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第14話(1章) … 先輩1

マリーを抱き抱えたまま、レイラさんの案内に続いて建物の中へ入る。


エントランス奥にある中央階段を昇り2階へ。


説明を聞くに、1階はエントランスを挟んで右側が丸々レイラさんの部屋。


左側には2部屋あるそうだが、ここは誰も住んでいない。


2階には5部屋あって、廊下を挟んで2対3で部屋が割り振られている。


俺はその内の1室に通される。


「ここが久保さんに住んでいただく部屋ですよ。」


俺は抱えていたマリーを床に置いて、中に入る。


そう言えば、目が覚めた時の建物でもそうだったが、この世界も向こう側同様"部屋の中では靴を脱ぐ習慣がある世界"なんだなと思った。


「最低限ですが、生活に必要なものは揃えてあるかと思います。」


テーブルやソファー、棚やクローゼットなんかもありそうだ。


このダイニングキッチンと呼ばれそうな部屋の他にもう一部屋ある。


そこにはベッドも置かれている。


部屋にはいくつか箱も置いてある。


「箱の中は小物類ですよ。」


そう言われたので中を確認すべく、箱の一つを持ち上げようとすると…


「重っ…。」


いや、実際に持ち上げられない程重たいという意味ではなく、箱の見た目から推測される重量より重たかったため、思わず『重い』という感想が出てしまったという類いのものだ。


中を確認すると、向こう側の世界では見たことがないようなものもいくつも入っている。


この辺は都度都度聞いた方が良さそうだな。


そんな中、キッチンにある物を見つけ、少し驚いた。


「あれは冷蔵庫じゃないんですか?」


そう、冷蔵庫だ。


灯り一つを見ても分かるが、この世界は"電気"というものが無いのだと思う。


だから、所謂"家電"というものがあることに驚いたわけだ。


そもそも、最初に寝かされていた部屋には家電らしきものは見当たらなかったわけだし。


「あれも、灯りと似たような原理なんですよ。」


なるほど。


ということは、冷える、冷やすための魔法と、冷え続ける魔術の組み合わせというわけか。


本当に不思議な世界だ。


「あらー?何やら騒がしいと思ったら…。その子が新入りの子ですかー?まだあと何日か先だった気がしますけど…。」


「ああ、そのはずだったんですけど"例外"が起きてしまったみたいで…。」


部屋の外から覗きながらこちらに話し掛けてくる女性の問いに答えるレイラさん。


この様子からして、きっと"他に2人いる住人の方"の内の一人なのだろう。


「僕は久保 由輝と言います。今日からこちらでも暮らすことになりました。宜しくお願いします。」


「ユーキね。アタシはリーシェ・フランドル。リーシェでいいわよ。宜しくね。」


金髪碧眼、長い髪をサイドテールにしている姿は170センチはありそうな長身とマッチしてよく似合っている。


「あ、そうそう。リーシェ、今日は時間あるでしょ?後で久保さんに街を案内してあげて?"例外"のせいで準備が足りなかったものもあるかも知れないし、そのついでに。」


「はいはーい、分かりましたよー。」


そう言うと、リーシェは『じゃあユーキ、また後でね。』と言って自室に戻っていった。


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