表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
ハピニュヤ!!
93/446

93.またごまかそう

 女


「女って?」

「わかんねぇのか? そこにいるだろうが」


 そう言ってスッと”プレシア”を指差した。

見えないはずの悪魔を。


 俺と”プレシア”は何かを悟ったかのように

テレパシーを送る。ちょっとした緊急事態だと

何かが警告を鳴らしたように。


(あの人間、私のことを見えているのですか。

 さっきまで毅然と対応していたので、問題が

 ない方だと思っていました)

(いや、俺もそう思ってるつもりだったよ。

 今も義堂の霊感はあがっている様子はないし

 ……って、あいつは俺の知り合いで義堂って

 いうんだ。それであいつの霊感じゃお前らを

 視認できないはずだ)


 ってあれ? そういえば”プレシア”と

”デリトー”を比べたら確か”デリトー”の

ほうが霊感が高かったはずだぞ? 義堂が仮に

”デリトー”も見えているはずなら間違いなく

”プレシア”に反応する前に先に


「そこの仮面のキザ野郎はだれだ」


 みたいな反応をしているはずだ。ならなぜ

霊感が低いはずの”プレシア”だけが義堂に

見えているんだ……


(”プレシア”、お前何か自分が見えることに

 心当たりとかないのか?)

(いえ、心当たりはありませんが一つあると

 するならば。私の能力かもしれません)

(能力?)


(はい、私の能力「威圧」は能力の都合上

 使った後は存在感が増すのですよ)

(心当たりしかないよ!)


 さっきバンバン連発したやつだろ!?

そりゃ存在感が増すわけだわ。


(時間をたてば、徐々に元の状態に戻ります

 のでご安心を)

(あーはいはいよかったよかった。ってなるか!

 もう見られたんだから何かしらのごまかしを

 しないとならないから…… ってえ?

 徐々に戻るの? ってことは段々あいつの

 目からは薄くなってきているように見えるって

 わけなのか?)

(はい)

(もっと慌てろよ!)


 どーも私幽霊でーす。って主張している

ようなものだよなそれ。それとさっきから

”デリトー”がこっちの様子を見ているが

あれは俺たちのことを心配してるとかそんなん

じゃないな。


 あいつこの状況を楽しんでやがる!

こっちは必死に頭フル回転しているというのに

何ニヤニヤこっち見てんだよ!


 ……あぁ、そうだ。気にするから

ダメなのだ。ならば俺がやることはひとつ

何もやらないことだ。


「いやぁ、俺には見当たらないが……

 その人ってのは」

「まじかよ、お”い正気か」


 正気も正気だ。俺がそれを認めなければ

別にどうってことないただの他人同士、いや

他悪魔どうしてことだ。今は”プレシア”

にはめちゃくちゃ存在感のある霊として

振舞ってもらっておいて後で色々と問題を

解決していけばいいんだ。


「さぁ、悪いけどそのー……女の人って

 いうのは俺には見当たらな……い……ぇ」

「っつーことは、この野郎は亡霊か何か

 って扱いでいいんだな。しかも神前が

 見えねぇっつーなら「異能部」としててめぇを

 ぶっとばさねぇわけには……」


「あーそうだそうだ。暗くて見えてないけど

 そこに人がいるのは知ってたんだったー!」

「あ”? やっぱいんのかよ」


 なんでこんな時に限って義堂お前は「異能部」の

誇りみたいなことを言うんだよ!


(主、この人間程度であるなら私でも何の

 問題もなく屈服させることができます。

 ですので……)

(そうなってほしくないから俺が取り押さえた

 んだよ。仮にもお前もあいつも俺の知り合い

 なんだから、そんな身内で争ってほしくないし、

 あいつはこういうことになればめちゃくちゃ

 めんどくさいんだよ)

(めんどくさいとは)

(文字通り”地の果てまで身が亡びるまで戦う”

 そんなことを平然とやってのける)

(はい、確かに面倒ですね)


 これじゃ義堂も悪魔みたいな扱いをしている

ように見えるが、残念だが寸分の狂いなく

その通り。あいつは人を超越した存在として

扱った方が今後とも扱いやすい。


(では私はこの人間とどのように対応すれば)

(そんな決まってるだろ


  俺の友達とか知り合いとしてふるまえ。

 ”プレシア”お前ならできるだろ?)

(いえ)

(へ?)

(主の友人を侮辱するわけではありませんが

 たかが人畜無勢の常識なんてものは私たちには

 一切無用の長物な故、人の”しきたり”考え”を

 考えたことがないので)

(一応、人のなれの果てよ、お前?)


 もちろん”プレシア”の言うことは正しい。

だが処世術っていうのは大事なものだし、今度から

こいつらの教育内容にそれも気見込まないと

いかないかもな……


(しかし、主との会話からある程度の常識

 なんて言うものは理解はしています)

(お、なら大丈夫かな……?)

