91.ケアをしてあげよう
初詣はこれにて終了。これにて冬休みの
神前 滉樹の生活は終了。としたかったが
そういえばと思い立ち、やることにした
ことが一つ。それは正月三が日の3日目、
つまりは1月の3日のことになる。
というのも思い立った理由が完全に
生徒会長が起点なのだ。初詣のときに
生徒会長が学校の女子トイレにいたねずみに
ついて話していたのは覚えているだろう。
そして、そのねずみの後処理はすべて
俺が悪魔としての能力で一任したことも
今まで、読んできた読者であるなら承知の
上だと思う。
そしてそのねずみは今は”ハツカネズミ”
とは俺は呼ばず”ノーティ”とゲームの
ボスキャラの名前をつけて呼んでいる。
だが、実を言うとそれだけでは終わらせる
わけにもいかず、俺もそれをするのを
すっかりと忘れてしまっていた。こうやって
悪魔を増やすなんてことはやっていなく、
悪魔としてのしきたりの様なものでもなく、
正直、やってもやらなくてもいいことであるが
俺はそれをほったらかさずにやっている。
と、何の主語もなくべらべらと話しても
読者にはいったい何のことかなんて、見当は
おろか文章としても読みにくいものがある。
ここは一旦、語るのをやめて本編に移ろうか。
というわけで俺は今、誰もいない空き地に
きている。時間は夜も遅い、いや遅すぎる
3時ごろだ。どーせ明日も明後日も学校は休み、
今日くらい”夜更かし”しても問題ないさ。
俺は再び人の有無を確認する。
よし誰もいないな。ミコとの一件以来、
こういう安全確認に余念がなくなった。
「****************」
「”具現召喚:ノーティ”
”具現召喚:デリトー”」
「吾輩、お久しぶりにきたぞ!」
「……マスター、この毛だるまは一体
何者でしょうか? ネズミとはなんと
汚らしいですn」
ボグゥ
「あの、マスターもっと考えて殴って
いただきたいのですが」
「こっちのセリフだよ! 何、初対面で
罵倒してるんだよ。ほらこいつが新入りの
”ノーティ”だ」
「あぁ、悪魔を増やすとは珍しいじゃない
ですかマスター。どんな風の吹き回しですか」
「え? そんな珍しいか?」
あ、そうだった。俺は基本的に悪魔や霊を
自分のミコンに納めることは基本しない所存だ。
悪魔の価値というのはその悪魔の眷属の数が
大きくかかわってくる。俺の場合はミコンに
いる悪魔たちがそれにあたる。悪魔が多ければ
多いほどそれらに分け与える魔力も必要となるし、
それだけの悪魔がいれば状況によってさまざまな
選択を下すことができるということから、悪魔の
価値と権力には眷属の存在は欠かせない。
そのため普通、悪魔は”ノーティ”みたいな
下界にとどまりのうのうとしている霊を
見れば何も考えずに自分の眷属にさせるのが
セオリーである。が、俺はそんなことはしない。
それをやったことで何か人間社会の生活に
問題がでるなんてことでもなければ、俺が悪魔
としての力を欲していないわけでもない。
俺が悪魔になるときにそう誓った。
それ以上はないし、それ以下もない。
「マスターはなんて、倹約なんでしょう!
