113 竜王温泉 その3
書籍化決定!
12月にGAノベルから発売です!
俺は素直なルーベウムを撫でてやる。
翼の付け根の間などを、かりかりと優しく掻くと、気持ちよさそうに羽をバサバサさせた。
そんな様子をドルフレアは興味深そうに見つめていた。
「ウィル殿は至聖なる君主とどのようなご関係なのでありま……なのだ?」
ドルフレアは俺に敬語を使いかけて慌ててため口に修正する。
敬語を使わないようルーベウムに命じられたからだ。
ルーベウムの命を守ることはドルフレアにとって、とても大事なことなのだろう。
「ええと、そうですね」
俺は少し考える。
説明自体は難しくない。だがどこまで明かすかが問題だ。
ディオンの考えが知りたくて、ディオンをちらりと見た。
「全て、お任せいたします」
ディオンはにっこりと微笑んでいた。
お任せするということは全部話してもいいということだ。
つまり、ディオンはドルフレアのことを信用できると言っているのだ。
俺はディオンの見る目を信じている。
説明してもいいかもしれない。
これからのテイネブリス教団との戦いにおいて、竜王の協力が得られたらとても心強い。
それは厄災の獣テイネブリス本体と戦う際にも、強力な力となるだろう。
「俺とルーベウムの関係を説明するには、色々と事情を話す必要があります」
「ふむ」
「長くなりますし、ロゼッタやティーナも知らないことも含まれます」
「極秘と言うことだな」
「はい。まず俺は転生者でして……」
あえて言葉にして口止めはしない。
言葉にしなくとも、ドルフレアは理解してくれるだろう。
それにその方が、竜王に敬意を示すことができると思ったからだ。
「そして、死んだ後にですね……」
「なんと」
「実はシロも……」
俺は丁寧に説明を続けた。
前世がエデルファスであることや、神々の使徒であること。
シロがヤギの神獣で、フルフルがスライムの神獣であること。
ルンルンという犬の神獣もいること。
そして、テイネブリスを倒すことが目的であることも教える。
「そして、ルーベウムは竜神が俺を助けるために遣わしてくださったのです」
「なんですと」
「竜神は俺の師匠の一柱ですからね」
「と、いうことは……。ウィル殿は竜神様の愛弟子となるわけだな」
「そういうことになります」
「それならば、八歳にして我が腕を燃やし尽くしたその力にも納得がいく」
エデルファスの転生体というよりも竜神の弟子と言うことの方が重要なようだ。
竜神の敬虔なる信者であるドルフレアにとっては当然と言えるだろう。
ドルフレアはこの上なく真剣な表情で考え込む。
それを見たシロが俺の腕の中から飛び出て、近寄っていった。
そしてドルフレアへの登攀を開始した。
俺がシロを止めようとしたとき、ドルフレアが口を開く。
「竜神さまの愛弟子と、至聖なる君主が厄災の獣を倒そうとしているわけか」
「そうなります」
「そだよー。きゅるるる」
「ならば、我ら大山脈の竜たちは、全面的にウィル殿に協力致しましょう」
ドルフレアは俺とルーベウム、そしてディオンを見ながら力強く言った。
「ありがとうございます。ものすごく心強いです」
「ありがとー。きゅるぅ」
弓の弦の材料を求めに来て、強力な味方を得られたのだ。
非常に幸運だ。
厄災の獣との戦いにとっても大きな一歩と言えるだろう。
「師匠。よかったですね」
ディオンはニコニコしていた。
「もしかして、これもディオンの狙いだった?」
「そうなったらいいなと思っていた程度です」
「それは狙いと言っていいのではないか?」
「元々ドルフレア殿に、ルーベウムさんを会わせたいとは思っていたんです」
「ああ。至聖なる君主に会わせてくれたこと、心から感謝しておる」
「はい。髭をもらい、ルーベウムさんを会わせることができれば、あとはなるようになると」
「ふむー」
ディオンは偶々こうなったというような口調だ。
だが、竜王はとても敬虔な竜神の信者。そしてルーベウムは竜神の使徒。
二者を会わせれば、こうなることは予想できる。
当然、ディオンも予想していただろう。
つまり、全てディオンの思惑通りに進んでいるのではなかろうか。
「……ディオンは昔から頭が良かったものなぁ」
「ありがとうございます」
ディオンはとてもご機嫌だった。
そして、そのころには
「めえぇぇぇ!」
シロがドルフレアの頭の上に登頂を果たしていた。
登頂をはじめかけたシロを止めようとしたところで、会話が始まった。
そのため、つい止めるのを忘れていたのだ。
「シ、シロ! 降りなさい! さすがに失礼だろう」
「いや、構わぬ。心地よいぐらいだ」
ドルフレアはなぜかとてもニコニコしていた。
「いえ、そういうわけには……。すみませんうちのシロが大変失礼なことを……」
「気にしなくてもよい。頭の鱗が蹄に刺激されて本当に気持ちが良いのだ」
「……そうなのですか?」
「ああ」
俺は、いつもシロに頭の上に登られているディオンをちらりと見た。
「はい、師匠。確かに気持ちいいですよ。とても良いマッサージです」
「そうだったのか」
「めぇ!」
シロはどや顔をして、ドルフレアの頭頂部をフミフミと足踏みしていた。




