第4話(1章) … 講習1
「たまーに居るのよね、貴方みたいに"波動が合い過ぎる人"が。」
ちょっと待ってくれ、話が見えないにも程がある。
そもそも貴女は誰ですか。
まあ、俺を呼んでいた"声"の持ち主と同一人物だろうということは分かるが。
「とりあえず、貴女がこの状況を説明してくれる人ですか?」
目の前にいる女性は、俺の身も蓋もない問い掛けにも同様した様子はない。
目を伏せがちにしつつ、口元には笑みを湛えている。
むしろ、吹き出すのを堪えているようにも見える。
しかし、すぐに表情を整え、こちらを見据えてくる。
「ええ、そうです。でも、まずは自己紹介といきましょう。私はレイラ・ラグゼット。貴方の担当官です。」
少し明るめだが黒髪、少し長めの髪は後ろで結ばれている。
先程の立ち姿からすると身長は160cm前後だろうか。
どこか猫っぽい印象を受ける顔立ちは、男性受けしそうな気がする。
『年の頃は俺と変わらない?いや、少し上か?』
そんなファーストインプレッションを頭に廻らせていると…
「歳は40です。」
「へぇいあっ?!」
やべぇ、変な声漏れた。
流石に驚いた。
「冗談ですよ。」
「なっ…!!」
やられた…。
完全に遊ばれていることにやっと気付いた。
『真顔でジョーク飛ばせるタイプの方ですかそうですか。』
…まあいい、きっとこんな状況に陥る人間は他にもいるのだろう。
緊張感と非現実感の解消、ってとこなのだろう。
『さっき"たまに居る"とも言ってたしな。』
俺は一度、大きめの呼吸をした後で、改めて話を切り出す。
「貴女は俺を知っている、という認識でいいんですか?」
「そうですね。その認識で問題ありません。」
レイラさんはそのまま語り続ける。
「本来であればこの役割は私たちの役目では無いのですが、貴方は特殊なケースに当たります。」
「役割?」
俺が何気なく発した一言にもレイラさんは応えてくれる。
「貴方は本当なら今日、何かする予定ではありませんでしたか?」
今日?というか、俺が眠ってからどれくらいの時間が経っているのか分からない。
意外と眠ってすぐかも知れないし、何日も昏睡している間に不思議な世界に来てしまったのかも知れない。
しかし、レイラさんのあの物言いからすれば…まあ、普通に翌日ということなんだろう。
仮に普通に翌日になっているのだとすれば…。
予定…なるほど、それが今この状況に関係があるということなんだろうか。
「19歳講習、ですか。」
「ええ。ですのでまずは本来受講するはずだった19歳講習の内容をお伝えしましょう。」
ある意味、これはもう核心だ。
19歳講習が、この不思議な現象とリンクしたイベントだと言っているようなものなのだから。
そして、19歳講習は"国が実施している"という事実。
それも、日本に限らず、だ。
『やれやれ、RPGでスタート直後にボス部屋に放り込まれたような話じゃなけりゃいいんだが…。』
流石にそれはないだろうとは思いつつ、こんな想像を廻らせてしまった自分に苦笑した後。
「分かりました。ではお願いします、レイラさん。」
そう伝えると、彼女は笑顔で頷いた。
「では始めますね。」