と思ってましたが、どうやらそういうわけでは
ないようですね」
「俺が倹約? んなわけないだろ? これでも
俺は悪魔だよ。俗物を嫌い、本能のままに欲に
忠実な悪魔だよ。そこんとこは前から変えた
つもりはないが」
「ええ、ええ、もちろんわかっておりますとも。
それでこそマスター、それでこそ神前滉樹ですよ。
私もそれは理解をしているつもりですから」
”デリトー”は俺が学校に放置した悪魔の一人で
最近、ようやくミコンに戻すことができた。あぁ
まったくこんなのがまだまだ学校にいると考えると
気がなえるってもんだ。
「それで吾輩はなぜこのような場所に……?」
「あぁ言ってなかったな。”ノーティ”お前はまだ
俺の眷属であって同胞ではないからな」
「はぁ?」
「ちょっとしたケアだよ、ケア」
そう、これが俺がやろうとしていることだ。
「俺の眷属は全員、教育者と新人みたいな関係を
持っているんだよ。まぁ、普通はこんなことは
しなくてもいいんだが、個人的にそっちのほうが
色々と都合がいいし…… つまりは人間の言葉で
いうところの”コミュニケーション”ってやつだ」
「こみゅにけーしょん??」
「そ、お前には俺の眷属になったからには俺の
力の一部を持っているんだ。それを供給するのは
もちろん俺。それが仮にテキトーに作った眷属に
無駄に吸われ続けるってのはさすがに俺も
納得がいかないからな。だからこうやって悪魔と
悪魔を関連付けて、相互に教育をする関係を
持たせようって魂胆だ。どうだ? これで
わかったか?」
「うむ、わからぬ」
「……」
ハツカネズミの自信に満ちた”わからぬ”は
なぜかぶん殴りたくなるほど腹が立つな……
「ほら、こんな毛玉はほったらかして私と
楽しい楽しい夜の茶会としましょうかマスター」
「そういうわけにはいかねぇよ。それに気づけ、
なんでここに”デリトー”お前が呼ばれたのか」
「あぁ、そうですね…… やはり、この毛玉の
教育者を決めるたm…… おぉ! マスター!
まさか私を教育者側に!?」
「いや、お前も教えられる側だ」
「上げて落とされたっ!」
俺がこんな悠長な悪魔に先生役を頼む
わけがねぇだろ。”デリトー”はまだまだ
悪魔の中では小童で、もちろんのことまだ
教えられる立場ではあるのだが、そうやって
誰かの監視役になるということは、そういう
教える立場からの卒業を意味しているし、
喜ばしいことといえばそうなる。
「ははぁ、でしたら逆です。私にこの毛玉の
教育者をやらせていただきたい! 私なら
うまく扱えると思いますし、同じく学校に
滞在していた身ですかr」
ドグゥ
「だからマスター、もっと考えて殴って
いただきたいんですが? それに今の悪魔
じゃなかったら血反吐吐いて死んでる人間も
いたとおもうレベルの力でしたし」
「もっと考えるのはお前だろ”デリトー”。
お前、学校にいたときに完っっ全に俺に
「戻りたくないでゴザルwww」
みたいなこと言って歯向かっただろ?
そんな奴にこそ俺は魔力を供給したくも
ないって思うのが道理だろ。それにお前、
学校に滞在していた身って、学校は学校でも
全然違う学校じゃねーか」
「いてて、私もそろそろ独立というのも
やってみたいんです。ほらよく言いますけど、
親から離れて、一人でやりくりしたいって思う
時期がありますから」
「なら、今からでもそうしようか?」
「若気の至りってものですから、そこはそう
しないでいただきたい。私もそんなことは
望んでませんのでね。殴られ懲りたと
いうことで」
まぁこう見えて”デリトー”は記憶操作の
力を持つ結構有力な悪魔だし、このまま俺の
眷属にしたままにしておくつもりだ。そうで
なければ俺はこのままここになんて呼ばずに
切り捨てている。
「と、いうことで今日はお前らが生徒だが……」
「マスターよ」
「どうした”ノーティ”」
「それで吾輩の教育者というのは一体誰に
なるのだろうか。その”デリトー”殿と言ったか?
