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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
LDK
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67.月見をしよう

「あ、ココ遅かったね」

「あれ? 電話しなかったのか?」

「だってめんどくさいじゃん」

「そんな理由で捨てられるとこだったのか……」


 俺はそのあと、気絶した”デリトー”を

ミコンに戻すため、ミコンの回収をした。

ミコンは多分、俺をここに飛ばす際に

”トラン”が俺から奪っているはず。

俺は会議室のドアに手をかける。もちろん

開けるわけではない。憑依霊と話すためだ。


(我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”トラン”、応じよ)


(ども、おばんですぅ。”トラン”ですぅ)

「……ゼウス」


 なんだか急にそう言いたくなった。詳しくは

言うまい。


(”トラン”多分お前がミコンと携帯電話を

 持ってるだろ? それ、返してほしいんだが)

(ああ、いいですよ。別に”デリトー”君みたいに

 マスターにたてつくなんてことはありませんから)

(そうか、悪いなこんなことに付き合わせて)

(いえぇ)


 そういうと会議室のドアがかちゃっと開き

中から俺のミコンと携帯電話が出てきた。

これで”トラン”も裏切っていたら一体俺は

これからどうしようかと思ったが、どうやら

”トラン”は俺側の悪魔だったようだ。


(しかし、よくこんな場所みつけたな)

(いやいや、私はあの学校に放たれてから

 別の似た場所を近くで見つけたので、そこと

 繋げていただけですよ。まぁ、そのせいで

 満月の日にしか活動できないんですが……)

(あ、満月の日に活動するのは”デリトー”

 じゃなくて”トラン”お前のほうかよ)

(ええ、私って触れないでも使える能力なので

 月の力だったりと別の力が必要なんですぅ)


 ”デリトー”がてっきり満月限定の悪魔かと

思ったが、そういう訳じゃないのね。とまぁ

そんなことはもうどうでもいいとして、俺は

早く”デリトー”をミコンに戻さないとな。


 床に横たわった”デリトー”に触り、つぶやく


(我、神前 滉樹の名によって告ぐ


 ちょwwおまwwwざまぁwwwwww)

(マスター、あんたってほんと空気読まないよね)

(”ロズ”そんな当たり強く(ののし)んないで)


 冗談ですとも。


(我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”エリトー”、我のもとへ帰せよ)

(誰よそれ!?)

(失礼、かみました)

(……マスター、それわざと?)

(かみまみた)

(わざとじゃない!)


 ……


(パクリはよくないな)

(ええ、やめましょう)


 閑話休題


 ってこれもパクリになるのかな?

いや、これも気にしていたら本当に

ままならないな。


(我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”デリトー”、我のもとへ帰せよ)


 ”デリトー”はそのままソーダがはじけるように

肉体が消え、ミコンに戻っていった。気絶した

悪魔にこうやってミコンに戻す作業は使える

のかと疑問ではあったが、どうやら原理上

できてしまうんだな。って違うか、”デリトー”は

さっきの段階で(あるじ)である俺に屈服してるんだ。

その精神が作用して俺の言うことを一時的に

聞いてくれるみたいなことになってるだけだろう。


 よし、これで”デリトー”にやることはやった。

あとは”トラン”をミコンに戻すだけか。とその前に


(”トラン”俺を元の学校に戻してくれ。じゃないと

 あの窓をパリンと割って、外に出るしかなくなる。

 そうなったら本当に大問題だろ? だから頼む)

(そんなこと言わなくとも、ちゃんと戻しますぅ。

 私ももうこの世界には飽きたんで、ミコンに

 戻してくれれば幸いですぅ)

(ああ、後でな)


 今”トラン”をミコンに戻したら、ここから

出る手段を失うからな。それとこの世界には

飽き飽きってか。この世界も甘く見られたもんだな。


(それじゃ、また”向こうで”)

(ああ、また向こうでな)


 俺はドアを開けた。そこはちゃんと俺の見覚えの

ある廊下だった。”トラン”はちゃんと元の学校に送り

届けてくれたみたいだな。


(我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”トラン”、応じよ)


(また会いましたねぇ。”たれ……トラン”ですぅ)

(”たれ”って言い間違えるなよ)


 ってあんたそれ知ってんのかよ。


(それじゃ戻すぞ)

(はい、また呼んでください)

(ああ

 我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”トラン”、我のもとへ帰せよ)


 そういうと、目の前から扉は消え去り

ただの壁になった。なんの変哲の無い、

いつも通りの廊下の壁だ。はぁ、

ひと段落終えて俺は一つため息をする。


「……あぁーっ」

(全く、マスター私のことをお忘れじゃなくて?)

