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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
ぼくらのおしごと
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74.勉強を続けよう

「お、おあえり」

「ったく何処ほっつき歩いてやがったんだよ」


 居間に戻るとミコと義堂が食事中だった。

いつものごとく、ミコはもしゃもしゃと口に

詰め込んだまま話している。汚いからそれ!

そんなラノベヒロイン誰も望まないよ!?


「それで……俺たちの飯は……」

「ああ、少し残して全部喰っちまったよ」

「やっぱりか」


 予想通りではあったが、少しは残してくれて

いるだけありがたく思うしかない。ってこいつら

ふたりで四人前食ってんじゃねーよ!!


「それで何がのこってるんだ?」

「ああ、”魚の骨”と”鳥の骨”と……あとは

 ”魚の皮……」

「お前、喧嘩売ってんのか」


 残したわけじゃないだろそれ! 結果的に

残したやつだろそれ!


「……で、そういうの以外で食べれて残っている

 ものっていうのは」

「あぁ、後は”タンポポ”と”パセリ”と

 ”なんか分けんのに使う葉っぱ見てぇなヤツ”が

 残ってるくらいだ」

「だからさぁ」


 飾り用のヤツだよねそれ? 一応タンポポと

パセリは食用だからいいとして”バラン”は

完全に食い物じゃねーよ!! いや、だからって

タンポポとパセリだけいただくっていうのも

おかしいわ。


 結局俺たちが食べれるものはなさそうだな。

俺はここで悲しんだりしないんだが、隣で

「えぇ」みたいな表情をしている生徒会長が

より可哀そうに見えてきた。


「うーん、無いなら無いで仕方がないか……

 お腹が落ち着いたら、もう一度勉強するから

 覚悟しておいてね」

「面倒だぜ、くそが」


 面倒とか言いながら、さっきまで生徒会長に

言われた通り勉強に手を付けてくれているだけ

義堂もしっかり者だな。やっぱりマンガやアニメの

世界の不良っていうのは優しい説ということか。


「それでさっきまで何してたの?」

「あぁ、俺が教えれなかった部分あるだろ?

 そこについて聞いてたんだ」

「へー、じゃあ教えれるようになったの!?」

「……」


 すいません、結局一話の半分くらいの尺を

使って聞いたくせに全くわからないまんまです。


「いや、分からないままだな」

「ダメじゃん!」

「でも月曜までには何とかしておくよ。それに

 生徒会長からそれしか教える方法はないって

 言われちまったしね」


 教えたくば学べ。


 生徒会長から言われた言葉はそれだけだ。

ならば俺が頑張るしかなかろう。日曜にミコが

休んでる間に俺がそれを補うくらい勉強する

しかない。


「え? じゃあ生徒会長から私教われば……」

「いやいや、それには及ばないよ御前さん。

 今まで、神前君から教えてもらってたんでしょ?

 それにそれが功を奏して勉強ができるように

 なったわけだから僕の出る幕はないよ。テスト

 直前に違う先生から、慣れない教わり方を

 されるのもあまり効果はないし」

「ほー、そうなんだ…… じゃあ、ココ

 月曜まで待ってるわ! 頼んだよ!」

「あぁ、任せておけ。っつっても他のことも

 しっかりやらないとな。昼ごはん終わったら

 そのカロリー消費するぐらい勉強するぞ」

「面倒だぜ、くそが」

「女の子がそんなこと言うなよ。それとそれ

 さっきの義堂のセリフだろ」


 そして予定通りではあるが、昼ごはんが終わり

(俺と生徒会長は昼ごはんどころか食べてすらない)

ふぅ、と一息ついた後はもちろんのことながら

勉強を俺たちは再開した。が、ミコはみっちり

勉強はしたいがあまり遅くはなりたくないと

言っている。


「なんで? 勉強ガッツリやるって言ったの

 ミコの方だろ? 別に夜遅くになっても

 問題はないようにはしてあるが……」

「いや、うちって山の中腹にあるでしょ? 特に

 夜になったら道なんて見えたものじゃないし

 おじいちゃんが前にここらあたりでクマを

 見つけたって言ってたから、山を下りるのは

 夜遅くにならない程度にしないとね」

「え!? ここクマ出んの!?」

「うん、鹿もいるよ。時々、おじいちゃんが

 捕まえてきて、味噌汁の具になるくらい」

「おじいちゃん万能だな」


 剛隆おじいちゃんはやはり只者ではなかった。

……なんか俺の考えている方向と違う気がするが。


「というわけで私たちは4時まで勉強をします!