(はい、私にお任せを)


 ”プレシア”ができる子でよかったー。

……なんだろう、このふつふつと浮き出る不安は?


「じゃあそこの女はてめぇの知り合いなのか?」

「あ、あぁ、そうそう。俺のいとこにあたる

 人でな、昨日から正月だからって言って、うちに

 来てたんだ。でも月がきれいだから外に出てた

 ってことで……」


(”プレシア”、挨拶して!)

(はい)


「******************」


 ……


「ちょーっと義堂、まってて」

「あ”?」


 俺はプレシアとこそこそと話す。

もちろんてテレパシーだからコソコソも

くそもないんだけど……


(あのさぁ、なんで母国語であいさつするの?)

(はい、挨拶は基本だと前に我が主が言っていた

 ことを思い出しまして)

(いやそーじゃなくて! 日本語でおkって

 言いたかったんだけど…… え、まさか日本語

 知らない)

(はい)

(だよねー!!!)


 前に俺たちの会話はテレパシーで、言語としての

意味合いを持たないというのは言っているはず。

この小説ではそれを読者にわかる形で文章で

表しているだけであり、俺たちが日本語で

話しているわけではない。そりゃそうだよな!

実際に話せるわけないよなー!


(これじゃ俺のいとこが悪魔の血族だってこと

 露呈しているだけじゃんか!)

(我が主はそのとおり悪魔の血族ですから

 問題はないかと)

(あーそうだね。確かにあってるけど!

 それはお前らにとってであってあいつから

 俺は人間として扱われてるんだよ!? 純粋な

 きれいさっぱりな人間だからね)


 あるいは悪魔の言葉と認識されなくとも、どこか

謎の民族が俺のいとこって思われてるわ。あ、それの

ほうが確率高いな。でもできれば悪魔関係の中二君

だと思われた方がまだましだよ。


(ですが我が主が人間と話しているのは見たり

 聞いたりしているのである程度であるなら

 話すことはできるかと……)

(お、なら大丈夫かな……?)

(はい、私にお任せを)


 ”プレシア”ができる子でよかったー。

……なんだろう、このふつふつと浮き出る不安は?


「おう、よろしくな」

「コンニチハ」


 あ、よかった。ちゃんと言ってくれたな。

でも残念ながら俺のいとこは外国人だという

設定は完全に払拭させることはできなそうだ。

仕方がない”俺のいとこが外国人な件”って

設定を突き通すしかない。


「こういう正月とかの長い休みにならないと

 日本に来ることができないからな」

「あ”? どこに住んでるんだ?」


「マカイ」

「魔界?」


「あ”ー違う違う! マカイじゃなくて

 マ↑カイな!? ほらマカオとかあるだろ?

 それと同じイントネーションで最初のほうに

 アクセントがつくんだよねー!! アジアの

 北と南の間ぐらいにそんな国があるんだー!」

「ふーん」


 俺は再び”プレシア”を呼び出す。


(なんで本当のこと言っちゃうの??)

(魔界から下界に来る人間もいるでしょう)

(いねーよ)


 聞いたことすらねぇよ。いるとしたら

それは人間じゃなくて魔人のカテゴリだよ。


(それと何かあるまで勝手に話さないでくれ。

 色々とめんどくさいことになるから。後は

 何か聞かれたら答えるぐらいでいい)

(はい、わかりました)


 結局俺がここまでケアせんといかんのか。

当たり前っちゃ当たり前ではあるが……


「というか義堂はなんでここにいるんだよ?

 俺は散歩ってだけだが、義堂はそんな夜に

 目が冴えるタイプの人じゃないだろ?」

「寒くて起きたに決まってんだろ」

「あぁ、なるほどな」


 確かに今日はかなり冷え込んだ。特に今は

太陽が出ていなくより寒さが身に染みて感じ

取れる。義堂は廃工場でホームレス暮らしを

してるから今日はかなり住環境がよくないの

であろう。


「だから俺も散歩だよ。どーせやることもねぇし

 これからコンビニにでも行こうかって思ってた

 ぐれぇだ」

「こんびに?」

「あ”? そんマ↑カイって国じゃコンビニも

 ねぇのか?」

「ナイ」

「あぁ、そうなのか」


 意外と会話が弾んでいる。だが俺のいとこが

謎の国(超絶ド田舎)の出身みたいな設定が

どんどんと増えているのがめちゃくちゃ困る。


「それでその……てめぇなんつー名前だ?」

「ぷれしあ」

「”ぷれしあ”? ずいぶんと珍しい名前

 じゃねーか」

「コノカタガツケマシタ」

「あ”ぁ? 神前がか!!?」

「ちょーっと待ってー」


 ”プレシア”を再び(略)


(ちょっとぉ? 俺が名付け親って変だろ。

 これじゃ俺のほうが年上ってことになるから

 すっげぇややこしいことになるから!)

