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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
LDK
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66.部屋を明かそう

 前回のあらすじ


 俺は、ミコと義堂とともに再び夜の学校に

探索に向かった。そして俺はそこで唯一、

”学校七不思議”の一つ「秘密の部屋」を

みつける。俺はそれの解決に向かうべく

一人その部屋に乗り込んだ。そしてそこに

いたのは俺の眷属である”クリエト”で

俺の眷属の大幹部であった。”クリエト”は

俺のミコンに戻ることを断り、俺とそこで

敵対することとなった。


 だが俺にとって別に、問題は無いはず

だった。はずだったというのは”クリエト”の

策略で俺のミコン及び、携帯電話を奪われ

”クリエト”への攻撃手段がなくなったのだ。

さらには、この部屋自体が”クリエト”の

手が及ぶ範囲であるため、この部屋では

”クリエト”の思うように動いてしまうときた。


 そのため俺は話し合いによって”クリエト”

から隙を作ろうと試みたが、失敗した。


 しかし、ここで俺は一つの兆しを見つける。


「”種”というのは?」

「まぁ聞け”クリエト”。まず俺がお前に思った

 最初のことが「俺がそんな強大な悪魔をそんな

 易々と手放すなんてことをするのか」だ。

 お前が”クリエト”だということに俺も最初は

 驚いたが、話しているうちにどこかおかしな

 部分があった」

「あら、そんなおかしいところなんて……」

「まぁ、特にさっきの俺に言いかけたセリフだな。

 さっきお前は何て言った?」

「そりゃあもちろんまた会いましょうと」

「いや、それ以外にも言ってるぞ」

「ははぁ、申し訳ありませんが覚えてないですね。

 そんな気にして話してませんでしたから」


「お前「次はお茶を出しておこう」と言ったな」

「ああ、はいそうですねぇ。その通り、次の満月の

 夜にはお茶を用意しておこうt」


「おかしいな、ここにお茶があるのにか?」

「はい?」


 俺は椅子を立ち上がり、会議室の端に向かう。


「これはな、大抵の会議室には置いてあるもの

 なのだが、「ティーサーバー」というんだ。

 これは知っていたか?」

「ええ、もちろん。なんて言っても、私がこの

 学校のある部屋を模して作ったと言った

 でしょう?」

「だったら、これからお茶が出るってことは

 知らないわけはないよな?」

「え」


 俺はティーサーバーからお茶を一杯出した。

中身はあるようだ。


「ほら、こうやって出すことができるんだけど

 こんな便利なものがあるのに、なんでお前は

 「ここにお茶がない」なんて言ったんだ?」

「それは」

「いや、言わなくていい


  読めなかったんだろう? これを。

 「緑茶」と書かれた日本語を。


  ここで見つけたものを模したにしては、何で

 こんな読めない字まで写す必要があったんだ?

 俺にはわからないんだよ」

「いえいえ、私にとって「人」の字というのは

 どんな意味合いを持っているかなんて、一切

 気にも留めてませんが、意外と大切な意味合いが

 あるかと思い、こう写したんです」


「へーそうなのか。


  うちの学校にこんな「ティーサーバー」なんて

 ものは存在しないはずなんだけどな?ならこいつは

 どこで見たものなんだ、クリエト??」

「は?」


 残念ながらうちの学校は、けちな関係でそんな

サーバーごときに金をかけない。もちろんお茶を

出すと言われれば、人がお湯を沸かし、カップに

ティーバックを入れ、ゆっくりと蒸らしながら

作り上げるという原始的なものだ。そして、俺は

学校の会議室に限らず「ティーサーバー」

たるものは校内で見たことがない。


「ここにお茶があるのに、お前はこの場にお茶は

 ないと言い張ってた。それはこの字をお茶と

 読めなかったせいだと思いたいが、これは

 違うよな? さっきからお前が俺に合わせて

 ”座らない”のもそれが理由だろ?」

「……」

「ここはお前が作った空間だと言ったな? なのに

 わからないものが多い。それにさっきから

 椅子に座ろうとしないところや、この部屋の

 物に”一切”触らないのも違和感がある。なんでか

 ずっと考えていたが、このお茶を見て決断が

 出たよ。


  お前、この部屋のもの触れないんだろ?


