92.教育してやろう
「すごく物騒なタイトルですがこれは」
「これしかないだろ」
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見たいなタイトルだな…… やっぱり
変えたほうがいいのか? だがタイトル
なんてのは別に気にしても仕方がの無い
ものだ。このままでいいや。
「それはそうとなぜこの毛むくじゃらを
眷属にしようとお考えたのですか」
「あのー、その言い方もうそろそろやめて
ほしいんだが…… 吾輩にはちゃんと
”ノーティ”という名g」
「こういう動物の霊っていうのは俺の眷属の
中にはいなかったろ? だから一つの
選択肢の有無としていてもいいんじゃ
ないかなと思ってな」
「ねぇ、聞いてる、ねe」
「なるほど、さすがは我が主。しっかりと
お考えになっているのですね」
「やっぱり聞いてないね、うn」
霊になるかならないかは、その思いが
強いかどうかにかかっていると言ったのを
覚えているだろう。「生」に執着する強力な
思いが、それを可能としているのである。
そのため、大抵は人間が霊になりやすく
逆に”子孫を残す”ために生きているような
虫や動物の霊は少なくなりがちなのだ。
人間の亡霊が夏の肝試し番組で話題になる
のに対し、人よりも多くの死を繰り返す
動物の霊がまったくでてこないのもこれが
理由なのだといえば理解がつくだろう。
そう考えると、今ではいじられキャラと
なってしまった”ノーティ”はかなり優秀な
霊であったと言えるのだ。だがそれも動物の
中ではすごいというだけで、多くの俺の眷属の
中では別にすごいなんてことはない。だからって
いじっていいということでもないが……
「それで私は何をしたらよろしいのですか。
私が言えた事でもないのですが、この仕事は
”デリトー”のほうが適任かと」
「いや”デリトー”も今日だけは教えられる
側にまわるぞ」
「え、そうなんですか」
夜の学校であった”デリトー”のあれやこれを
説明するのは面倒だが、これは話さないと
いかないだろうな。確かに”デリトー”のほうが
”プレシア”よりも能力的に有能なのは
認める。だが、今回はそうとも行かないし
それこそしっかりと説明を加えておかないと
本人が納得いかないだろう。
俺は事大まかに”デリトー”の一件について
話した。隣で”デリトー”がうっとおしく
うなずいていたが丸無視した。
「ということで私はマスターとあろう者を
裏切ったのです。ですので本日は私ももう一度
お勉強に参加しようということなのですよ
わかりましたかマドモアセル」
「口を開くな、外道が」
「おー、やはり私の扱いは一切変わりませんね。
半年で変わっていただければよかったのですが」
「我が主、こやつの顔面の汚い仮面を剥ぎ取っても
よろしいでしょうか」
あぁ、そうだったな。いまさら思い出したが、
こいつらは仲が悪い。”デリトー”はそれを逆に
楽しがっているが”プレシア”はそれを完全に
忌み嫌っている。”プレシア”が言うには、単に
「テキトーな男が嫌い」なのだそう。今回は
忠義を尽くしている俺に歯向かったというのが
起爆剤にでもなったのだろう。なんでガキ共の
喧嘩の面倒まで俺は見なくてはならないのだ……
「なるほどわかりました。確かに私がやる
必要がありそうです」
「よし、わかってくれりゃいい」
はー、やっと話が進むぜ……
「吾輩、その教育というのがイマイチ何を
するのかわからないであるが……」
「ええ、やるのは”力の行使”です」
「”力の行使”?」
「貴様は自分が悪魔になってから自分が持つ
力を使ったことはあるだろうか」
「え? 確か吾輩が悪魔になってすぐに
ボスが力を使ってみろと」
「正しくはそれを同じ事をするだけです」
この肯定は俺の眷属になったやつら全員に
させている。もちろん、俺がやってもいいのだが
悪魔同士の会話なんてのも意外と重要なことが
あるものさ。それに最終的には俺のためでも
ある大事な大事なことだしな。
「力を行使するというのは主から力の恩恵を
授かって、それを使うということです。
そのため主は常に貴様だけでなく他の
悪魔に魔力を授けているのです」
「ほう、なるほど」
「ですが、我が主が何者かをご存知ですか」
「それは前に”自分は悪魔だー”と言っていた
ことだし悪魔なんじゃ」
「半分正解で半分はずれです。そのとおり
我が主は半分だけが「悪魔」なのです。そして
もう半分は「人間」の言うなればハイブリットな
存在といっても過言ではありません」
”プレシア”お前いつそんな言葉覚えたんだ。
「そのため悪魔として十分な魔力を持っていなく、
魔力の供給が無尽蔵にできるわけでは
ないのです。ですのでその魔力を使った力を
ただ無駄に使いまわさないためにこうやって
教育をするのです」
「ほほう、わかったぞ。ようは吾輩は力を
べらぼうに使わないようにすればよいのだな」
「いえ、少し違います」
「えぇえ??」
「主が私たち悪魔を呼ぶときというのは大抵
私たちの力を使いたいというときです。ですので
自分に与えられた魔力を極限に使って、それに
答えなくてはなりません。つまりこの教育では
「魔力を使わない」ことを教えるのではなく
「魔力をむだにしない」ことを教えるのです」
「な、なるほど……」
さすがは数少ない俺の言うこと成すこと
全部を理解している悪魔だ。俺の言いたいことを
言ってくれたな。だが、これではちょっと
説明が足りないかな。
「”ノーティ”ちょっと補足するが、本来は
