90.おみくじをひこう
「ネズミの説明や参考文献で、かさまし
したなんて思われてないかなぁ」
「まぁ、思われても仕方がないかと」
これは完全に裏の事情なのだが、初詣は
この小説では書こうとは思っていなかった。
そのため今急ピッチでダメミコ初詣編を
書いているわけなのだが、素材の少なさや
作者の時間の都合上、まったく書けなくて
一日一話更新ができなくなってしまった。
もちろん、前も更新していなくてヤベッと
思ったときもあったが、それは作者が投稿の
確認ボタンを押していないのが理由だったりで
実際には話はできていた。が、ここ最近
2日に一話のペースで更新しているのは完全に
話が完成していないからだ。90話と
10話で3桁に突入しようところでこんな
ことになるとは思ってなく、毎日見てくれている
読者には非常に申し訳ないという気持ちで
いっぱいだ。今後もこの小説をよろしく
お願いしたい。
「途中から愚痴になってたの気のせい?」
「気のせいじゃないすか」
まだまだ2年生編もあるのでこれからも
よろしく!(作者談)
閑話休題
で、俺たちは再び同じ場所に戻ってきた。
さっき休んだばかりで全然元気であるが……
「さっきより人すごくない?」
「いやさっきの人たちが酒を引っ掛けて
元気ハツラツになってるだけだよ」
人ごみであるのは変わりはないが、さっき
以上に盛り上がりが激しい。お祭りかよ。
中には生徒会長の言うとおり酒を引っ掛け
体から酒の香りを撒き散らす人もいるし
それ以上に巫女や僧侶の姿が見える。
夜も遅いし、切り上げようって意味が
あるのだろうな、あれには。さてさて
そうこう考えている間にもう少しで年が明k
「あ、明けた。あけおめ」
「そんなぬるっと明けるんすか」
確かに時計を見たら0時2分を
指していた。あのさぁ……もっとさぁ
……いや、やっぱなんでもないわ。
「あ、そういえばおみくじ引いてないね。
今ならこの騒ぎだし、おみくじ売り場も
空いてるんじゃないかな?」
「そんなおみくじ引きたいんすか」
「だって一年を決める大事な占いだよ?
そんじゃそこらの朝の星座占いよりかは
信用があるとは思わない? それにここは
地方屈指の力ある神社なんだからさ」
「あまり力をもってほしくないんですがね」
あ、ちょっとこれは失言か? いや、
生徒会長は気に留めてなさそうだし別にいいか。
確かに売り場は空いていた。ただしそこに行く
までの道中が狭く、歩き辛いったらありゃ
しなかったが。ちなみに受付にはもちろん巫女が
いたのだがその中にはミコはいなかった。身なりや
仕草から多分この人たちはバイトの子たち
なのだろう。伊達に3ヶ月近く、リアル巫女を
部活で見てきてはいないからな。それくらいなら
感覚なんてもので分かってしまう。
「神前君、なに巫女さんのことまじましと
みてるのさ? そんなに珍しいものじゃない
でしょうに。特に君たちは」
「なんか逆にそうやって本物を見ていると
こう……ニセモノって言ったら失礼だけど
それとの違いって言うのも分かるんだなと」
「あーなるほどね。でも受付の巫女さんが
めっちゃ気色悪そうに君のことみてるから
もうやめたほうがいいかもね」
逆に言うと、ミコはそんなことはしない
大きな巫女としての器を持っていると言えるか。
だが、俺のことをそんな目で見るのはやめろ。
女子からの軽蔑の視線って意外と心にくるものが
あるし、俺はそういう点では完全に素人なのよ。
言ってしまえば「童貞:最終局面」だ。
それも極めすぎて悟りを開いたクラスの。
「こちらの箱から一つお取りください」
俺と生徒会長は巫女さんにちゃりんと300円を
渡した。箱から取っていくスタイルなんだな。
それもそうか。よく見たら箱にもいろいろな種類が
あり、例えば普通に一年を占うものや、恋愛関係の
おみくじ、仕事の良し悪しを占うもの、ここ一年で
描けばご利益があると思われるカップリンg
「「……」」
「どうされましたお客様」
「あのさぁ……ここの店の上司って誰?」
「えーっと、はい、御前 三好さんですけど」
やっぱりか。おみくじにまで介入するなよ!
