表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
ぼくらのおしごと
75/445

75.テストを受けよう

「それでミ……御前さんは……」

「言ってなかったけれど君たちがミコとか

 ココってあだ名で言い合ってるのは

 知ってるからそんな言い直さなくても

 いいよ」

「あ、そうなの!?」

「マヤちゃん情報だけど」

「あいつかーい」


 多分、何気なく俺たちの話題が出たときに

つい俺たちのことをそう呼んだんだろうな。


「それで学校には……」

「やっぱり来てないみたいだね。まだ連絡が

 来ていないからなんでいないかは、わからない

 けれど風邪だろうね」

「風邪?」

「だって前回の終わりでそう言ってたs」

「会長、ちょっと黙っててくれ」


 それはダメだ。それ以上はいけない。


 今は朝の短めのホームルームが終わって、

一時間目のテストが始まる前の10分程度の

休み時間だ。その際に俺はミコがまだ

学校に来ていないのを確認している。

まさか、土曜日に言っていたセリフが

俺にじゃなく本人に降りかかってくるとは

俺も予想はしていなかった。


 そして俺はミコの身に何があったのかを

担任に聞こう……としたときに生徒会長から

直々に電話がかかってきたのだ。そして

丁度いいし生徒会長から、その件について

生徒会長なら知っているのではと聞いたわけ

なのだが、どうやら生徒会長ですらわかって

いないようだった。それに連絡がないって

言うことは、ここで担任に聞いたところで

同じ答えが返ってくるだけだろう。


 ここは電話なりのミコの情報を待つしかない

できることはだろう。実をいうと俺も正直、

体調がいいわけではない。それもここ最近の

頑張りのせいである。俺はここ数日、慣れない

「人に教える」ということをしていた。慣れない

ことを続けるというのは意外と本人が気が

付かない以上に負荷がかかるものだ。俺は

悪魔であり別にそんな程度ではへこたれないし、

そんな程度で人でもへこたれるはずがない。

が、ミコについてはそういう常識をはるかに

越えた量の”慣れないこと”をやっている。

ならば、体調不良が原因であったとしても

変な話でもないだろう。


 本当に最後の最後まで手のかかる部長だ。


 ちなみに先日までは元気に登校して、いつも

通り部室でカリカリとペンを走らせている。

無論、月曜日も来ているため俺が土曜日に

教えることができなかった”三角比”などの

分野を教えることはできている。しかし、

こうなった以上それも無駄に終わってしまう

可能性もあるな。


「御前さんから連絡があり次第、連絡するね。

 多分僕よりも先に、先生から聞いた方が

 早い気がするけれど」

「はい、ありがとうございます」

「それとさ、義堂君は今日はちゃんと来ている?