(ああ、そうだなお前も戻さないとな)


 俺は今回で何人の悪魔をミコンに戻す

必要があるんだ。……そういえば学校祭は

”ゲイジー”、”ヴィーハ”そして”リア”の

3人が俺のミコンから出入りしたか。そう

考えると今回もそう特筆して多いという

わけでもないか。


(我、神前 滉樹の名によって命ず

 ”ロズ”、…………)

(…………)

(……どうした”ロズ”?)


 ”ロズ”の様子が違う。もちろん「異能」に

憑いてるわけで具体的にどこかがおかしい

なんてことはないのだが、何か俺に言いたい

そんな感じがした。


(マスター、前にわがままを聞いてもらった

 のは覚えてるわ。でもちょっと今回も

 お願いがあるの)

(お願い?)

(私をこのまま、これに憑いたままにさせて

 ほしいの。いえ、別に何か私情があっての

 ことじゃないわよ)


 二宮金次郎像の時のように「異能」にどこか

気を引いたものがあったというのであれば俺は

”ロズ”と前に約束した通り、ミコンに戻す

必要があるのだが、私情はないというから

ここはなんでかを聞かねばならない。


(憑いたままがいいのか?)

(ええ、ちょっとこの世界で調べたいことが

 あるのよ。もちろん私はそれ専門の悪魔

 ってわけじゃないわ。でもね、この学校に

 来てからどうにも変な感じがするのよね。

 だからこうやって何かに憑いたまま、この

 世界で過ごさせてほしいってわけ。前は

 動かない銅像だったからね。調べようにも

 限界ってものがあるのよ)

(ああ、なるほど)


 調べたいこと? それも悪魔が?


 詳しいことを聞きたいが、本人もこの様子じゃ

その詳しくこのことを理解していないようだし

問いただしても意味がないか。


(わかった。それじゃ俺から逆に頼みがある)

(ええ、聞くわ)

(それはな、うちの部活の大事なメンバーの

 持ち物なんだ。それで、その持ち主のことを

 守ってやってほしい。そりゃあできること

 と言ったら何もないに等しいだろうな。だが、

 上位種の悪魔である”ロズ”がそこにいるって

 だけでも他の悪魔にとっては脅威になりえる

 かもしれない。だから”ロズ”、持ち主を

 悪魔の立場から守ってほしいんだ)

(お安い御用ね。それで、どんな人なの?)

(…………悪魔よりも「悪魔」な奴だよ)

(あら、それは私好みじゃない)


 悪魔ではないし比較的、義堂は真面目な

部類に属してはいるが、どうあがいても

悪魔寄りではある。


(それじゃ頼んだぜ)

(ええ、私のことは気にしなくていいわ。

 そうね…………私、こんなことは私の専門外

 ってこともあって、時間がかかるかもしれ

 ないわ。だから…………そう、半年後に私の

 ことを呼んでくれればいいわ)

(わかった。覚えておこう)

(”また”忘れないでね?)

(お、おう)


 ”また”……か…… こんな半年程度しか経って

いないというのに俺は”ロズ”を含め”デリトー”

”トラン”、他にもいる悪魔たちのことを

忘れてしまっている。俺はこの過ちを二度と

繰り返すわけにはいかない。俺のためにも

俺の眷属のためにも。


 そして俺は「異能」に”ロズ”を憑かせたまま

屋上に向かい、今に至る。


「そんで、土壇場で持ってった俺の「異能」は

 役に立ったんかよ?」

「ああ、めっちゃくちゃ役に立ったぞ」

「あ?」


 そう、悪魔一人ぶっ飛ばすくらいに。


「ほいうかひまのひままではひしてたの?」

「月見団子を飲み込んでもう一度言え!」

「ごっくん……ふぅ

 ほいうかひまのひままではひしてたの?」

「いや、食い切れよ!!」


 変わってないよ!? わからないままよ!?


