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おにさんこちら

「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


他愛ない遊戯だ。私は囃し立てる手の音を頼りに一歩一歩足を進めた。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


両手を前に突き出して腰を落とし、覚束ない足取りで次の鬼を探す。私の格好はさぞ滑稽だっただろう。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


囃し立てる声は止まない。手の音の合間に聞こえるのは、侮蔑の嘲りではないか。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


成程、私の姿はいかにも愚かに見えただろう。闇に戸惑い足が進まない。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


嘲笑が増してゆく。私が一挙一動する度にそれは大きくなる。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


単なる遊戯だったはずのそれは、私という鬼を標的にした差別的な人間社会の縮図となっていた。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


このままでは、何時までたっても次の鬼が捕まらない。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」


捕まえなくては。


次の鬼を。


このヒエラルキーの最下層から脱出しなくては。


早く私も人を見下したい。


早く。


はやく。


ハヤク。


「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」











それが、私の生きていた頃の記憶の最後。


どうやら私は遊んでいた階段の踊り場から落ちたらしい。


現在私は手を叩いて鬼を呼んでいる。


今度は誰を鬼にしようか。




「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」




手の鳴るほうは、


こっちだよ。



目隠し鬼は危険な場所で遊んではいけませんね。


怖いことが起こります。



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