 御前さんが来ないのも心配だったけれど

 義堂君が前みたいに来ないって言うのも

 不安だったし……」

「あぁ、それなら大丈夫ですよ。さっき廊下で

 見かけましたから来てはいますよ」

「はー、よかったー」


 俺も義堂が心配の種だった。前科があるだけ

あって、まだ寝ててテストが受けれなかったなんて

オチだって考えていたぐらいだ。だが、朝に

廊下でいつもの仏頂面な義堂を見たときは

ほっとしたさ。と思ったらホームルームに

まさかの人物が来なかったときたものだ。


「あー、もうそろそろ一時間目が始まるね。

 僕たちもテストだからもう切るね」

「はい」

「テスト頑張ってね!」


 ぶつっ


「はーい、それじゃあテスト始めるよー

 机の上のもの、中のもの全部カバンの中に

 しまってー。机の上においていいのは

 シャープペンとかの筆記用具だけだから

 それと……」


 生徒会長の電話が切れたと同時に、教壇の

上で先生が言う。一時間目は国語だ。だが、

始まるというのにミコの席には誰も座っていない。

間に合わなかった。


 だが、そんなことで悔いても仕方がない。

俺も同じテストを受けるんだから、気合を

入れなければな。別に難しい問題はないだろうし

”教える”ほうが俺にとってよっぽど難しいわ。


 そしてテストは流れるように進み一時間目が

終わった。もちろんミコは来ていない。


 まぁ、分かっているかと思うがこの後……

二時間目、三時間目、四時間目、五時間目と

ミコが姿を現すことはなかった。そして

ミコが休んでいる理由を知るのは二時間目が

終わった後、つまりは休み時間になる。


 ピロロロロロ


 生徒会長からの電話だ。


「もしもし、どうs」

「TE勢だ! 生き埋めにした後、焦土と化せ!」

「ネタから入らないでほしいんだが……」

「冗談冗談、御前さんの状態が分かったから

 伝えようと思ってね。うん、やっぱり風邪だって」

「そうですか」

「それも39.7度の高熱だってさ。これって

 知恵熱ってやつなのかなぁ……? まぁ、

 それは置いといて、一先(ひとま)ず今日は布団から

 すら起きれないぐらいダウンしているみたい。

 だから今日のテストは受けれないって」

「……」


 担任に聞く前にわかったのはありがたいが、

そうか…… 俺が今の今まで頑張ったことは

無駄だったのか…… 無駄になったのか。


「ふふ」

「? どうしたの神前君?」

「いえ、なんでもありません。わざわざ連絡

 してくれてありがとうございます」

「いえいえ、神前君だって午後の残りの

 テスト、頑張ってね。僕も頑張るから」

「はい」

「それじゃねー」


 ぶつっ


 ……ははっ


 俺はなんで笑ったのかわからない。いや、

答えはもうわかっている。笑うしかないんだ。

俺がテストでいい点を取ろうと躍起になって

ミコに勉強を教えた結果がこれなのだ。俺が

あそこまで無理をさせて勉強をさせていなければ

まだ15点は取れていた。だが俺がここまで

無理をさせたために、ミコは15点どころか

今回の点数は0点になってしまったのだ。


 ははっ、くそが。


 俺は何のために、ここまで頑張ったと

思っているんだ。だからってミコが悪い

わけじゃない。悪いわけなんて決してない。

悪いとしたら、この状況を作った俺だ。

前に生徒会長が言っていた通り、ミコや

義堂が頑張らず、俺が一人で点数を取って

いた方がまだよかったのかもな。


 ……はぁ……俺がミコに前にいったことが

こんな形で俺の身に降りかかるとはな。

全く、運命というのはわからないし、

滑稽(こっけい)で面白いし、どこまでも屈辱的(くつじょくてき)だ。


 何がネガティブになるなだよ。俺が

それを一番わかっているし、20年以上前

からわかりにわかり切った事実なんだ。


「うーす、そんじゃテストやっから机に

 もの置くんじゃねーぞ。全部カバンに

 しまえよー。置いていいのは筆記用具と

 それから……」


 三時間目が始まった。テストの監視官は

佐々木先生だった。


 テストの出来栄えはかなり良かった。

もちろん丸付けをしてもらってはいないので

結果は出てはいないが、ほぼほぼ問題は

解くことができた。


 だが、それでもミコの分を補えたかと

いうとそうでもない。やはり俺もそこまでが

限度だったのだ。だがここは前のテストより

(かんば)しい結果となったというポジティブな

考えを持っておこう。ミコのことはひとまず

考えず俺だけを見ていないと俺の精神が

持たない。


 そして、完全燃焼してくたびれながら

下校しようとしているのを、一足先に校門で

俺を待っていたのは……


「や、お疲れ様」

「……」


 生徒会長だった。


「それでどうだった? テストの出来栄えは」

「ええ、とてもよくできましたよ。やっぱり

 ふつうに勉強するよりも人に教えながら

 勉強した方が見に付きやすいってこと

 なんですかね……」

「……のわりにうれしくなさそうだね? ……って

 その理由なんてひとつしかないんだろうけど」

「……」


 そうだった、ミコの言った通り俺は意外と

顔に出やすいんだった。生徒会長はそれを

いとも簡単に見抜いてしまったのか。


「ちょうどいいや。はいこれ」

「?」


 生徒会長は俺に一つのビニール袋を差し出した。

中身は……プリンとお茶だ。


「これって」

「さっき購買で残ってた中から、「お見舞いに

 持っていきそうな食べ物、飲み物」を選んだんだ。

 前に勉強の一件でお世話になっているし、

 一人の友達として、御前さんのお見舞いに

 この後行こうと思ってたけど、神前君が

 僕のかわりに行ってくれないかなぁ?」

「へ?」

「いや、僕がいっても別に問題はないんだろう

 けれど、正直僕ってあの日御前さんとあんまり

 絡んでないんだよね。だから僕がいくって

 いうのもなんかなぁ…… と思っていたし、

 それに僕って立場上「先輩(せんぱい)」でしょ? だったら

 僕が行くよりも”同じクラス”で”同じ部活”である

 神前君が行ってあげた方がいいかなぁと。

 それに僕、これから先生と生徒会一同で

 面談があるんだよね…… もちろんさっき

 お見舞いに行くって言って断ってるんだけど

 もし神前君が行ってくれるなら、僕も

 面談に行けるからありがたんだよね」

「えー、そんなめんどくs」

「行ってあげなさい? そうじゃないと

 君も御前さんもモヤモヤしたままだよ?