「いや、今まで何してたのココ? ずっと

 トイレにこもってたわけないでしょ?

 あるいはトイレが怖くて入れなかったとか」

「お前じゃないし、それはない」


 ここは何かごまかして部室にいたとでも……


 ……いや、ごまかす必要はないか。逆にここで

ごまかしても何も意味がないし、ここは真実を

伝えようか。


「いや実はな、さっきまで「秘密の部屋」に

 閉じ込められてたんだよ」

「え!? 秘密の部屋あったの!? どうだった

 巨大な蛇でもいた!?」

「ホグワーツはもういいよ!」


 どんだけ秘密の部屋にその希望抱いてんだよ!?

だとしても中で起きた”デリトー”だったり

”トラン”の事について触れるわけにはいかないか。


「そうだな、それで俺はかくかくしかじかで

 こうやって出てこれたんだ」

「四角いムーブがどうしたの?」

「ダイハツじゃねーよ」


 眼鏡かけた鹿の話はしていない。俺はあの

部屋で起きたことを起きた通りに話さず、

完全に俺の作り話に仕立て上げた。


 内容はこうだ。


 まず俺は廊下で秘密の部屋を見つけた。

そしてつい、ふと入ってしまい、そこに

閉じ込められてしまう。そしてその中に

いた部屋の主と対面したのだが、そのとき

義堂から借りていた「異能」にかけられた

除霊の”まじない”に驚いて、その部屋が

消え去ってしまった。俺はいつの間にか

その部屋の外にいて、秘密の部屋も消えて

なくなっていた。そしてその時にその部屋の

主が驚いてこの学校から出ていくところも

ちゃんと確認してた。


 と、こんな感じの一つの作り話をした。

これが事実だと余裕で通じるうちの部活の

メンバーの脳細胞が不安になってくるが

そこは気にしないでいこう。


「……とまぁこんなことで俺一人ではあるが

 無事、その秘密の部屋を抜け出すことができ

 ”学校七不思議”の一つ「秘密の部屋」を

 ついでに解決しちゃったってわけだ」

「本当に私いらない説出てきたわね」

「……」


 俺はうなずこうかと思ったが、さすがに

それをやると可哀そうを通り越して、みじめに

見えてくるからやめた。これでも部長なんだ。

敬意というものをはらっておかないと。


「なるほどな、それで俺の「異能」が活躍

 したってことか」

「ま、そうなるな」

「てっきり、そん部屋ぶち壊して出てきた

 なんてオチかと思ったぜ。だと思ったら

 んな武器らしい使い方してねぇのかよ」

「いやバール自体武器じゃないでしょ」


 いつからバールは鈍器にカテゴライズされた?

それに部屋を壊して出てきていたら、うちの学校

ではなく「銅栄高校」で器物破損の被害が出るぞ。

だが、義堂が望んでいた「異能」の武器らしい

扱い方はちゃんとした。結果として”デリトー”氏

一名が瀕死の重体となっている。


「ま、よかったよかった」

「ってミコ、俺が来なかったら電話しろって

 言ってたよな? なんで俺に電話しなかった?」

「それはもちろん月が綺麗だから見惚れてて」

「ああ確かにきれいだな。でも俺が無事で

 いられたかもその電話があるかないかで

 けっこう変わってたよ!?」

「まーまーまー、落ち着いて落ち着いて。

 ほら、団子とお茶」

「落ち着けるか!?」


 と言いながらミコからお茶と月見団子を

受け取り、おいしく召し上がる。今日に

限っては本当に月見をやるべく用意してきた

ようで、下にはピクニック用の大きな

マットが敷いてあった。それに座り一息


「あー落ち着く」

「でしょー」


 でしょー? じゃねーよ。と言いたいが

俺もミコと義堂に嘘をついてるわけで

これ以上、ミコを責めるのもどこか悪い

気がしたため、何も言わず俺は団子を

もきゅもきゅと音を立てて食べた。


「あー、団子ってこんな美味かったか?」

「えー、ココおじさんくさー」

「……おじさんですからね」


 リアルに30代よ私。でもこんなきれいな

月の下で上を見上げながら食べれば誰だって

うまく感じるってものだろうな。


 それぐらい今日の月は綺麗だ。

 絶好の「憑き」日和だ。



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