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第21話(1章) … 先輩8

「そう言えば、レイラさんと話していて思ったんだけど…」

 

俺がそう切り出すと、リーシェと蘭が『何を?』という顔でこちらに目を向ける。

 

「ずっと『あっち側』とか『こっち側』とか、そういう感じで話をしてたんだよ。何か分かりづらくてさ。」

 

「あー、わかるわー。私も最初、使い分けが面倒くさいなーって思ってたことがあったわ。」

 

そう言って蘭は笑う。

 

するとリーシェが

 

「私もそうしているけれど、多くの転移者が私たちが元々いた世界を"壱世界"、こちら側を"弐世界"って呼んで使い分けているわね。」

 

「なるほど、壱世界と弐世界ね。そのほうが区別しやすいな。」

 

そんな感想とともに頭を過った『それって参世界とか四世界とかもあるっていうフラグじゃないよな…』というのは飲み込んだ。

 

あとは…ああ、そうそう。

 

「あっち…じゃなくて、壱世界と弐世界を行き来して生活するわけだろう?カレンダー?というか暦というか…いや、そもそも時計とかって必要じゃないか?」

 

俺がそう問い掛けると、今度は蘭が答える。

 

「時計もカレンダーもあるわよ。この部屋には無いみたいだけど…多分、まだ開けてない箱には入ってるはずよ?」

 

そう言われて、とりあえず箱を片っ端から開けてみると…あった。

 

カレンダーは壱世界のものとそんなに作りは変わらない。

 

表記の仕方とかが若干違ってはいるけれど。

 

小型の所謂、デスクトップ用のカレンダーだ。

 

時計もさほど大きくないが、ある。

 

こちらはちょっと不思議な感じがする。

 

見た目というか、時計として使用する部分の造形は壱世界のものとあまり違いがないが…

 

「この時計、どうやって動かすんだ?」

 

そう、この時計には電池(そもそも電池という存在は無いかも知れないが)を入れる場所もない、ましてネジを巻くような部位もない。

 

時計上部にボタンのようなものがあるが、これだけでどうこうできるようなものではないように見えるが…。

 

どう動かすのか時計とにらめっこをしていると、

 

「そのボタンで合ってるわよ。押せば分かるわ。」

 

リーシェに言われるまま、ボタンに被せてあるカバーを外し、押してみる。

 

「うおっ!?」

 

驚いておかしな声が出てしまったが、時計が凄い勢いで逆回転を始め、ある時間でピタリと止まった。

 

時間は9時24分を示している。

 

「なあ、これってどういう理屈で動いてるんだ?」

 

「詳しくは知らないけど、弐世界の時計は国ごとに主幹となる時計があって、その時計と連動するような魔術がかけられているんだって。さっき押したボタンで時計にかけられた魔術が発動して動き出したというわけ。」

 

蘭の説明を聞いて納得した。

 

「ほんと、弐世界じゃ魔法や魔術は生活に密着してるんだなぁ。」

 

主幹の時計と連動ってことは、主幹の時計が正しく時を刻む限り、時間が狂うこともないのか。

 

この辺は構造の違いはあれど、電波時計と同じイメージでいいんだろうな。

 

いやはや、魔術って凄いな。

 

いや、こんな魔術と同じような効果をもたらしている壱世界の技術を褒めるべきかな?

 

俺はそんな感想を持った。

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