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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
外国のお土産はなぜか残りがち
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96.薬を飲ませよう

 正直なんて言葉は実に曖昧なものだ。


 有名なパラドックスを表すの問題に

「村の正直者と噓つき」なんてものがある。


”「この村には嘘つきしかいません」

 これを言った村人は正直者か嘘つきか”


 さきに答えを言っておくとこれには

答えというものが存在しない。仮にその

村人が正直者であるならその村人もその

村の住民であるからその村人は嘘つきに

なり、村人は嘘つきはいないと言っているが

その村人自身が嘘つきになる。


 逆にその村人が嘘つきなら、その村人も

嘘を言っていることになり、この村には

正直者しかいないことになる。しかし

これもまた最初に仮定づけた村人が嘘つきだ

ということと矛盾する。そのためこの問題で

村人は正直者でも嘘つきでも矛盾が生じる

ことからこの問題はパラドックス(矛盾)を

はらんだ問題となる。


 だが、こんな問題があるという豆知識を俺が

話したかったのではなく、唯一回答ができる

方法があるということだ。それは至極単純

であり、人によっては外法だなんて

思うかもしれない。


 認識によって違うと思えばいい。


 どれ程までが嘘でどれ程までが正直の

領域を人に任せればよいのだ。つまり、この

問題で回答するとしたら、


「A:村人の感性によって異なるため

 正直と嘘の境界があいまいである」


 というしかあるまい。


「正直になる薬?」

「うん、具体的に効能を言うと


 ”飲んだら嘘がつけなくなる”ってこと

 まぁ、つまりは正直になる薬ってわけ」

「それでそれを俺に実験がてら飲ませたいと」

「実験とは失敬な。単純に興味本位でこれを

 渡しているだけよ」

「やっぱり実験じゃねーか」


 興味がわいたから調べるのが実験だろ?

なら完全にそれに当てはまってるだろうが。


「いやいやいやココに飲んでほしいって私が

 言うわけないでしょ。もしはなからその気なら

 ニュージーランドの下りは話してないわよ」

「え、俺へのプレゼントじゃないのか」

「これをよくプレゼントと認めれるわね……」


 俺だってプレゼントと認めたくない。だが

鳩サブレーからでてきたんだからプレゼントだ

というイメージがぬぐえないのだよ。


「まぁ、予想はついているかもしれないけど

 これは完全に拷問とかの目的のために

 作られたものなの。だから今更だけど

 これを私が持っていたとかそれ以前にその

 薬の存在自体を口外しないでね。代わりに

 そのブツをあげるって取引よ」

「いらねぇ……」


 誰を拷問するんだよ。その拷問の話を

聞く限りほしいなんて思うやつなんて

いるわけないだろ。それこそ悪魔の所業だ。

悪魔がそう認めるんだから間違いない。


「だーかーら! そんな大真面目に危ない

 ものをあげるわけないでしょ! だから

 これはあまりその力が強くないもので

 逆に言えばそういう変わった薬を扱っている

 珍しい製薬会社なの。だから安心して使って」

「だからつかわねぇよ!」

「最後まで話を聞いてから物を言ってほしいわ。

 ココは基本的にゲスな考えを持っていると

 思っているの」

「ドストレートな悪口だな」

「で、ちょっと考えてほしいんだけど……


  この部活の部長に”それ”

