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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
外国のお土産はなぜか残りがち
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97.ミコを止めよう

「あ、あのー、ミコさん?

 それは一体どういう……」

「……ヌガセテホシィノ……」

「いーやいやいや!」


 おかしいぞ? さっきも言ったが

こうやって質問しなくともこう答える

状況も変だし、何よりミコの言っている

意味がまっっっっったく理解できない。


 よく見たらミコは本当に風邪を引いた

見たいに顔が火照っているし目が俺を

見ているようで見ていない。うつろだと

いったほうが通じるだろう。


 しかし何だ、この状況……

 どこかで見たことあるような……


「ワカッタ……じぶんでスル……」

「えっ」


 ミコは着替えたばかりの巫女服をほどき

はらりとそれを床に落とした。俺は何が

悲しくてコイツの素肌を二度も見なくては

ならないのだ!


 そして、そのとき俺の脳内の引き出しから

ひとつの回答が現れた。この状況はあれだ。


 どっかの2chだったりのサイトを

回っていたときにうっかり触ってしまった

イケないバナー広告だ!!


 俺はもちろん”その手”のサイトには

入ったことはある。しかし、一般男性の

考えるその手のサイトの「正しい使い方」を

してはいない。というのも俺には男女の

アレコレには興味がない、っていうのは

もうかれこれ一話から言い続けているのは

わかっているはずだ。だから俺がその

サイトに入った理由は単純に好奇心に

よるものであって、決してヤマしい思いが

あったわけではない。


 って言っても誰もそれを信じないだろう。

なぜ信じないかなんて愚問も愚問だ。

そういうものなのだよ、女性陣。


 男性陣も理解をしてくれ。意外と

大変なんだよ? 一生涯賢者モードって。


「ココォ、ワタシ」

「ねっとり言うな、ねっとりと」


 ここでの俺は想像以上に冷静であった。

というのはそれこそ俺がここで可愛らしい

部長のイヤーンな格好で欲情している

なんてことはないし、当たり前ではあるが

それとは別件として「俺には後がない」

という恐怖心に煽られているからだ。


 前に一度、というか俺の最初で最後

(にしたい)の黒歴史を作り出したのが

このミコの裸云々が理由なんだ。それを

もう一度やったとしたら…… さすがに

俺の学校、社会での立場であったりが

危うくなりかねない。ただでさえミコに

証拠を握られているんだ。もう俺には

逃げ場なんてないんだよ。


 といった具合に俺は考えられるほど

頭がさえていた。今こうやって語って

いる間にもジリジリとこちらに近づいて

くる半裸の女も気にしないほどに。


 まずはミコをとめる必要があるが


 その前にっ……!!


 ガチャッ


 部室の鍵を閉めなくてはならない。

これこそ俺の前回の過ちであり、あの時

何度となくロッカーの中で悔いたことの

一つだ。


 この状況は明らかに、いや詳しく見れば

俺には非なんてものは……多分ない。うん、

多分。それはいいとして、この状況を何かの

間違いで他人に見られたら、それこそ俺の

高校人生の終わりを示唆している。前は

ミコの寛容な性格のおかげで大事に至らず

済んだが、次はない。特に俺の場合は

この状況を弁解できるだけの力を持った

友達が誰一人としていないのだ。


「いいえぇ? あの人がまさかそんな

 ことをするとは思(ry」


 そんなやさしい言葉を投げかける人が

俺の中にはいない。義堂や生徒会長は俺を

擁護はしてくれるだろうが、この状況を

真っ先に見る人物が擁護側の人間だなんて

思っていない。だからこそ俺はこの部室を

完全に外部から遮断しなくてはならぬ。


 今は耐えるしかない。


「ミコ! ちょっとぉ! どうしたんだ」

「ワタシ、ォカシィノカナァ……」

「どこぞの同人漫画みたいなセリフを

 言うんじゃねぇ!!」


 さっきから俺にビットリ体を俺に

くっつけてくる。ほんのわずかしかない

胸もここまで付けられるとふくらみを

感じなくもない。


 が、だとしてもちいせぇなコイツ。

 これだけしてもこれだけかぁ……


 この状況はさすがに他言はできない。

だが、この状況をなんとかできる人は

確かにいる。もしかしたら俺のミスで

ミコがこうなったのであればアイツなら

何とかする方法を知っているはず。


 アイツとはアイツだ。

この薬の持ち主”英嶺 麻綾”のことだ。


「っていうかお前、離せ!!

 どんだけくっついてんだよ!!」

「ヤァー」


 このやろう……こっちは汗だくだ

っつってんのに、そんなに引っ付くな!

うっとおしいわ!


 俺はミコを引きずりながら自分の携帯を

カバンから取り出す。マヤから連絡先は

聞いてあったはず。


 ピロロロロロ


 ガチャ


「もしもしぃ!?」

「もしもしー、待ってたよー」

「ちょっとあの薬をミコが飲んd……

 ……ん? 待ってた?」

「そーだよ、意外と早かったけどもうそろ

 電話なりの連絡が来るんじゃないかなーと」


 ……


「おい、マヤ。今の俺の状況ってまさか

 なんとなくわかってたりする?」


「ミコちゃんに襲われかけてる。

 もちろん殺す殺さないって意味じゃなくて

 貞操を奪う奪われるって意味ね」


 コノヤローーーーッ!!


「マヤ! こうなること知ってたのかよ!