貴殿がやるわけではないのであればここに
その教育者がいないこととなるのだが……」
「あぁ、それが問題なんだ」
「問題?」
その教育者を決めるのは実をいうと俺の
独断と偏見で勝手にやっているだけなのだ。
だから誰でもいいからテキトーに悪魔を呼んで
「ほらよろしく」と言っても問題は起きない。
しかし俺はミコとの勉強づくしのあの2週間で
教える立場がいかに技術面で難しいかを知って
しまったため、今まで見たいに安直に悪魔を
選ぶことができなくなってしまった。その悪魔に
ピッタリあった悪魔を選んでやる。これが俺に
できることで、それを間違えたら”デリトー”の
ように反発的になるかもしれない。
「それで私の教育者は」
「あー……そうだな、確かに”デリトー”お前も
問題あるな、そういえば」
”デリトー”の教育者は実は”ロズ”なのだ。
そして今”ロズ”は義堂の持っている武器「異能」に
取り憑いたままになっている。そのため今
ここには”デリトー”を教育する悪魔がいない。
「はぁ……仕方ないか、お前も”ノーティ”と同じ
やつから教えてもらえ。と言っても前に聞いた
話をまた聞くだけな気がするけどな」
だが、そうでもしないと”デリトー”のことが
心配で仕方がない。俺はあの学校に行っていた
から学校にいる悪魔たちは力を保つことができた
のに対して”デリトー”は完全に俺とは離れた場所で
行動していたわけであり、さすがにそれについて
二度としてやるなと言っておかなくてはな。
まぁ、そんなことはどうでもよくて本当は
学校での出来事を知りたいだけなのだ。まぁ、
”ノーティ”はまだしも”デリトー”からは
特に聞いておきたいところだ。”ノーティ”は
最近悪魔になりたてだし、記憶がないのは仕方が
ないが”デリトー”は完全に俺の配下にいてから
ずいぶんと経っているし、記憶もある程度は
残っているだろう。
「と、そんなことより……”ノーティ”、
どんなやつがいい。ほらあるだろ、イケない
保健の美人教師だったり、筋肉マッチョな
ガチムチ体育教師だとか」
「もっとましな選択肢はないの?」
ちなみにそんな先生はいない。現実にも
俺のミコンの中にもだ。
「ならどんな教え方をされたいかって
聞かれたらどう答える?」
「おお、そうじゃな、だったら優しい感じが
いいな。物腰柔らかd」
「よし、決めた」
「吾輩のリクエスト聞いてた!?」
再びミコンに手をかざす。また同じように
回りを確認したがやはり深夜というべきか、
人っ子一人としていない。
「*********************」
「”具現召喚:プレシア”」
”プレシア(英語:presure)”
ってあれ? 前に説明はやったか。
ならここでまたする必要は微塵もないな。
「お呼びですか」
「ああ……ってあのさ、もうちょっと柔らかく
接していいんだぞ? なんでいっつもそんな
かしこまってるんだよ。前にも言っただろ?」
「いえ我が主は私の恩師であるゆえそのような
軽率な態度をとることはできませんゆえ」
説明しないといっていたが軽く説明を入れて
おくとしたら、この悪魔の能力についてではなく
容姿や性格だろうな。容姿は一言で言うなれば、
「清楚」
これこそ生徒会長や副会長を想像する
容姿であり、俺にずいぶんと忠義を尽くして
くれている。なぜかは俺にもわかっていないが
多分、こういう悪魔と眷属の上下関係を異常に
重んじているからってだけだろう。俺はもっと
眷属と仲良くなりたいなぁと思い、そんな上下
関係とかあまり気にせずに接してもよいと
言ってある。が、”プレシア”だけはこの
態度を変えることはなかった。
「はい、こいつは”プレシア”。お前の教師役に
まわるであろう悪魔だ。ちなみに”デリトー”の
先輩にもあたるから、ちゃんと敬意を持って
接しろよ」
「ほほう、この者が…… 吾輩”デリトー”殿も
そうではあるが、こうやって別の悪魔と
直々に会うのは初めてだが……」
「ほう。我が主よ、この毛むくじゃらが私が
教えなくてはならぬ新入りということか」
「なんでぇ! なんでみんな吾輩の毛をそんな
推してくるの!?」
そんなこんなで時間も時間だ。とっとと
先に進まなくてはならないか。
「それはそうとこの毛むくじゃらは……
”あのとき”のですか?」
「あぁ、”あのとき”のだ」
「”あのとき”?」
どうやら”ノーティ”だけこの意味を理解
していないようだな。まぁ、理解させる方法は
簡単だし、そう”プレシア”に指示を出せば
よいのだが……俺がそう指示する前にやって
くれそうだな。
”プレシア”が息をひとつ吸う。そうすると
あたりの風が轟き、何かに脅えるようにあたりに
圧がかかる。
………!!!!!!!!!
「フゥ……どうでしょう、思い出しましたか?」
「あわわわわわわわわ、お主、あのときの
吾輩を脅した」
「ええ、そうです。私は「威圧」の
プレシア。前に学校で我が主に取り憑き
貴様を脅した者です」