 使ってみたくない?」

「え」

「だって考えてみてよ。ミコちゃんは私とは

 けっこう仲良くしているけど、こういう人に

 こそ裏があるってものよ」


 ……いやまぁ、俺がミコと関わりだしたのは

ミコのついた大嘘のおかげ、いや大嘘のせいで

あるのは事実だ。詳しくは俺たちの出会いの話を

読めばわかるだろう。それにミコがどうこう

以前に俺には「人」という生き物は人当たりの

よさそうなヤツほど偽りが多いという結論が

出ているのも確かだ。これじゃ本当にゲスな

考えの持ち主と肯定しているみたいだな。


 だが残念ながら俺は悪魔なのだ。半分が

人の成分を含んでいたとしても俺は悪魔だ。

そういうゲスで外道な考えは持っている。


「ね? 心当たりあるでしょ? だからココには

 ミコちゃんにそれを飲ませてほしいって

 いうことなの。まぁ義堂にも飲ませても

 別にいいけど……」

「だったらミコに飲ませるわ」


 義堂には裏も表もないイメージがあるし、

正直になったところで何が変わるとも到底

思えない。


「それにこれどうみてもヨーグ〇ットだし、

 薬じゃないと言えば簡単に飲んでくれる気が

 するしね」

「それで、俺にミコの正直なところを覗く

 ために動いてほしいと?」

「お、やる気出た!?」


 ……


「いいや、面倒だからいいかな(チラッ」


「ふーん、まぁいいや。どーせそれここに

 置いてくるつもりだったし。煮るなり焼くなり

 好きにしてもいいよ別に。それじゃ私は

 生徒会室に行かないと、加賀音ちゃんが

 怒り出しかねないからね。んじゃーねー」

「……」


 結局例の薬を置いて行ってしまった。

机の上にはそのもらった薬がポツンと……

……あれ!? 鳩サブレーは!? あいつ

鳩サブレーだけ持っていきやがった!


「はぁ」


 またひとつため息を出した。こんなに

ため息ばかりついていたら人生いいこと

ないぞ俺。


 しかしこの薬、本当にまじまじと見ても

やはりヨーグ〇ットにしか見えない。6個入りで

錠剤みたいなパッケージに入っている。親指

ぐらいの大きさの白い粒だし、俺が何も

言わなくてもミコなら「お、うまそう」なんて

言って食っちまいそうだな。


 ーーしばらくしてーー


「あけおめー!! ことよろー!!」

「はい、おめでと」

「うわっ、テンション低っ」


 ミコ、「異能部」にログイン。


「なんかあったの? そんなにテンション

 がた落ちしているけど?」

「こんな休み明けに学校あれば誰だって

 テンションは低いものだろ?」

「私の久しぶりの登場なんだから、

 ほら! 喜んで!!」

「そんな自己主張の高いラノベヒロインが

 いるかぁ!」


 前にミコがメインで動いていたのは今から

20話以上前のテスト編だったから本当に

ミコのこんな登場の仕方はもうずいぶんと

見ていなかったな。作者もミコってどんな

キャラだったっけ? って一瞬悩んだ

ぐらい久しぶりの登場なのだ。


「巫女なんだからもっとおしとやかに

 ふるまえたりしないの? 大晦日のとき

 みたいにさ」

「あ、やっぱココ来てたんだ。いやあれは完全に

 仕事モードなだけで、今の私こそホンモノの

 御前 小恋としての姿なんだから。ほら

 今話題の、オンラインカードゲームでも

 「ボッコボコにしますよー!!」とか言って

 土食べて強くなる巫女だっているでしょ」

「そこから例えるな」


 怒られちまえ。つーか他にも枯れた世界に

青き救いをささげる巫女だっているだろ。


 ちなみに作者はAA帯になりました。

(作者談)


 閑話休題。話がそれすぎだ。


「それで何でお湯が沸いているの?

 ココもお茶飲んでた……ようだけど

 なんで湯のみが二つ???」

「さっきまで新年の挨拶だって言って

 マヤが来てたんだ」

「あー、それでか」


 薬のことには触れない。だってぇー??

別に俺そんなミコに飲ませたいなーなんて

思ってもないしー!! いや、ぜんぜん!

マジで思ってないしー???


「それで、これ何?」


 よっ! 待ってましたぁ!!

 

 おっと失礼。心の声が出てしまった。


「? どうしたのココ? そんなに

 ニヤニヤして」

「ニヤニヤしてるのは……あれだ。マヤの

 ツイッタを思い出したんだ」

「あれって何? 元ネタとかあるの?」

「オフゼロって調べたら出る」

「ビールかっ!」


 確かにビールの広告も出てくるが、俺の

言いたい方もちゃんと出てくる。やっぱり

グーグル先生はそこらへんは頭がいいし、

無駄に無駄な知識も持っているようっすね。


「じゃなくて、この……お菓子? はココの

 持ってきたものなの?」

「いや、それは……


  ……ハイ〇モンの新フレーバー」

「え、ハイ〇モンってレモン味以外に

 出し様があるの……?」


 それこそただのヨーグ〇ットだろ。


「マヤが旅行先で見つけたらしいよ。

 ただ、ここじゃ売ってないし珍しいから

 って言って買ってきたんだってよ」

「へー」


 これくらいなら話が飛びすぎない程度に

嘘はつけているだろう。ま、俺はこれから

ミコを正直にさせるのだがな。


 あーっと! これは違うぞ!? ただ俺は

ミコが食べたいかなーなんて思ってたら

困るから、俺がこうやって誘導させてるだけ

であって、決して食べろだなんて強要なんて

するつもりないからねー!???


