魔力量増大と、魔力操作の訓練は別のことをすればいい。
俺はフルフルとシロにおやつでも上げようと、居間に戻る。
ゼノビアたちの居住空間ほど広くはないが、生徒用居住空間もかなり広い。
複数の部屋が用意されている。
それらの部屋を俺の部屋、サリアの部屋、寝室に、俺は分けて利用している。
そのほかに居間と台所、トイレとお風呂も完備されているのだ。
家族を連れて入る者もいるので広めに作られているようだ。
「めええ」
「ぴぎっぴぎっ」
居間では、シロがフルフルの上に乗って遊んでいた。
フルフルはどんどん形を変えている。
そして、その上にいるシロが器用にバランスをとっていた。
フルフルがシロと遊んでやっていたようだ。面倒見のいいスライムだ。
「フルフル。シロ。おやつでも……」
「めえめええ!」
シロがフルフルの上から飛び降りると一気に駆け寄ってきた。
一生懸命頭突きをするので、抱き上げる。
フルフルはゆっくりと近づいて来た。
「まあまあ、落ち着いて」
「めえ」
「ぴぎっ」
「おやつを食べるためには食堂に行かねばならないんだ」
俺が今持っている食べ物は保存の効くものばかりだ。
具体的に言うと干し肉などだ。
フルフルはともかくシロはあまり喜ばないだろう。
「ゼノビアから魔法の鞄をもらったからな。食堂でお菓子とか分けてもらっておこうか」
「めえめえ!」
魔法の鞄は容量が大きいだけでなく、中に入れたものは変化しない。
食べ物の保存には最適なのだ。
「じゃあ、食堂に行こうか」
「めめえめえ!」
――コンコンコン
俺がシロとフルフルを連れて、部屋の扉を開けようとしたとき、向こうからノックされた。
「ウィル、いるかい?」
どうやらロゼッタがやってきたようだった。