 本当は義堂君も呼びたかったんだけど

 僕がここに待機する前に帰っちゃった

 みたいだし、君しか頼める人がいないんだ。

 だから行ってあげなさい?」


 ……そんなの返答は決まっている。


「わかりました。行けばいいんですね」

「うん、ありがとうね。でも気を付けてね。

 この時間は大丈夫だろうけれど、あまり

 遅くなりすぎるとあの場所って確かクマが

 出るはずだから」

「あ、それは知ってます」


 というかあの山ってクマ出るのかぁ……

そんな山が御前一族の総本山だというのも

すごい話だな。


 そして俺は三度(みたび)この御前神宮に赴いている。

12月というだけあって入り口に着いた頃には

空はとっくに暗くなっていた。だが、クマが

出る様子はないし大丈夫だろうな。


 御前神宮はインターホンのような

呼び出し鈴は入り口に備え付けていない。

俺は義堂のやったように大きな声で呼んだ。


「すいませn……!」

「うるせーーーーーーーぃ!! って

 なんや、あく……神前君だっけかいな?」

「だからその呼び方で呼ばないでください」


 また俺は「悪魔」って呼ばれそうになった。

何? この一族は俺の古傷(ふるきず)をえぐるのが

好きなのか?


 俺を待っていたのはこの神社の最終兵器で

あり、御年92となる剛隆おじいちゃんだ。


「あのー、今日は……」

「んなわかっとるわい。どーせうちん孫の

 見舞いじゃろうに? そんならとっとと

 入れ入れ」

「あ、はい、すいません」


 ちなみにここに来る前に一旦自宅に帰っている。

理由はもちろんミコンを置いてくるためだ。

何が起こるかわからないため万全を期すため

ミコンをわざわざ置いてきている。といっても

ここに来る際に俺の家の近くを通るため

別に手間がかかったわけではない。


 そして俺は剛隆おじいちゃんに連れられ

いつもの居住スペースに着いた。もうかれこれ

何度も来ているためこうやって連れてこられ

無くとも自分ひとりで行けるのだがな。


(わし)はちいとやることがあるから、後は

 任せるよ。お前さんも風邪にゃ気ぃ付けよ」

「わかりました」


 俺はミコの部屋の前にいる。これは入って

いいのか……? さすがに本人の了承も得ずに

人の部屋、特に女の子の部屋に入るのは常識的に

どうなのか……


 なーんてことを一切考えず、ガラガラっと

部屋の扉を開けた。常識の”じ”の字もない

と俺だって思っている。だが後悔はしていない。


「お見舞いに来たぞミコ」

「……」


 返事はない。


 だが布団から顔は出てないにしろ、普通より

掛け布団がボリューミーになっているため

布団にもぐりこんでいるだけだろう。それと

生徒会長が言っていた通り、布団から出れない

ぐらい弱っているというのは本当なんだな。


 俺は持ってきたお見舞い用のプリンとかを

机の上に置いて、ミコの布団に近づく。

そして顔が出るように布団をめくった。

風邪をひいているというのに布団にもぐり

込んでいたら息もろくにできないだろう。


 ミコはぐったりとした顔で寝ていた。

ほほも真っ赤で、でこには冷えピタを

貼ってある。昨日とは比べ物にならない程

別人のようだ。


 パチッ


 ミコが目を開けた。寝ているし布団を

めくっても大丈夫だろうと思っていたg


「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー

 -----------!!!!!!!」

「うるさっ、うるせーーー!!」


 鼓膜(こまく)ぶち破れるかと思ったわ!!


「何何何何、なんでここにココが!!?

 ……あ、今のダジャレ面白かったから

 また使おうっと」

「うん、通常運行でよかったわ」


 格好と顔つきからはいつものミコには

見えないが、やはりこいつはミコだな。

いつも通りのミコだわ。ずっと寝ていた

らしくパジャマのままだ。パジャマの柄は

……言っていいのか? だってこれかなり

恥ずかしいよ?


「……何、考えてるの?」


「いや、その動物さんいっぱいのパジャマを

 読者に言おうかどうかを考えてた」

「(`0言0́*)ヴェアアアアアアアア!!!