というか俺の場合はどれをとればいいんだ……
いや別にどれを取ったところで、どうせ俺は神から
度外視されているんだし、全く意味をなさないから
気に留めるなんて無駄も甚だしいが、それでも
俺は日本人で神仏習合の国の住人だ。そういう
おみくじだったり、朝の血液占いや星占いぐらいは
気にしてしまうものだ。それはこの神社でも
変わらないし、神に見放されてようが自身の
運勢を見るとなれば、やはりやりたくなるのが性
というものだ。と言っても、やるのはやはり
無難に一年の尺度を測るものか? と思ったが
こうも珍しいおみくじが並んでいるのであれば
もっと奇抜なものを引いてみたい気もする……
生徒会長は何も考えずに仕事の奴を引いている。
さすがは生徒会長、仕事が大事なんだな。
……だめだ、こういうときは
「あの、すいません」
「はい、なんですか?」
「このおみくじの中ではどれが一番オススメ
というか効果がありそうd」
「やはりカップリングみくじですかね?」
「え」
「私も去年、同じものを引いたんですがなんと
私的には押しではなかったカ◯松と同じく押し
ではなかったト◯松の二人を合わせなさいと
かかれていたのでその通りにしてみたら、なんと
それが話が盛り上がるに盛り上がり、それを
ツイッタ上に載せたらリプライの嵐に! ええ、
それからはもうカ◯松もトッティーも私の
中で嫁見たいな感じになり、それからは毎日
その二人のカップリングを考える日々。もちろん
他のものも考えますが、あの子たちが私の
中では大きな存在になり日々が充実したのも
事実です! ですのでこのおみくじは本当に
効果があり、女性はおろか男性にも進めて
いるんですよ!! それでお客さん? その
先ほどおみくじを持っていかれた男の人
とは一体どんな関係d」
「すいませーん、普通のみくじくださーい」
俺は聞かなかったことにした。もうなんか
いろいろとめんどくさいからだ。っていうか
あの腐巫女はここの巫女の採用条件に
なんかおかしな要点もいれてるのではと
疑いたくなるわ!
「ありがとうございました」
おみくじの結果を見る前にその場を離れた。
大きな理由は後ろに人が並んでいたのが正しいが
さらにいうとなれば”その場”にいることを
体が拒んだからだ。人の性癖に難癖をつける
つもりはさらさらないが、だとしても人には
得意不得意というものがある。理解してくれ。
「あぁ、どうしたの、そんな引きつった顔して」
「ミコって巫女なんだなと思いました」
「何を言ってるんだい?」
今だけミコが巫女らしい振る舞いをしてたな。
と休みになる前の部活での一日一日を思い出し
そう思えるようになった。もっと巫女らしい
ことをやってくれと言い続けていたが、あれを
見た後ではそれはもう不毛なんだなと感じる。
「人というのは理解してやっと成長するんですよ」
「だから何言ってるのさ? そんなにおみくじの
結果が悪かったなんてことじゃないでしょ。
おみくじ一つでガックシいくキャラでもないし」
あ、忘れていた。俺はあそこにはおみくじを
買うためにいったんだった。じゃないと俺が今
手元に握っているこの紙切れは何なのだ。
「だとしてもそれは……」
「いや、もっと奇抜なものにすればよかったん
ですが……あれ?」
「ずいぶんと珍しいものを引いたね……」
俺が握っているのは一年を通して占うただの
みくじ……じゃない。これは……
「恋愛みくじ……」
「あらま、間違ったのかい? あの巫女さんに
いって変えてもらってこようか?」