 そういうわけでオーケー?」

「お、おういいけど……なんでいきなりそんな

 仕切りだしたんだ……」

「だって計画が大事って言ったのはココでしょ。

 私はそのとぉーーーーり実践しただけ」

「タケ〇トピアノか」


 最近テレビとか見ないけれどあのCMってまだ

やっているんだろうか……? 赤ん坊に見せたら

その赤ん坊が泣き止むという伝説のあのCM。


「さ、んなこと言ってないで勉強するぞ」

「ほいほいさー」

「……」


 なんだその挨拶?


 ここからは毎度おなじみとなった字面が

つまらないお勉強タイムに突入するわけで、

今まで通りほとんどのシーンをカットして

いこうと思う。


 前も言ったかもしれにないがこの物語は

ラブとロマンスとギャグをメインに据えたもので、

(ドラゴン)桜みたいな勉強ガチ展開のような描写は

無用の長物だ。ここはそれを見越したうえで

読者にこの小説に対するイメージ保持のために

大事なカットだと思っていただきたい。


 しかしそれでも大事なシーンと言うのもある。


「ココー」

「またわからないとこあったのか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけd」

「なにぃーい!? 全部分かったのかぁ!!

 ならもう言うことは何もない! お前は

 次のテストで40点どころか満点も狙える

 だけの実力をもっt」

「そうじゃなーい! 単純に勉強以外で聞きたい

 ことがあるだけだよ!」

「ちっ」

「……舌打ちした? そうじゃなくて、なんで私に

 こんなにみっちりと勉強を見てくれるの?」


 そんなのは決まっているし、俺が一週間近く

前にも言った通りだ。


「そりゃ決まってるだろ。ミコに頑張ってもらって

 部活を元の状態に戻すことが目的だよ。それ以外

 何があるって言うんだよ」

「ううん、普通はこんなにやってくれないもの

 じゃないの? 私が言えたセリフじゃないけど

 教えるために家にまで来てくれるなんて、もう

 ”家庭教師”の域だよそれ。それにそれだけ私の

 ことを心配しているって風でもなさそうだし、

 本当にここまでやってくれる意味が全然

 分からないのよ。それにさっきも私のため

 ”だけ”になんか頑張ってくるって言ってたし」

「は? なんでって言われても」


 これは俺の人生と性格を顧みたら分かる。

俺は「真面目」なんだ。それは勉強に限らず

色々なところでそれが垣間見える。義堂の抗争

だって一度関わってしまったがために、それを

何とかしたいと思ったし、俺が学校に放った

悪魔をもとに戻さなくてはならないと部活を

通して決意したのも俺が「真面目」だからだ。

もちろん今だってそれが言えるだろう。俺が

一度「勉強を見てやる」と言ったからには、

ミコにはそれなりに勉強をさせたいし、何より

俺はあらゆることに対して「諦める」という

選択肢を選びたくないんだ。


「ココっていつか損するよ? そんなんだったら」

「自分のことだろ? それを本人が損だって

 言っちゃうのかよ」

「それは私が私をそう思ってるからね」

「?」


「私って馬鹿だし…… それを一番わかっているのも

 もちろん私。それを認めているっていうと嘘に

 なっちゃうけど、それを何とかしようって思ってる

 だなんて思ってないんだ。前も言ったかもしれない

 けれど”それ”を含めて私だから。それでね、私が

 こうやって思っていると、他の人たちの方が

 私なんかよりもよっぽど目に付くんだ。だから

 私が頑張るよりも他の人の頑張りを見て応援して

 いた方がうれしく思うの。だからこそココが

 こうやって私になんかに頑張ってるってところを

 見ていると「なんでだろうなぁ……」ってすごく

 思っちゃうの。そんな損なことばかり率先して

 やっているのがわからないんだ。特に私が

 関わるとね」

「…………そんなの、部員だからだろ。


  仲間は仲間だ。仲間が困ってたら

 手を差し伸べるし、仲間が悩んでいたら

 何があったか聞く。そして仲間が自分のことを

 ネガティブな評価を下していたら、それを

 全力で否定する。もちろんそれが正しかったら

 それを肯定するが、頭のおかしいぶっ飛んだ

 全く見当違いのことを言うのだったら、

 一人の仲間としてそれを全力で否定する。

 そういうものだ。だからお前のその考えは

 間違っている。今まで何をしてきたんだ?

 ミコ、お前が今までそんなこと考えながら

 俺から勉強していたんだったら、俺はもう二度と

 お前になんか勉強なんか教えない。そして

 そんなことばっかり考えてる部長なんてうちの

 部活にいらない」

「……」

「俺はな、それでもミコがそれを思って頑張って

 いるってそう思っているさ。前にいったよな?


