独りぼっち切符 声劇台本
利用ガイドライン
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登場人物 桜井 女 大学生
吉田 男 女よりは年上
場所 駅のホーム
時間 終電前
登場人物表
桜井♀:
吉田♂:
桜井「あの、これ良かったらどうぞ。コーヒーです。終電来るまで寒いですよね」
吉田「ああ、ありがとうございます。なんか、わざわざすみません」
桜井「いえいえ、なんか、悪いことしちゃいましたし」
吉田「初めましてでこんなこと言うのはあれですが、あなた、変わった人ですね」
桜井「そうですか?」
吉田「普通悪いことしたなんて思いませんよ。飛び込み自殺を止めたことなんて」
桜井「え、だって、それはその人の選択ですし、私、吉田さんでしたっけ?吉田さんの人生背負えませんし」
吉田「まあ、そうですね」
桜井「まあ、結局、反射的に腕をひっぱちゃたんですけどね。本当にすみません」
吉田「いえいえ、そりゃあ、お礼は流石に言えませんけど、お気持ちは非常にわかります。貴女を責めることは出来ません」
桜井「ありがとうございます。でも、次自殺するときは電車はやめた方がいいですよ。いろんな人に迷惑かけますから。死んだ後まで迷惑かけるのは嫌でしょ」
吉田「なるほど、そうですね。ただでさえ生きてるだけで迷惑かけるんです。死んだ後も迷惑かけるのは嫌ですね」
桜井「そうですよ。死ぬときは死に支度ちゃんとして、迷惑かけずに行きましょう!」
吉田「とはいえ、いざ死ぬぞって気持ちが折れると、次こそって気持ちも無くなりますね。はあ、これからどうしようかな」
桜井「ひとまず、身の回りの整理してみればいいんじゃないですかね。これから生きるにしても楽になりますし、死んだ後も他の人が片付けするの楽になりますよ」
吉田「……今更、誰も片付けてなんてくれませんよ」
桜井「そうでもないですよ」
吉田「え?」
桜井「生きてる限り、誰かしらに縁を繋げられるんですよ。行政ってのはそういうものです。吉田さんと少しでも繋がってる誰かがいれば、必ず連絡は入りますよ」
吉田「確かに……妻とは離婚しましたが、息子たちには連絡がいくかもしれません。そうなっては申し訳ないですね」
桜井「そうですよ。だからせめて、身の回りの整理位しましょ」
吉田「なるほどねえ、それにしても貴女詳しいですね。そういうお仕事なさってるんですか?」
桜井「いえ、私はただの女子大生です。ただ、経験があるんですよ」
吉田「経験?」
桜井「私、両親が記憶にないくらいの幼少期の頃に離婚してるんですけど、どうも父親について行った弟がいたらしいんです。それで、先々月に弟が自殺したらしくて、連絡が私のところに来たんです」
吉田「それはそれは……大変でしたね」
桜井「ええ、それはもう。うち、呪われてるんじゃないかってくらい両親も親戚縁者も皆死んでて、葬式も私がやらなきゃいけなくなったんです」
吉田「大変なんてもんじゃないじゃないですか!」
桜井「ええ、つい最近すべて終わったんですけど、そりゃあもうバタバタしましたよ、でも、同時に夢を見てるみたいでした」
吉田「夢、ですか?」
桜井「はい。弟と言っても、死んでから初めて存在を知った、言わば知らない人です。知らない人の葬式を挙げるって、不思議な気分でしたよ」
吉田「そりゃあ、確かにそうでしょうね。想像もつきませんよ」
桜井「はい。あ、電車来るみたいですよ」
吉田「あ、本当だ……って、桜井さん、危ないですよ。黄色い線の外側には立っちゃいけないって……」
桜井「もう私には誰もいません」
吉田「え?」
桜井「親も親戚もいないって、それだけで心細かったのに、それでも生きようとしたのに、いるはずだった弟すら死んでしまった」
吉田「ちょっと、桜井さん!?」
桜井「最後に、人としゃべれてよかった」
吉田「ちょっと、冗談言わないでくださいよ、ねえ、ねえ、桜井さん!桜井さーん!!」
間
吉田「人は死んだら迷惑かけるって、そう言ったのは貴女じゃないですか……」