  自分で作ったものを触れないっていうのは

 どう考えてもおかしい。なら結論は一つしかない。


  この部屋は、お前が作ったものではない。

 この部屋は誰か別の奴が作ったものだという

 ことだ」


 そう、この部屋は学校の会議室を見て作った

わりに共通点がなさすぎるのだ。ならばここは

見て作ったわけではないというしかないだろう。


「いやいや、それはおかしな話ですよ。ここは

 私が作った空間で、私の長い記憶の一部から

 搾取(さくしゅ)して作り上げたと言っても通じる話で……」

「ならそこの「ティーサーバー」からお茶を出して

 飲んでみろよ。そうしたら信じてやる」

「それは」

「いや、そんなことをしなくてもいい。もっと

 これを裏付けるものがあるだろ」


 俺はお茶を飲み切り、閉め切ったカーテンに

向かう。そう、開けてはならないカーテンだと

”クリエト”が言っていたあのカーテンだ。これは

さすがに止められる。が、ここで止まるわけ

にはいかない


「マスターそれは……っ!!!」


 シャッ!!


 …………


「…………」

「…………なーんだ。ちゃんと外の世界も作って

 あるじゃないか」


 カーテンの外には外があった。言い方がよく

わからないがカーテンの向こうには何もないと

豪語していたというのにカーテンの向こうには

満月が煌々と輝く夜の街があったのだ。


「といってもさすがにここまでのクオリティの

 代物を作れるほど”クリエト”は万能ではない。

 ならこれはなんだ? 説明してみろ」

「はい、こちらも指摘を受けて今の一瞬で

 作り上げましt」

「だーかーら言ってるだろ? そんな”クリエト”は

 万能な悪魔じゃないって。それができるなら

 お前は悪魔じゃなく神だよ神。それにこの景色は

 見覚えがあって見覚えがないんだよな」


 その外の景色は実に俺が住んでいる街に似ている。

しかし、どこか俺がいつも見ている雰囲気と違う。

が、これも大体の予想なんてのはついていた。


「俺が今いるのは、まとめるとお前が作った学校の

 会議室ではなく、別の学校の会議室で、しかも

 そこからは俺の町が見える。これに合致するもの

 なんて一つしかないだろ」

「一つ?」


「ここは「銅栄高校」だ。俺の街にある学校の一つで

 その程度の距離なら別に、悪魔が俺の学校と

 リンクさせることぐらいはたやすいだろう。


 そうだろう? ”トラン”?」

「”トラン”……と言いますとあの悪魔の?」

「ああ、知らん顔しても無駄だぞ? 俺を別の場所に

 移すなんて芸当ができる悪魔なんてそいつ

 ぐらいしか思いつかないよ」


 ”トラン(英語:TRANS)”


英語の意味としては「転移」である。厳密には

「横切って」「越えて」「通り抜けて」なんて意味が

あるが、言ってしまえば「どこか別の場所に行く」

ということだ。さらに言えば「テレポート」という

ほうが正しいかもしれない。この悪魔は自分で

ゲートを作り出し、そこを通じて別の場所へ

ワープさせる奴だ。そしてそいつがこの部屋と

繋げているとなれば色々と説明がつくことが多い。


「この部屋は”トラン”によって俺のいる学校から

 この「銅栄高校」のある会議室に繋げられている。

 そうしたら、この景色についても説明はつくし、

 お前が作ることができない「ティーサーバー」の

 ことについても説明することができる。

 どうだ? 正解か?」

「…………」

「それともう一つ、説明がつくものがあるよな?