 ってちょ待てミコ、イテテ足折れる!!」

「知ってるも何も最初から私はそうなる

 って言ってたわよ」

「え”? 何て!? ごめんちょっと、

 ちょ電話中はお前、離・れ・ろ!!」


「だーかーら、正直になる薬だって

 言ったでしょ!!」

「はぁ!?」


 ごめん、俺にはその意味が全く理解

できていない。わざわざ言い直してくれた

割に納得のいかない答えが返ってきた

のだから。


「これって正直になる薬じゃねーの?」

「あのさぁ、なーんで前回、序盤40行

 近くつかって村人の正直か嘘かの判定の

 くだりの話をしたと思っているのさ」

「は?」


「じゃあさ、人間っていう広い範囲で正直と

 嘘っていうのを定義づけてみようか」

「急に何? 哲学?」

「そうだね。あのさぁ人間の構築する精神の

 構造って知ってる」

「え、確か……」

「まぁ答えなくてもいいけど”エゴ”と”イド”

 ってものがあるんだけど」


「……あ」

「あ、気がついた?」

「いや気がついたけどこれは色々ダメだろ!

 だとしたらこれっt」


 さて、ここで全く理解できていない読者の

ために説明しなくてはなるまい。まずさっき

マヤが言った”エゴ”と”イド”という言葉を

説明する必要がある。”エゴ”というのは、

意外とよく耳にする言葉だから知っている人も

多いかもしれないが、日本語でこれは「自我」

という意味だ。「自我」というのは自分の

ことを抑制したりする役割を果たすもので、

大人になるにつれてそれは強くなっていく。

逆に”イド”というのはその逆、自分の

やりたいように仕向ける、言ってしまえば

「欲」なんて意味を持つ。


 ちなみにこれらの話は俺が偶然見つけた

哲学であったりの本に書いてあったものだ。

が、実際には作者が隣のタブでグーグルを

開いて調べている。


 話を戻そう。そのエゴとイドは人が

生まれたときに持ち合わせているもので

あり、そのときにはエゴなんてものは

存在しない。赤ん坊はイドのまま、欲望の

ままに活動するが、徐々に大人になるに

つれて「これはダメ」「あれはダメ」と

自身のイドをエゴによって食い止めるように

なる。これが哲学上の精神の基本構造だと

言ってもいいだろう。ほかにも性欲のことを

”リビドー”と呼んだりするが、これ以上

話す必要はないからカットする。


 さて本題に入ろう。正直と嘘とは人に

よって酌量が違うとは話しているはず。

だが、そのエゴとイドというのは人が

はなから持ち合わせている基本的な正直と

嘘の関係だといっても過言ではない。

つまり、正直とは「やりたいことを

やること(イド)」であって、嘘とは

「そのイドを食い止めること(エゴ)」

なのだ。


 やっと話がまとまるが、マヤからもらった

薬は”正直になる”という以前に前提として

マヤは”嘘がつけなくなる”とも言って

いた。


 つまり今のミコにはエゴがない。

 エゴがないということはイドのまま動く。

 イドしかないなら欲望・本能のまま動く。


 そして今、思春期真っ盛りのミコは

目の前の男を見て欲望のまま動いている。

その欲望の名を、


 ”リビドー”


「はーい、長い説明お疲れ様」

「ってこれ完全アブねぇ薬じゃん!!

 何やってくれてるんだ!!」

「いやー、よかったよかったちゃんと

 効いてくれて。ニュージーランドで

 テストしたときも大変だったけど」

「これのテスターも散々だな……」


「え、うちのパパだけど」

「what!?」


「ママが晩御飯にその薬を混ぜたのよ。

 それを食べたパパが夜になってもう

 ママを部屋に連れ込んでもう大変大h」

「やめて! 聞きたくない!!」


 これ以上はダメだ! あくまで健全な

異能系学園もので展開してるんだから、

ここでR15指定どころかR18指定にでも

なったらたまったもんじゃない!


「それで、ミコちゃんは?」

「もうさっきから引きずりながらお前と

 しゃべってるよ。っていうかなんで

 こんな薬を俺たちに託したんだよ!」


「面白そうだった。後悔はしてない」

「ぶっとばすぞお前」


 こんな奴がうちの学校の生徒会の主要

メンツだとは思いたくない。もちろん実力と

知識はあるのは知っている。だが、それに

見合うだけのエゴがない。


「ま、人の欲ってのはそこまで長続きしない

 ものよ。あんただって賢者モードなったこと

 あるでしょ? あれとおんなじ感じよ」

「曲がりなりにもお前女の子なんだから

 んなセリフ吐くなよ! すまんが俺はその

 賢者モードなんてものにはなったことない」


「……(゜Д゜)」

「電話でそれどうやって表現してるんだ」


「それは何? いつでもギンギンって意味……?

 あるいは、そういうことを一度もやったこと

 のないチキン野郎って意味?」

「お前、ほんとに女の子か?」


 仮にこの小説アニメ化したら、こんなセリフ

女性声優に言えたもんじゃねぇよ。後、お前は

よっぽどR18指定にしたいようだなこの小説を!


「まぁその話は追々するとして」

「するのは確定なのか」


 こっちのプライバシー、特にそういう

デリケートな部分を責めるなよ。仮にも

お前の家、個人情報扱ってんだろ!?


「とりあえずミコちゃんは欲望のままに

 活動する、言っちゃえばバーサーカーと

 化している状況よ」

「響きはかっこいいんだがなぁ……」

「だから私もそれを止める方法は知らないよ。

 でも多分だけど、欲ってのもそこまで

 長続きしないんだから


  今は耐えろ、それだけだ」

「んな無茶な!!!」


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