(しかし私の名は我が主がつけた由緒ある

 ものなのでまやかしはつけません)

(あのね…… ふつーはね? 自分の親だったりが

 名前を付けるものだからな? だから俺が

 つけたわけがないわけよ?)

(やはり親は我が主なのでよいのでは)

(ダメだろ、どう考えても! とりあえず

 俺じゃないことを言ってほしい)

(はい、わかりました)

(……大丈夫かな……?)

(はい、私にお任せを)


 ”プレシア”ができる子でよかったー。

……なんだろう、この(略)


「オヤガツケタ」

「おぉ、だよな。冗談だろって思ってたが

 そりゃ当たり前か」

「ジョウダンデス」


 なんか出来の悪いASIM〇見ている気分に

なってくる。これはこれで面白くはあるが。


「それでその”ぷれしあ”はここにいるっつったけど

 どっか泊まるとことかあんのか? 俺見てぇな

 家じゃねぇだろうな」

「当たり前だろ」


 下手でもホテルとかに滞在するよ、普通。


「スマワセテモラテマス」

「あぁ、神前ん家か」

「コウサキノヘヤデネテマス」

「……」


 ”プレシ(略)


(あのねぇ……)

(何か間違ったことでもありますか? 我が主の

 言う通りミコンの中というのは避けましたので

 安心してください)

(安心できねーよ! なんでそんな……いや……

 やっぱりなんでもないわ)


 悪魔には”恋愛”や”性事情”なんてものは

ないんだと俺がずっと前から物語っている。

だからここで説明しても無意味だろうな。


(まぁとりあえず俺の部屋では寝ていない。

 そう伝えてほしいのだが)

(はい、わかり(略)


「ヘヤデネテマセン」

「あ”? 廊下で寝てんのか?」

「もー、ちゃんと部屋は用意してあるだろー」

「スイマセン」


 まぁ、危うくお客さんに部屋を用意せず

廊下で夜を明かさせる鬼畜野郎になるところ

だった。危ない危ない…… それと今度から

教育の内容に”日本語”を入れることにしよう。

そう誓った。


「にしても月がきれいだよな」

「え、あぁそうだな」


 確かに月は綺麗な三日月だ。手を伸ばせば

取れそうなくらい近くにあるように見える。


(あの人間は何と?)

(月がきれいだな、だってよ)

(月ですか……確かにきれいではありますが

 満月の方が私は好きです)

(あ、いやお前らは力の強さ云々が関わるからな。

 それ抜きにしてもきれいだって思わないか?)

(はい、そう思います)

(なら綺麗ですって言ってやれば?)

(わかりました)


「マリョクノタカマリヲカンジル」

「あ”? 魔力の高まり?」

「いやぁ! 魔性の美しさって言うだろ?

 そのマ↑カイの国では確か美しいものを見た

 ときに綺麗だなって表現するときに魔力が

 増しているって言うのがしきたりなんだ!」

「ずいぶん焦ってるがどうした」


 あのさぁ、ってもう”プレシア”を呼ぶのも

疲れてきたわ。でも一応、今の発言の趣旨を

聞いておかないと今後に響く。


(あのー”プレシア”さん。今のはなぜ

 あんな言い方をしたのでしょうかー?)

(いえ、確か日本語で”月がきれいですね”と

 答えるのは”あなたのことが好きです”という

 意味合いを持つと聞いたことがあるので、

 すいませんがあの人間にそのような感情は

 もっていないのでより切実に答えるのが

 妥当であると)

(なんで無駄にそんな知識だけあるかなぁ……)


 もっとそんなことよりも日本語を覚えて

ほしかったな。それと”デリトー”がさっきから

俺たちのことを見たまま動かない。できれば

この状況を打開する手助けをしてほしかったが

……あ、そうだ!


(デリト-! デリトー!!)

(はい! なんでしょうかマスター)

(この人間の記憶から”プレシア”の記憶だけを

 抜き取ることはできるか?)

(おぉ! なるほど! 確かにそうしたら

 今までの茶番を全てなかったことになりますね。


  ですができませんねぇ)

(え、なんでだよ!?)

(単純ですよ。”あの者に触れないので”)

(はぁ? 触れない?)

(ええ、何かに邪魔をされているというか

 なんというか…… 本来ならこのような

 力程度であればちょちょいのちょいなのですが

 彼には私、いや私以上の力の加護を受けている

 ようなのですよ)

(加護……あ)


 義堂をよく見たら、やはり肌身離さずに例の

バールを持っている。うわぁ……俺が”ロズ”に

言った「霊障から守ってくれ」っていうのを

律儀に守っているのか畜生! 俺の眷属なら

顔パスしてほしいんだがなぁ……


「あ、そういや月がよく見えるとこあんだよ

 どうだ? 散歩っつーならそこにでも

 行かねぇか?」

「あ、いや俺たちは」

「ヨロコンデ」

「うし決まりだな」

「えええええ!!!!!!!!!!!???」


 まだ茶番は続くんだな。めんどくせぇ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