 「どんなに馬鹿にされて嫌な目にあっても

  それに屈せず霊障に立ち向かわなくちゃ

  ならない」みたいなことを。


  それは霊障に限った話じゃないよな? それに

 それを自分で馬鹿にしているようじゃ話にすら

 ならないだろ。俺はミコを見据えた根性を

 持っていると思っていたし、今もそうだと

 思っている。だからお前はどんなに馬鹿だろうと、

 自分に価値がないって思っていようが、俺を

 含めて誰もそんなことないって言うさ。俺は

 ミコのことは底なしの馬鹿だとは思う。それに

 価値のないヤツだなと…… ときど、いや思った

 ことは一度もない。だがな、馬鹿なことと

 損なことは全く結びつかないし、そんなことは

 俺が認めない。それは本人が決めることだし

 本人がそう言うのであればそうであるし、

 そうじゃないと言うのであればそうじゃない。

 だからミコ、お前は本当に価値がない人間

 なのかもう一度考えてみろ。


  俺たちが部活を作る前にミコが学校で

 「巫女だ」「巫女だ」と言って回ったときに

 俺はそれを否定したか?


  工場に霊がいるって言って一人で勝手に

 行ったときに、俺を義堂はそれを助けるだけ

 価値のあるやつじゃないって言って、工場に

 助けに行かなかったか?


  学校祭の花火の時に俺と義堂はミコを

 ほったらかして別の場所で楽しんでいたか?


  部活のために張り切っているのを俺たち、

 それに生徒会の人たちは遠い目で「下らない」

 って言っていたか?


  勉強しなきゃって言った時に俺と生徒会長は

 手を貸してないか? あるいは「無理だ」なんて

 言葉を投げかけていたか?


  そんなことはないだろ? 俺を含めて義堂に

 生徒会長、副会長、それにマヤだってそんな

 ことは一切思っていない。……と思う。だがな、

 ミコは自分がおもっている以上に誰か何かに

 価値がある人だって思われているんだ。だから

 そんなこと言ってないで、その人たちのために

 頑張れ。それなら俺だって頑張り甲斐って

 いうのがあるし、俺だって他人が頑張るのを

 見ているのは好きだ。どうだ? これでも

 俺がミコに付き合ってる意味が分からないか?」

「………………


  ……ぷっ! アッハッハッハ!!

 やっぱりココって変だよ! そんなに私のために

 って言ってこんなに”イタイ”言葉言ってくれる

 なんて。はー、元気になった……」


 イタイって……


「でも、元気出た。この調子だとまだまだ勉強

 頑張れるし、こんなに熱い人を目の前に

 ネガティブ発言している暇なんてないしね。

 よっし、ココ! このページ全部教えて!」

「やる気が出たのはうれしいが、いきなり

 そんな量を教えてくれって言うなよ。ったく

 ほら見せろ」

「……」

「……? どうした?」

「ココってさぁ……なんか先生みたいだね」

「はぁ?」

「だって人のためにここまで本気になれるって

 ある意味才能だよ。まぁ、私もその才能

 持っているけど…… それにこうやって勉強を

 教えてくれているところを見てたらまんま

 先生じゃん!」

「はぁ??」


 何言ってんだコイツ、と思ったがそれも

一理あるか…… 勉強を家にまで来て見るなんて

さっきも言った通り”家庭教師”じゃないか。


 でも、俺は悪魔だ。人の世に属さない有象無象の

一族の末端だ。そんな”先生”なんて夢は持つ

なんてことはしない。


「はぁ……」

「何? 疲れたの?」

「いや、そうじゃないんだけど……」


 違うな、実際には疲れてはいる。そりゃそうだ、

俺は朝から昼にかけてびっちりミコの勉強に

付き合いっぱなしなんだ。放課後に簡単に

教えるのと比べたら疲労も増えても仕方がない。


「疲れたんだったら、今日はもうやめる?」

「いや、やるか。ここでやめたらミコの

 勉強のやる気がそがれるだろ?」

「うわ、優しすぎない!? って言ってテストに

 なったらバタンキューとか言ってダウンして

 休まないでね」

「そんなマンガみたいなことあってたまるか!」

「これマンガじゃないにしろ小説でしょ?

 そういうことあるかもしれないじゃん」

「フラグ立てるのやめろ!!」


 本当にそうなるかもしれないだろ!!

そうなったら俺はさっきも言った長々しいセリフ

前言撤回しなくちゃならないわ!


 閑話休題


 と言ってもこの勉強会の重要な部分はもう

言い終わったので、あとは語るような部分は

もうないため、これにて今回の緊急勉強会

(IN 御前神宮)は終了となる。これで、

ミコと義堂の学力アップにつながればいいが……


 確かテストは来週の木曜日だったはずだ。

早すぎるかもしれないが、ミコと義堂のテストの

点数が気になって仕方がないな。って俺も

これから帰ってミコの勉強のために勉強を

しなくてはな。




 そして、テスト当日。俺………… ではなく

ミコは学校を休んだ。39.7度の風邪をひいて。


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