「つまりこれは……お土産って認識でいいの?」

「んー、いいんじゃないか? 俺はさっき

 似たの食べたからそれあげるよ」

「それじゃ遠慮なくー。あ、ココお茶淹れて

 くれない?」

「お、はいはい」

「……? いつもなら渋るのに何故……?」


 あからさますぎたか?


「まいいや、いっただきー!」


 ほっ、気にしていなくてよかった。

こういうことをやるのは少しの疑惑すらも

持たせないことが大事だ。……そう思えば

俺は意外とこの役職向いてないかもな……


 俺はお茶を淹れながら横目でヨーグ〇ットの

形の薬を食べる様子を覗く。多分あのタイプの

薬はかまずに飲むのがベストなのだろうが、

マヤからそんな指摘は受けていないから別に

噛んでもかまなくても大丈夫なのだろう。

それにあのサイズのものを一飲みするのは

若干、勇気がいる。


「……ムグムグ……ん? なんだろこの味……」

「俺もよくわからないんだけど、どうした?

 嫌いな味だった……か……?」

「……」

「おーい、ミコさーん?」

「……」


 反応がない。ただの屍のようだ。


 と言いたいけど多分これこそ薬の効能

なのだろう。冷静沈着に分析しているが

現場の状況はかなり変ではある。一人が

謎のお菓子を食べて放心状態になっているのに

「ほほう」とうなずく部員が一人というかなり

サイコパスなことになっているのだ。

が、あいにくこの部屋には俺とミコしか

いないし、義堂ももっと後で来るとも連絡が

入っている。


 ミコの様子はというと、放心状態これに限る。

風邪を引いたみたいに空を仰いだままボヘーっと

したまま動かない。


 ……これ本当に大丈夫か?


 もしかしたらマヤが安心だと言っているだけで

本当は危ないものかもしれない。が、あのマヤが

同級生であり仲のいい友達をけしかけるなんて

事はしないだろうと踏んではいたが……これは、

分からなくなる光景だなぁ。


「もしもーし」

「……」


 やっぱり反応がない。さっきよりも感情が

戻ってきてはいるがこっちをちらっと見る

ぐらいだな。うわぁ、やだなぁ……ほんとに

俺がサイコ野郎みたいな感じじゃん。


 でも一応、薬は効いているならば

今のミコは正直になっている。ここは効能に

乗じてひとつぐらい質問してもいいかも

しれない。


 といってもいきなり俺が真偽を判定

できない質問をしても、本当にこれが

正直になっているかなんてわからない。

一旦、俺でもわかる質問をしたほうが

いいかもな。


「俺の名前は?」


 どうも不思議な対応になってしまったが

こういう質問の仕方は誰でもやる。

嘘発見器をつけた人への質問方法だと言えば

わかりやすいか。


「……」

「……??」


 あ、あれ? 反応すらないのはちょっと

予想外だったな。俺の予想なら「ココ」

なんて具合にボソッと言ってくるものだと

思っていたのだが……。こういうのはやはり

”YES OR NO形式”じゃないと

答えないというのが相場なのか?

仕方ない、もっと答えやすい質問をするか。


「えーっと……自分に姉と妹がいるか?」


 もしかしたら三好さんと愛ちゃんが本当は

血がつながってなんかいないなんて

昼ドラ的展開がない限り、これには「はい」と

答えるしかないだろう。


「……」


 うーむ、答えないな……こんな黙りこくった

ミコも珍しいものもあるが、これはこれで俺も

心配になってくる。マヤ、あいつ本当にアカン

薬盛ったんじゃないだろうな……?


「……ココ」

「お、答えた」


 ココ。これは読者ならわかっているだろうが

俺のあだ名であり”俺の名前”だ。ってことは

質問の回答には若干のタイムラグがある

ってことなのか……? それにしてもちゃんと

反応があってよかったわ。じゃないと俺と

マヤは逮捕されていた。


 だが、こんなことになるのであればしっかり

マヤから薬の扱い方を聞いておけばよかったか。


「……ココォ……」

「あぁ、大丈夫k」


 ……あれ? おかしいぞ……? 俺はまた

ココと答えさせるような質問はしていない。

なのに自分の意思でそう答えたるのは

どこかおかしい……


 が、俺はここでひらめかなかったのが

一番の痛手であった。


「カラダ、ァッィョォ……

 ココぉ……ヌガシテ……」


 ……


 は???????????????

 

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