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第12話(1章) … 講習9

…この人、今何て言った?


『私も住んでいる』って言わなかった?


そこに俺も住むの?


え?え?意味分かんない。


レイラさんと一緒に住むの?俺が?


家族でもない若い男女が一つ屋根の下で?


いやいやいや…いくら何でもそれはまずいだろ。


まださっき知り合ったところだよ?


そういうのはお互いをよく理解してからですね…


まあ、案外勢いが大事とかも聞くけどさ?


知り過ぎて友達みたいになっちゃうと、そこから発展しづらいとか?確かに聞くけどさ?


というか、そもそも異性と一緒に暮らすとか、レイラさんの親とか大丈夫なのか?


親父さん超怖い人だったらどうするよ?


レイラさんも魔法使えるみたいだし?


親父さんも使えても不思議じゃない…どころかむしろ、凄まじいのが使えてもおかしくないよな?


凄ぇ魔法とかで消し飛ばされて享年ぴったり19歳とかは回避しないと…。


「…久保さん?何か変なこと考えてませんか?」


「いやっ…全然!!ちゃんとご両親の了承も得てからですよね!!」


我ながら思い出すだけで恥ずかしいテンパり具合だ…。


「馬鹿なこと言わないでください!この集合住宅に住むという意味です!当然、私の部屋とは別です!」


そりゃそうですよねー…。


やけに俺を褒めてくれるし、レイラさんには好印象を抱いているのは確かだが、俺は何て馬鹿な妄想を…。


この辺は多感なお年頃、そういうことで勘弁して欲しい…。


「まったくもう…。」


レイラさんは赤くなって怒っている。


まあ、口調はそこまで強くはないけれど。


こほん…と軽く咳払いをしてから、改めてレイラさんは話し始める。


「まあいいです。ここには8世帯分の部屋があります。その内の一つに久保さんに住んでいただきます。」


あくまで外から見た印象だが、独り暮らし用のワンルームって雰囲気ではない。


そんなとこに住むって、結構贅沢な話なんじゃないのかな?


「ここには私と、あと2人既に居住者が居ます。」


「他にあと2人…?」


俺の問い掛けに『そうです。』と答えるレイラさん。


俺はこの答えに少しだけ考え込む。


俺とレイラさんが近所に住むってのは、何となく理解出来る。


彼女は俺の"担当官"と言った。


これは俺みたいな"よそ者"に対する…良く言えばアドバイザー、悪く言えば監視者ってとか。


当たらずとも遠からず…なはずだ。


…そんな所に、一般人(元々こちらの世界に住んでる人)が住むか?


いや、こちらの世界にとって"向こう側の住人が居ること自体が当たり前"になっているなら、然したる問題じゃないのだろうけど。


いやでも、8世帯分の部屋数があるのに俺を入れてやっと半分埋まったってこと?


こちらの世界の価値観は分からないところもあるけど、外から見た感じでは特に悪い物件という感じはなさそうだ。


この感じなら、普通なら半分空室ってのも何となくおかしな気もする。


勿論、そういうこともあり得るとは思うけど。


…いや待て?


そもそも、向こう側からこちらに飛ばされる人間ってどれくらいいるんだ?


俺と同学年の人口は、世界で約1億人強ってとこだったはず。


仮にその内の1%が飛ばされるとしても100万人以上は居る計算になるよな…。


もしそれだけの人数が飛ばされてきて、その一人一人に別の担当官が付く?


それは…


「ふぅ…。あり得ないわなぁ…。」


一つ溜息をつく俺に、レイラさんは『どうかしましたか?』といった顔で覗き込んでくる。


「あと2人も、俺と同じ境遇の人なんですね?」


「あははっ!これはこれは、少し驚きました。」


レイラさんは悪戯に笑う。


「そこに辿り着くこと自体は予想の範囲内だったんですけどね?」


うん?


辿り着いたことに驚いたわけじゃないなら何に驚くんだ?


「普通は『他に2人いる』って聞けば、"どんな人かな?"とか、"男性?女性?"とか、"年齢は?"とか、そういう質問が来てもよさそうなものじゃないですか。なのに久保さん、いきなり"答え"なんですから。」


ああ…そういうことか。


確かに彼女の言う通りかも知れないな。


「よほど好きなんですね、そういうことを考えるの。」


俺はちょっと恥ずかしくなって目を反らし、頭を掻いた。


これまでの何かに引っ掛かりを覚えつつ。


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