第7話(1章) … 講習4
まさか、この期に及んで"守秘事項"なんてワードが出てくるとは…。
俺の苦笑いとも呆れともつかない表情を見て、レイラさんの方も少しだけ跋が悪そうな顔になっていた。
「こちらからは教えられないことも、正直言ってあります。すみません。」
彼女の謝罪に漠然としたモヤモヤを感じつつ、こればかりは追及しても無駄と判断する。
「でも、まだお伝え出来ることはたくさんありますから。話を続けましょう。」
そう言われれば、俺の方もそれを拒否する気は毛頭ない。
今は少しでも情報が欲しい段階だ。
「久保さん、失踪事件に巻き込まれた人々には、もう一つ条件がありましたよね?」
「特定のポイント…波動が似ている以外…。」
俺は少しだけ考えた後ですぐに答えを見つける。
「年齢、ですね。」
「はい。こちらに呼ばれてしまった方々は19~25歳、または44~50歳に限定されていましたね。」
これにも何か理由が?という俺の問いに対し彼女の答えは…
「人々の波動の"性質"というのは基本的に生涯変わりません。但し、年齢によって"強弱"はあります。該当する年齢は丁度、波動が強く出る年齢に該当します。」
「強く出る年齢だから、その影響力も強くなる…。影響力が強ければ、引き寄せられる力も強くなる…ということですね?」
『本当に久保さんは理解が早いですね。』なんてことを言ってくれる。
今までの人生でも言われ慣れていない言葉が、あまりにも多くレイラさんから発せられるので、俺は少し気恥ずかしい気持ちになってしまう。
「ということは、70年前と同じように俺…というか俺たちの場合も、こちらの世界に来てしまうのはこの年齢の時ということでしょうか。」
普通に考えればそうなるはずなのだが、彼女からの答えは少し異なっていた。
「そうですね…間違ってはいませんが、当時とは状況が異なる点がありますね。まあそれについては、ご自身で見つけていただければ…というのが我々の考えです。」
そう話すレイラさんの様子からすると、あまり話し過ぎると守秘事項に抵触してしまう…ということなのだろう。
俺はここは掘り下げずに、話の先を聞くことを優先した。
「さて、この世界と貴方の住む世界が繋がった理由はお伝えした通りです。ここからは、この世界そのものの成り立ち方、そしてこの世界における貴方の"立場"について説明することにしましょう。」
ふむ…そう言ってくるということは、タダで元の世界に帰れるというわけではない、ということか。
まあ、こんな話を聞かされてはジタバタしても仕方がない。
そもそも帰りたくとも、その方法が見当もつかないのだ。
俺は『お願いします。』と合図をし、彼女の言葉を待った。