48 ミルトの部屋
前回のおはなし:ミルトの部屋を見に来た。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の2巻も発売中です!
ミルトが感動しているようなので、俺は前世を思い出しながら、ミルトの頭を撫でておく。
昔、褒めるときはよくこうしていたものだ。
「うん。よく頑張った」
「あ、ありがとうございます」
ミルトが涙ぐみはじめたので、撫でるのはほどほどにしておく。
一方、シロは積みあがった本を見て我慢できなくなったようだ。
ぴょんぴょんと飛んで、本の上に乗った。
ヤギは高いところがあると、すぐ登りたがるのだ。
「めえめえ!」
「シロ、やめなさい」
「めえ?」
シロは目で「なんで?」と言っている。
「本は貴重な物なんだ。大切にしないといけないよ」
「めえ」
シロは理解したのか、本からぴょんと飛び降りた。
シロは子ヤギというより赤ちゃんヤギだ。まだ子供のルンルンやフルフルもまだ幼い気がする。
だから、何事も丁寧に教えてやらないといけない。
「ぴぎ」
フルフルが俺の肩から、床に降りる。そして少しだけ膨らんだ。
シロに乗っていいよと言っているのだ。
優しいお兄ちゃんだ。いやお姉ちゃんだろうか。スライムの性別はわからない。
いや、そもそもスライムに性別があるのだろうか。
「めえ!」
シロはフルフルの背に飛び乗って短い尻尾を元気に振った。
それを見てほほ笑みながらミルトが言う。
「ここではなく隣の部屋で先日師匠たちが倒した獣の眷族の調査をしております」
「ふむふむ。そうか。そうだろうな」
さすがにこの部屋は乱雑すぎる。調査どころではない。
どうやら、弟子たちの拠点は、五、六部屋で構成されているようだ。
寝るための部屋や炊事洗濯できる部屋。来客用の部屋。研究用の部屋。
トイレや風呂などもあるようだ。
ちなみに今いるごちゃごちゃした部屋は、来客用の部屋である。
ミルトが総長だった時は、ここで色々来客の相手をしていたはずだ。
「師匠、こちらになります」
「ああ、わかった。シロ、研究室には危ない薬品もあるから、大人しくしないとだめだよ」
「めえ!」
シロはフルフルの上に乗ったまま、堂々と「わかった!」と言っている。
少し不安だが、恐らく大丈夫だろう。
そして、俺はゆっくりミルトの研究室へと入る。
研究室はきちんと整理されていた。
初めてここに来た俺でも、どこに何があるのかわかるほどだ。
「ラベルにきちんと薬品名を書いてあるし、わかりやすいな」
「はい。師匠に手伝ってもらうために頑張りました」
「それはありがたい」
もしかしたら、この部屋を整理するために余計なものを全部外に出したのかもしれない。
その結果、来客用の部屋があのような惨状になったと考えれば理解できる。
「師匠は、暇な時間などに、この部屋に自由に入って調査研究をお願いします」
「それは助かるが、いいのか?」
「もちろんです。合鍵も渡しておきましょう」
そして、俺はミルトから調査研究の進捗報告を受けた。
調査研究は昨日始めたばかり。その上、部屋の片付けもしていたのだ。
まだ、ほとんど進んでいないようだった。
これから一緒に調査研究していけばいいだろう。
退室する前に、俺はゼノビアとミルトに尋ねる。
「そういえば、勇者の学院のセキュリティはどの程度のものなんだ?」
「当然、がっちり固めています!」
「俺の作った結界で守護しているので……」
ミルトお手製の結界ならば、頼ってもいい。
そのぐらいには、俺は、俺の魔導の一番弟子を信頼している。
「開校以来、一度も敵の侵入を許したことはありません」
「それは凄いな」
勇者の学院は賢人会議の拠点があり、若者の育成機関でもある。
テイネブリス教団にとっては、目障りだろう。つぶしたいと考えるのが普通だ。
にもかかわらず、開校以来、いままで何事もなく過ごせている。
「それなら、これから外に出るときはルンルンを連れて行ってもいいかもしれない」
「師匠は妹御の護衛を心配されているのですか?」
「そうだ。ゼノビア。一応、ルンルンは護衛も兼ねて妹につけている」
「安全面だけで言うならば、ルンルンをつけなくても良いかと」
「そうだな。考えてみよう」
託児所に慣れるまではルンルンが一緒の方がいい。
だが、戦力としてルンルンには活躍して欲しいという思いもあるのだ。
「すごく難しい問題だな」
「確かに」
ゼノビアも俺と一緒に悩んでくれた。
その後、俺はミルト、ゼノビアと別れて、部屋を出る。
フルフルとシロと一緒に本館から外に出ると、アルティが立っていた。
「アルティ。もしかして待っていてくれたのか?」
「はい」
「それは悪かった」
「気にしないでください」
アルティはゼノビアから俺についているよう命じられているのだ。
俺にずっとついて貰うのも、申し訳ない気になってくる。
「アルティ。別に常についていなくてもいいよ」
「私がそうしたいから、そうしているだけなので」
「……そうか」
ふとアルティを見ると、真剣な目でこっちを見つめていた。
何か言いたそうではある。だが、あえて言わない。
そんな雰囲気を俺はかぎ取った。
じっくり考える。そして一つ思い至った。
「アルティ。少し場所を移そう」
「はい」
そして俺の部屋へと移動する。
アルティに椅子を勧めて、お茶を出しつつ俺は尋ねた。
「アルティ。気になっていることがあるのだろう?」
アルティは、驚いてはっとしたような表情を浮かべた。




