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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
始まり始まり
8/444

8.準備をしよう

 さてさて、時間と場所が変わって

俺の自宅、時刻は午後11:00となった。

日付はさらに3日が経って木曜日だ。

しかし家というのはやっぱり落ち着く。

特に夜のこの時間は良い。


「ふぅー……」


 この一週間、今まで以上に多忙だった。

めったにクラスの奴らとは話さないように

振舞っていたというのに、あの自称巫女が

先週の夜の儀式に殴りこんできたことで俺の

周りの人間関係が少し変わってしまった。


 俺と全く話すことのない奴からも昨日は

話しかけられた。内容はあの自称巫女の話が

メインだったのだが。どうやら自称巫女は、

ほどほど学校内の(特に同学年)有名人の

ようなのだ。確かに、この小説のヒロイン顔

というだけあってかわいらしい外見ではある。


 小柄なボディで小動物のように懐いてくる

様子を見ると「かわいい」という言葉が

しっくりとくる。それはもう「○○クラスに

こんなかわいい女子がいる」といった具合に

話が広がっていったのだろう。


 俺はかわいいとは一切思わない。


 とりあえず、俺が自称巫女に提案した

協力の全貌について話す必要があるだろう。

いや、その前になぜこの話をするために

3日と時間が空いてしまった経緯を順々に

説明したほうが都合がいいのか。


 理由はどうってことはない。今これから

俺がやろうとしている"あること"の準備だ。

なんといったって情報もなければ材料も

ないのだから準備にも時間がかかって

仕方がなかった。だが、これはこれで好都合

だったかもしれない。あの自称巫女が俺の

この数日の行動で察して勝手に除霊だ除霊だと

暴れまわっても不都合だったし、即座に

行動に移してしまえば、それはそれで

「俺が悪魔である説」が自称巫女の中で

上がる可能性もあるからな。


 この時点でもうわかるかもしれないが、

俺がしようとしているのは「悪魔の召喚」だ。

俺の本業をここで見せておかないといけない。

悪魔の全容はまだ教えなくてもいいだろう。


 そして、俺が自称巫女に提案したことは

「ミキちゃんに霊の存在を信じさせよう」

といった具合のものだ。改めてこの3日の

間に起ったことを軽く説明しようか。


 もちろん霊はいなければ、騒動の一件も

全く起こっていない。なら話は余計に簡単で、

俺が悪魔を使って騒動を起こせばよかろう。

それも学校中に蔓延するウィルスのようなもの

ではなくある特定の人物にのみかかるような

ピンポイントな霊障を起こす。そのためには

対象の人物のありとあらゆる情報が必要に

なるため、こうやって3日と時間がかかって

しまった。


 その人物とはもちろん"ミキちゃん"。


 本名"相澤(あいざわ) 未希(みき)"である。


 召喚にはその対象の名前、肉親、血、そして

毛髪が必要になるのだが、名前は名簿を、

肉親は先生に聞けばあっさりと教えてくれたため

問題なかった。毛髪もホロリと落ちたものを

回収しておいた。その光景を誰にも見つかって

ないといいのだが。


 見つかっていたら色々とヤバイ。マジで。


 ただでさえ先生に"相澤(あいざわ) 未希(みき)"の親御さんと

少しお話がしたいからという名目で、名前を

担任から聞き出すなんて怪しい行動で何かを

疑われる危険性が増しているというのに。


 そして召喚の条件のレパートリーを見ると

わかると思うが、血の採集が困難を極めた。

これだけはどんなに待ってもタラリと簡単に

流れるものではない。だが、今日の数学の

授業で偶然にも紙で手を切ってくれたのだ。

すかさず、俺が紳士的に「大丈夫かい」と

ティッシュを差し出したのだ。


 "相澤(あいざわ) 未希(みき)"は俺の対応に

「ありがとう」と礼を言ってきた。


 悪いがそれはこっちのセリフなのだよ。


 もちろん、血を拭いたティッシュは

スタッフ(俺)がおいしくいただきました。


 そして、この間に自称巫女にはお化け騒動が

どんどんと広がっていると"相澤(あいざわ) 未希(みき)"を含む

自分を疑っている人物を中心に伝えるように

言ってある。霊というのは「いる」と認識して

やっと存在できるなんとも華奢な連中だ。


 ……というのが一般的な常識だ。


 俺に限ってはイレギュラー。悪魔に人の

「常識」は通用しない。相澤にはいやでも

霊に対する意識を持たせてもらい、その心の

弱いところを狙って霊が憑依したことにする。

そっちのほうが多分、今後の言い訳が楽に

なるんじゃないか、という考えだ。


 これで何が起こるかというと、今まで霊の

存在を否定してきた奴らに勧告ができる、と

いうのが3割ほど。残りの7割は完全に俺が

むしゃくしゃしたからであって、感情丸出しの

相澤に対する「嫌がらせ」だ。


 これで、ここ数日の俺の行動を全て話した。

これだけ話すのに1712字も使ってしまった。

いつものメタ発言であるがいつもどうり、

スルーの方向で行く。ではこれから儀式を

始めようと思う。バックからミコンを

取り出しページを開く。そこに付属品の

羽ペンで「相澤(あいざわ) 未希(みき)」とその父親と母親を

日本語ではない独特な言語で書き記す。

羽ペンをコミック雑誌のおまけのような扱いを

したが、本当のことだから言及はしない。

そして事前に床に書いておいた魔法陣の真ん中に

相澤の髪の毛が入った茶封筒と、今日回収した

血の付いたティッシュを置く。


 これで準備は完了。あとは前の金曜日同様

ミコンに手を当て、呪文を唱えるだけだ。


「*************」


 陣が光り始める。自分の部屋でやっている

ため、体育館のように壮大には光らなく、

実に小規模なものだが十分だろう。

魔法陣の真ん中に置いてあった茶封筒と

ティッシュが燃えるように消えた。


 ……成功したようだ。


「"憑依召喚・メア"」


 そう唱えたとともに部屋の床一杯に

書いてあった魔法陣は消え、俺の部屋は

いつもどおりの風景になった。今回は、

悪魔が現実世界に顕現するような召喚

ではない。今しがた召喚した悪魔は、

目の前にいるわけではないし、すでに

相澤のものにいる。


 さーてと、やることはこれで完璧に

終わったわけではないがほぼ終わった。

明日に備えて今日はぐっすりと寝ると

しようか。俺があくま(・・・)で悪魔だった

としても疲れはもちろん現れる。夜の

ほうが元気だとしても睡魔にも襲われる。

明日は先週の金曜日よりも忙しくなる予感が

ぷんぷんとする。ということで、続きは

また明日話すとしよう。


 ……あぁ、時計の時刻は12:44だった。


 おっと、もう明日(・・)じゃないか。これは失敬。


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