50 剣の素材を手に入れよう
前回のおはなし:アルティに秘密を明かした後、武器を作る準備をした。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の2巻も発売中です!
アルティとの模擬戦闘を終えた後、俺は一人でゼノビアの部屋に向かうことにした。
一人と言っても、フルフルとシロは当然一緒である。
ゼノビアを訪ねた理由はアルティの剣を作るための素材を手に入れるためだ。
もっと言うと、素材を買うためのお金を借りるためである。
許可なしでも王都の内部に行くだけなら外出はできる。
だが、八歳児なので所持金が足りない。
高性能な剣を作るために必要な素材は高価なのだ。
以前アルティに作ったときのように、魔力で剣を作り出すことはできる。
だが、それだとクオリティを高めるのが難しい。
特に、耐久性を高めることが難しいのだ。
適切な金属などの素材を使った方がより上質で安定的な武器を作ることができる。
ゼノビアの部屋の前に到着すると、ノックする前にゼノビアがすぐに出てきた。
あらかじめ誰が近づいて来たのか把握しているのだろう。
部屋の中に入り扉を閉めてから、ゼノビアは言う。
「師匠、よくおいでくださいました。どうなされたのです?」
「少し相談があってな。お金を貸してほしいのだが……」
「構いませんよ。おいくらですか? いま手持ちにあるのは一億ゴールド程度しかないですが……」
「い、一億ゴールドだと?」
一億あれば大きな家が建つ。
さすがに高価な金属であっても、剣一本分なら数百万あれば充分だ。
「足りませんか? 数時間待っていただければ、数十億程度ならばご用意できます」
「いやいや、そんなには必要ないんだ。剣を作るための素材を買うだけだからな」
「なるほど。剣に適した素材なら、持っているので差し上げましょうか?」
「え? 良いのか?」
「もちろんですよ」
それからゼノビアに奥の部屋へと案内された。
ミルトの部屋と違って、整然としている。
壁に魔法のかかった収納箱がいくつもあり、部屋の中央には大きな机があった。
「ちょっと待ってくださいね」
ゼノビアは迷いなく一つの箱を開けると、素材を取り出していく。
箱ごとに何を入れるかきちんと決めているようだ。ゼノビアらしい。
「魔法の鞄の箱版か?」
「そうです。やはり便利なので」
やはり内容量を拡大している箱のようだ。便利そうだから今度俺も作っておこう。
俺がそんなことを考えている間にも、ゼノビアはどんどん机の上に素材を並べていった。
「手持ちの中で剣の素材として適しているものは、このぐらいですかね」
オリハルコンやミスリルなどの魔法金属。
魔導オブシディアンと言った魔法石材。
竜鱗や竜角をはじめとした魔物からの戦利品。
ゼノビアが並べたのは、そういった最高水準の素材だった。
「これは素晴らしいな。確かに王都でも簡単には買えない素材だ」
「そうでしょう。ご自由にお使いください」
「ありがたいが……これは高価すぎる。俺の所持金と稼ぐ能力ではいかんともな」
「それもお気になさらないでください。アルティの剣を作り直してくださるんでしょう?」
「どうしてそれを?」
「師匠ご自身はあまり剣にこだわらないですし」
「それはそうかもしれないが」
「弟子のアルティが使う剣なら、師匠として素材に加えて製作代金を支払いたいぐらいです」
「そういうことなら、お言葉に甘えよう」
「どうぞ、そうなさってください」
それから、ゼノビアは少し遠い目をして言う。
「それに我らは師匠の遺産を引き継いだのですよ」
「そうだったのか」
エデルファスの金銭的な遺産はヴォルムス家が引き継いだ。
だが、魔法のアイテム、各種素材などは弟子たちで分け合ったということだ。
当時のヴォルムス家の当主は価値を理解できなかったらしい。
「代替品か金銭でよいならば、いつでも師匠にお返しする準備は出来ています」
俺の遺産の魔法道具や素材などは百年の間に使用されたものが多い。
弟子たちの手許にいまも現存している物はさほど多くない。
だから代替品か金銭でということのようだ。
「……厄災の獣を討伐するための活動に、必要な時は頼むかもしれない」
「はい。いつでもおっしゃってくださいね」
俺は素材の厳選を開始する。
それを興味深そうにゼノビアは見ていた。
「ゼノビアはどんな剣を使っているんだ?」
「遺跡で見つけた魔法の剣ですね」
ゼノビアは剣を鞘から抜いて俺に見せてくれた。
とても古く、そして良い剣だ。
「見事な剣だ。参考にさせてもらおう」
「お役に立てたら何よりです。それにしても師匠」
「なんだ?」
「師匠が武器にこだわらないのは知っていますが、ご自分のための剣は作られないのですか?」
「……そうだな。作った方が良いかもしれないな」
前世の俺は賢者だった。
魔法で戦っていたため、武器など何でもよかった。
武器を使うぐらいなら、魔力を拳に集めて殴ったほうが威力が出た。
だが、今は非力な八歳児。
それに折角剣神や武神、闘神、戦神たちと修行したのだ。
「俺も、専用武器ぐらい作っておくか。武器製作はいい訓練になるし」
「それがいいと思います。ですので多めに素材は持って行ってくださいね」
「ありがたいが……」
「師匠のことですから、試行錯誤されるのでしょう? 妥協するべきではありません」
「じゃあ、お言葉に甘えるとしよう」
俺はいろいろな素材をいただくことにした。
「これもどうぞ。必要になるでしょうし」
そういって、ゼノビアは魔法の鞄もくれた。
「こんな高価なものを……ありがとう」
「いえいえ! お気になさらないでください! 必要になったらまた来てくださいね」
「助かる」
「これからも武器に使えそうな素材を集めておきます!」
それから俺は退室することにした。
「師匠、いつでもおいでくださいね」
「ありがとう。あ、そうだ。大事なことを伝え忘れていた」
俺はアルティに前世について話したことを報告する。
「そうですか。了解しました」
ゼノビアはあっさりとした様子でそう言った。
俺はゼノビアに再度お礼を言って退室した。