こんなことしなくてもいいんだよね」
「何? ならなぜこんなことを」
「俺だって悪魔で魔力も供給した分はちゃんと
回復するさ。そりゃもちろん他の悪魔も
そうなんだろうけれど、俺の場合はその
回復量が半分しかないんだよ。だから
他の悪魔に供給するためにちょっとばかし
我慢してくれってことだ。俺がもっと
力ある悪魔だったら、別にこんなことを
しなくてもよかったんだが」
「いいえ、それでも私たちを捨てないので
あればその恩恵に尽くすのが眷属の
冥利に尽きるというものです。どうかそんな
自身に否定的な評価をつけないで下さい。
私は……」
「いいよいいよわかっている。だけどそこの
新人はそれもわかっていないんだ。だから
これくらい話させろ」
「……はい、わかりました」
「……」
”ノーティ”は何も言わない。と思ったら
口を開いた。持ち前の歯が出てくる。
「吾輩もボスに見つけられなくば
あの場にいたままであったろうな。じゃが
こん吾輩にあの場以外の居場所を作ったの
だなと思えば、ありがたくも思うぞ」
「いいや、あんなのは悪魔の所業に過ぎない。
あれは言ってしまえば”死者の冒涜”だよ。
あのままい逝けばゆっくり天国なり地獄なりの
解放が待っていたんだ。それを無理やりこの
世界につなぎとめて束縛しただけに過ぎない」
俺は助けてなんかない。ましてはありがとう
なんて言葉を吐かれる筋合いなんて一切ない。
俺は悪魔であくまなんだ。おっと漢字が逆だが
まぁいい。言いたいことはどうしようもなく
救われない救いようのない存在だということで、
それでもできることがあるし、そのできることを
意地でもやっているだけだということだ。
「では、余談は終えて始めるとしよう。
そうだな……”デリトー”」
「はい、何か所望でマドモアs」
……!!
「これが貴様にさっきやったものだ」
「”プレシア”嬢、それをやる前に一言何か
言ってくれないと……」
「言ったら身構えるだろ。身構えられたら私の
力は効きづらいし、それにその程度じゃ
ぜんぜん屈しないだろう、この頑丈仮面野郎」
「まったくおてんば過ぎますって」
さっきと同じように”プレシア”は
「威圧」を使った。この空き地でなんか
すごいおっかないことが起きている気がする。
「それでもう一度同じ事をやるが、毛玉
よく見ておけ」
今度は何に対しても「威圧」をかけずに
空撃ちを見せた。ってそれで大丈夫なら
”デリトー”に「威圧」をかけた意味は!?
……!!
「さっきと今のの違いはわかったか」
「違い…… 力がどこかに飛んでいくように
見えた気がしたが」
「それでいい。私たちはそれを”力の奔流”と
呼んでいるが、こうやって力をまとめて
使うのですよ」
ちなみに俺にはその違いはわからない。
魔力を見ることができるのは純粋な悪魔だけの
特権らしく「半人半魔」の俺はそれを直に
確認することはできない。まぁ、だから
こうやって俺がやらずに他の悪魔に
頼んでやってもらうのだが。
いったい何が見えているかというと、
さっきの”デリトー”にかけたものには
相手や自分にすべての魔力が使われるように
「威圧」をかけていたのに対し、今の
「威圧」は魔力を無駄打ちしていたらしく
魔力が体の外に漏れ出して見えるらしい。
これも”プレシア”から聞いた情報なのだが、
それを知るまではどうやって見えているのか
なんてわかっていなかったぐらいだ。
「今のように力はある程度の加減で無駄になるか
きっちりと使われるかが決まるのだ。これを
見てできそうか」
「うーむ…… できるかどうかは分からぬが……
やってみないことにはわからぬなぁ……」
「ではやってみなさい。それができれば十分で
他にも教えることはあるがひとまず終えよう」
「よ、よーし……」
”ノーティ”は身構える。そしてその体勢から
体を伸ばし大きく跳躍し、空き地から外に
出て行った。
バビュン!
「……魔力があふれていますね。まだまだ
時間はかかりますが及第点でしょう。
それでは”デリトー”貴様のほうを……」
「いやいや、本日は私はあのねずみの跳躍を
見ているだけで十分……」
二人とも急に黙った。俺のことを見ている。
なんだ? 俺の顔にイチゴジャムでもついている
のか? なんてことはないよな。これは俺の
背後に何かいるという意味のものだ。が、
一体何が……
「あ”? やっぱてめぇ神前じゃねーか」
「……義堂?」
「んだよ、俺の顔になんかついてるか? あ”?」
お久しぶりの登場、我が「異能部」の怪力部門
義堂 力也だが久しぶりというわけではない。
というのも、クリスマスのときに会っているし
せいぜい一週間とほんの少しぶり程度に過ぎない
のではあるが、その時の義堂はかなり意気消沈
している様子で、触れてもあまりいいことは
起こらなそうだなと考え放置したのだ。
ヤバイ。なんて俺は思っていない。義堂から
この悪魔たちは見ることができない。義堂の
霊感は32。前に”デリトー”と”プレシア”の
霊感も調べてあり、ぜんぜんその程度の霊感
では見ることも感じることもできないだろう。
「なんだ、義堂かよ……なんでここに?」
「別にこれって用はねぇよ、それよりも
逆におんなじことを聞きてぇよ。んで
神前てめぇがんな時間にんな場所にいんだよ」
「あぁ、散歩だよ散歩。最近は正月ってのもあって
体を動かしていないからな。それでいて
寝すぎで夜もなんか目がさえるときたから
どうせだし散歩でもとな」
「あ”? ならそこん女は何者だよ」
「あぁ、それは……
……え? 女?」