 まぁ、それがお前なんだけど”クリエト”のように

 部屋を作り出さず、ここに滞在しているだけの

 悪魔で、できることと言えば一つ


 「記憶を消すこと」だけだったな。


  それならまだ別の悪魔が考えられるだろ。

 なぁ? ”デリトー”?」


 ”デリトー(英語:DELEAT)”


 デリトーと語順がおかしくなっているがなんて

ことはない。デリート、「消去」という意味だ。

ここで豆知識ではないが、デリートというのは

消去という意味合いがあるのは承知の事実では

あるが、ただ単に「消える」なんて言葉で使う

ことはない。それに消えるという意味の英語と

言っても実はかなりの数の表現があるが、その

どれにとってもGO AWAYだったりと二語で

意味合いを強くしてから使っているのだ。対し

デリートにはそんなものはいらない。それだけ

消すという意味合いが強い言葉だということだ。

というか、デリートなんて言葉自体がデジタルな

用語のため使える機会が少ないというのも

正解でもある。


「お前は”クリエト”ではなく”デリトー”

 記憶を消す悪魔だ。そんな空間がどうだとか

 なんて言うのは、自分を強大化させるための

 見栄っ張りにすぎない。これがこの

 秘密の部屋の「秘密」だよ」

「おお!! さすがはマスターですね!


  その通り、私は”クリエト”なんというたいそう

 大それた悪魔ではありません。マスターの言った

 その通り”デリトー”です。それにしても

 お見事ですね! まさか”トラン”を使った

 トリックを見破るとは、さすがでございます。


  ですがマスター。あなたは勝った気で

 いらっしゃいますが、あなたから武器を

 奪ってあるということをお忘れでしょうか?

 私の能力は確かに「記憶を消すこと」ですが

 それもマスター、あなたには効いたんですよ?


  そう! 状況は変わってなんかいません!

 あなたはここから出るにはやはり私を諦める

 ほかないんです!!」


 そう、俺は一度”デリトー”の能力を受けている。


 いつかというと俺が殴りかかった時だ。俺は

その時”デリトー”を殴ることができなかったが

それは空間がどうこう関係ないとなれば、これこそ

あの悪魔の力なのだ。そして俺の殴れなかった

わけも察しがついた。


 あれは「殴らなかった」のではない。

 「殴るのを忘れた」のだ。


 多分、その記憶の消去に必要な条件が俺の

憑依霊との会話みたいな「接触」なのだろう。

そして俺は”デリトー”に殴ることで接触した

ため俺から「殴る」ことを忘れさせられたのだ。


「だから最初に武器を」

「ええ、あなたが素手で殴ってくると踏んで」

「ほぉ……」


 つまり、俺は何か遠距離から戦える何かを

持っていなければ”デリトー”に一発かます

事すらできずに終わってしまう。


「さぁマスター! 大人しくこの場から

 立ち去ってもらっt」

「”デリトー”お前、前にこの部屋から出たのは

 いつだ? いや、部屋から出ずとも部屋の

 外の声に耳を傾けたことは?」

「……え?」

「だからお前は甘いんだよ。俺がこんな手ぶらで

 敵のテリトリーに踏み込むかと思っていたのか」

「ですが、マスターの手には武器は……」


「もういい


  もう消す必要はない。ありがとう”ロズ”」

(全く、なにこれ? 臭いったらありゃしない

 んだけどこれ?)

(これは、ちょっと細工したんだよ)

(細工ねぇ……へぇー)


「!!!!??」


 俺がそういうと、手元にじわじわと赤いボディが

姿を現しだした。姿を現す、というか消えていた

ものが見えるようなっているだけだが。


「そ……それは……」

「俺が事前に”ロズ”を使って隠しておいた武器だ。

 これはさすがに”トラン”も気が付かなかったか」


 今は俺が”トラン”を通ってこの場に来た時に

”トラン”によってミコンだったりを奪われている。

だが、同じ悪魔の力を使った”ロズ”の透明化の

能力で消したものは分からないようだな。

うちの部長はそんなのお構いなしに透明化を

見透かして魅せたけど。


 そして現れたものは赤く細い金属棒ではあるが、

殺傷能力を高めるかのように先端が鋭くとがった、

俺たち「異能部」の部名にも使われている名器。


 「異能」


 ここに来る前に、義堂から拝借しておいて

正解だったな。あとで義堂に返さねば。


「ほらよ、これで武器はそろった」

「え、ええ……ですが、それはただのバールでしょう?

