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第13話(1章) … 新居とペット

「とりあえず中に入りましょうか。」


レイラさんに促されながら歩を進める。


ここは集合住宅だか、周囲は胸の高さくらいの壁に囲まれている。


その壁に付けられた門を開け、中に入る。


そのまま進んでエントランスに入った瞬間…


突然、何かがレイラさんに飛びかかった!


体長は1メートル無いくらいか?


青緑っぽい色の体毛を全身に生える。


申し訳程度に付いた手足を駆使し、毬が弾むようにぽんぽんと飛び上がる。


これは明らかに"向こう側"には存在しない生き物だ。


所謂、モンスター…魔物というやつか?!


いや、そんなことを考えてる場合じゃない。


助けなきゃ!


…と思ったのだが。


「ただいまー、マリーちゃん!」


レイラさんはそう言って、そのモンスターっぽいものを抱き抱えた。


えっと…これは…。


「もしかしなくても、この生き物はペット…ですかね?」


「はい!この子はマリーちゃんと言って、私たちと一緒に暮らしています。」


はー、つくづく向こう側の常識が通用しない世界だ。


しかし…


「レイラさん、この"マリーちゃん"はモンスターじゃないんですか?」


レイラさんは『そうですよ?』と当たり前のように答える。


「モンスターって、人を襲ったりとか、そういうものなのかと思いまして…。」


俺が呆気に取られてそんな感想を述べると、


「久保さんの世界でも、獣は癒しの存在にも、襲いかかる猛獣にもなるんじゃないんですか?」


言われてみればその通りだ。


この世界のモンスターだって、全てが人と敵対するわけではないのだろう。


見た目や主観だけで判断してしまいがちなのは人間の…特に日本人の悪い癖だ。


人間と動物という、完全に別の生き物ならまだしも、同じ人間同士なのに姿形が美形だとか不細工だとか、そんな主観でしかないことで傷つけ合ったりしてしまう…


中身を知りもせずに。


それの何と醜いことか…。


「久保さんにとっては、最初の異生物ですね!」


きっとレイラさんは、俺が自ら発した言葉で表情を曇らせたことに気付いたのだろう。


抱き抱えた"マリーちゃん"を俺の目の前に差し出してそう伝えてくる。


よくよく見てみれば、この風体は何処か見覚えがある。


いや、見覚えがあるは語弊がある。


似たものを見たことがある気がする。


何だったろうか。


少考の後、疑問は解消した。


ああ…これはあれだ。


昔、愛知で開催したという博覧会のキャラクター…名前までは覚えていないが、それだ。


妙な既視感はそれか。


改めて俺はマリーちゃんを見つめる。


マリーちゃんは毛むくじゃらだが、つぶらな目をしていて、その目でこちらを見ている。


この目を見るだけで分かる。


敵愾心など全くない、向けられているのは好奇心のみだ。


「宜しくな、マリー。」


そう言ってレイラさんの手からマリーを受け取る。


マリーは俺の腕の中で嬉しそうに暴れていた。


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