「いや、別にいいですよ。それにさっき言った
ように”どうでもいい”ので」
「あ、はーい了解でーす」
うわぁ、あの時に引いてくる箱を間違えたのか。
んな恋愛関係なんて神様どうこう以上に俺が
どうでもよすぎるから俺はまったく気にする
つもりなんぞない。それによく見たらおみくじの
字体もどこかかわいげのある、いわゆる丸文字
みたいな字体だ。それにすら気がつかないとは
あのときの俺はずいぶんと気が回らなかった
のか。
「ま、どっちみち結果は気になりますよ」
「へー、やっぱり気になっちゃう年頃だよn」
「いや、俺の周りの女子にろくなのがいない
ので気になるものも気になりませんよ」
「童貞こじらせて、境地に達したみたいな
発言だねぇ……」
まぁ、間違っていないから否定しない。
否定してもよかったがその気もない。
「さてと、結果は……」
びりっとおみくじの口をあける。中も
やはり丸っこい読みにくい字体だ。そして
その真ん中に大きく書かれている。
……凶。
「おっ! 僕は中吉だよ。生徒会長たるもの
やっぱり大吉のほうがよかったけどねぇ。
神前君は……あっ……」
「……?」
生徒会長は何もいわず、ぽんと俺の肩に
手をのせ、下をおもむろに向いた。
「何も言わなくていい。君はただ女の子に
恵まれないだけの話で、希望はあるさ……」
「あわれまないでくれ」
確かに意味合いは異なるが大体、生徒会長の
言い分はあっている。俺がミコと会ってから
女性キャラが俺とよくかかわるようにはなった
ものの、そのどれもが特徴的過ぎて、無難な
クラスメイトや幼馴染みたいな位置づけの
やつがいない。あるいは俺に無駄に反抗的か
異様に執拗かそのどちらかで、言っちゃ悪いが
俺の考えていたものと大きくかけ離れている
ことに間違いはないのだ。あー、もっと楽しい
学園生活がしたかったなぁ…… 今までそう
思ったら負けみたいな流れがあったから
思わないようにしていたことの一つである。
「それにしても御前さんと会わないね」
「……ええ、ここにいれば会えると思ったん
ですが……まぁ、忙しいんでしょ」
「そこらじゅうに巫女さんはいるんだけどね
まぁ、ひやかしはできなかったけど毎年の
年中行事の一つはしっかりできたし十分でしょ」
「ええ、そうすね」
「それじゃ、僕は家で家族が待ってるから
そろそろ行くね。それじゃよいお年を!」
「そのセリフ、遅くない!?」
だが、俺はそれに見合った別れの挨拶を
知らなく、生徒会長と同じく「よいお年」と
返した。人が多く生徒会長が見えなくなるのは
早く、気がついたときにはその姿は見えなく
なっていた。正直、俺をここに無理やり
連れ出したのだから家まで送ってくれよと
いいたいところだが、そんなずうずうしいことは
いわないさ。
さて、ここ数十年で久しぶりの初詣に来た
わけではあるが、俺もぼちぼち帰るか。このまま
帰ったところでCDTVの始まる時間までには
間に合わないし、最初の酒樽を壊すくだりは
あきらめるしかあるまい。それに俺にはちょっと
した儲けがあったことだし十分だ。
あの巫女たちの中に、ちゃんと着飾り
美しく気高く振舞うミコの姿を見れたことだ。
残念ながら生徒会長はそれに気がつかなかった、
あるいはミコだとわからなかったのだろうが
俺にはちゃんとわかった。
伊達に3ヶ月近く、リアル巫女を
部活で見てきてはいない。それくらいなら
感覚なんてもので分かってしまうものさ。
そのミコは最高にかっこよかったよ。
なんてことは言えない。言えないともよ。