 言われたぁああああああああ!!!!」


「お前はフルフルか」

「それはココアに謝った方がいいよ」


 なんてキレッキレなツッコミ。やはり

この可愛いパジャマ姿のJKはミコだな。


「それでなんでココがぁ……ぁ……バタッ」

「ほら、んな無理すんなよ。病人だろお前?」

「あうぅ……なんでココが……?」

「そりゃお見舞いに来たに決まってるだろ。

 ほら、生徒会長がミコにって」

「え」


 俺は机に置いたビニール袋をミコに見せる。

本当は渡したつもりだったのだがミコはそれを

渡したと認識しなかったため。見せるだけと

なった。そんだけ弱っているのかコイツ。


「プリンとお茶だ」

「わー、会長めっさ優しいじゃん……」

「で、俺からは”きな粉餅”買ってきたぞ」

「……神様ですか?」


 俺はここに来る前にコンビニできな粉餅を

買ってある。生徒会長だけお見舞い用に

買ってあるのもどうかと思ったためだ。

それにミコの好みは学校祭で分かっている。


「それで体はどうなんだ?」

「うん、全く元気になる感じがしない……」


 ここまで弱るとはなぁ…… 馬鹿は風邪を

ひかないっていうが、これも馬鹿を脱却した

甲斐あってのものか。


「ココなんか失礼なこと考えなかった?」

「イヤー、ナーンモカンガエテナイヨー」

「……そう」


 言い合いをする元気もないのか。これは

張り合いがなくて非常につまらないな。


「…………」

「……どうした?」

「……聞かないだね」

「聞く? 何をさ?」


「私がテストを休んだこと」

「……」

「私のために頑張ってくれたのにこんなことに

 なったんだよ? そりゃなんも思わないわけ

 ないでしょ?」

「…………あぁ、たっぷりあるぞ。俺がこの日まで

 ずっとミコの勉強を見てきたんだから、それ

 相応の結果を出してくれるんだろうなって

 思っていたし、今まで以上に本気になっていた

 からそれに見合うように俺も頑張ってきた

 っていうのにこんな有様で終わっちまったこと

 だったり言いたいことなんて山ほどあるよ」


 本当はこんなこと微塵と思ってもいない。

だが、ミコに優しくするのもどうにも気恥ずかしく

感じて、こんなことを口走ってしまった。

いつもなら、「そんなことない!」と

ツッコミが飛んでくるはずなのだが……

どうやらそんな気も起きないようだな。


「だったら何でお見舞いなんて来たの……?

 今日だって起きたのなんてお昼頃だったし

 そんなに寝てても元気にならずに今も

 こうやって体を起こすだけでも辛いの……

 そんなにボロクソに言ってるんだったら

 私のためにこんなにしなくてもいいのに……

 それに今日だけは…………特にココとは

 会いたくなかったよ…………前に言ってたよね?

 ネガティブな考えはやめようって……なのに

 今の私、そんなことしか考えれないから

 こんなことになったのは私のせいだし、

 その、私のせいで、ギドー君とココが、部活

 できなくなる、って思ってるし…… 私って

 もう…………部長……失格なのかなぁ……って」


 ミコはまた布団を覆い被った。布団の中から

グズグズと鼻をすする音が聴こえる。が、

これは風邪のせいの鼻づまりではないよな。


「……ミコ」

「ズズッ……何?」


 ガバッ!


「!!!!!!!??」

「何言ってるんだよ!?」


 俺は被さっていた布団を引きはがす。

中から風邪で赤くなったほほよりも真っ赤に

なった目をしたミコが顔を出す。


「あ”-ダメダメ! 今顔を見るのは……っ!」

「んなこと考えるぐらいならとっとと風邪を

 なおすことを考えてろ! そんなん結果論に

 過ぎないだろうが! 何勝手に自分のせいに

 して解決しようとしてるんだよ! そんな

 俺が許さねぇよ。俺だって自分のせいなんだ

 って思っていたし、それを自分のせいだって

 結果出して何納得しようとしてるんだよ!!

 俺はそんなこと一切思ってないし、前も

 言ったろうが。お前が後ろ向きなことを

 考えてるならそれを全力で否定してやるって!

 だからそんなこと言うな!! 次言ったら

 殺すぞ」

「殺すって……」

「それに


  それを何とかするのも俺の仕事だ。

 それを解決する責任があるのも「先生」の

 仕事だよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