 そんなものが私に効くとでも?」

「と思うじゃん? よく見ろ。いやよく嗅いでみろと

 表現した方がいいかな」

「よく見ろと言われましても………

 ……!?」

「おお、さすが俺の眷属。この距離からもこれは

 気が付くんだな」

「マスターそれは…………っ!?」

「これ? そうだな……


  ”神のご加護”といった感じかな?」


 実は「異能」もあの神社にもっていってたのだ。

というか義堂が「異能」を肌身離さずに常時

持ち歩いていただけなのだが、俺がこれを

見てこの「異能」にも対霊の施しをかけさせて

もらっていた。しかし……


「ですがマスター? その程度のものでは

 私たちは倒せないというのは分かっている

 でしょう?」

「ああ、わかっている」


 そう、相手は俺の眷属であり”ロズ”でさえ、

なんか嫌な感じがするというだけの力程度に

過ぎない。別に脅威となりえるわけではないのだ。


「そんな貧弱な武器で私に挑もうなんt」

「だがな”デリトー”、どんなに弱いものでも扱い

 さえよければ強者となりえるってものだ。

 お前は隕石が元々、小石程度の大きさだという

 ことを知らないんだな?」

「は?」


 俺は「異能」をブンと振り”デリトー”の頭に

直撃させる。普通の人間なら頭一つ吹き飛んでも

おかしくはないのだが、相手は俺と同じ悪魔だ。

頭が吹き飛ぶなんてことはない。だとしても

普通は効かないはずなのだが、ちょっとでも

施しがかかっているなら叩く程度はできる。


 だがダメージはある。俺の腕力はあるほうだと

言ったがそれは俺が悪魔であり、その力を極限に

引き出し殴りかかれば、どんなに貧弱なものも

強大な威力になるってものだ。


 そう”デリトー”は予想以上にダメージを負い

その勢いのまま吹っ飛んだ。それもかなりひどく、

立っていた場所から壁に打ち付けるくらいに。


「ぐっ…………!!」

「ほらな? 効いただろ?」

「ま、マスター! あ、あなたは私のことを

 忘れていました。ですから私がこの場で

 自力でやって行こうとしていたというのに

 こんな急に現れて、私を殴り伏せて一体

 何がしたいんですか!!? あ、あなたは

 私のことをどうしたいんですか!!!?」

「それは一つしかないと言ってるだろ?

 お前をミコンに戻し、この問題に終止符を打つ。

 あるいはお前をここで消し去り、事の

 顛末(てんまつ)を図ること。どのみち問題解決だけだ、

 俺の目的は」

「そ、そんなの、自分ががやったことを自分で

 終わらせているだけでしょう!? そんな

 自分勝手なのが許せるとでも!? あなたは

 悪魔の何もわかってませn」

「お前もだろうそれは、”デリトー”!」

「!?」

「俺は最初は殴るつもりなんてなかったさ。

 殴らずに「武器」を見せつけて脅そうかと

 思っていた。


  だがお前は俺の前で言ってはならない

 ことを言いやがったんだよ!!」


 俺はさらに「異能」に力を込め、”デリトー”を

再びぶん殴った。また”デリトー”は壁に体を

打ち付け「ぐは」なんて言葉を吐いて、そのまま

のびてしまった。が、俺は続けて言う。


「お前はこの場で自分を「神」だとほざいた。


 悪魔は神になんてなれない。


 「神」を名乗れるのは神か

 どうしようもない愚者か、マザーテレサだけだ。


 それがお前の「罪」だよ。


 ”デリトー”」


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