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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
LDK
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64.部屋に入ろう

 今日は満月


 満月というのは実に妖艶(ようえん)完美(かんび)なものだ。

そしてそれは人間の感性に彩られた模造品の

枠になど収まらず、悪魔や生霊の類にもその

美しさというのは分かるもの。だからこそ

満月の日というのは人間無勢にとっても、悪魔や

霊などの有象無象の者どもにとっても、よき

日となる。


 それにこれはデマっぽくはあるが

満月の日には事件が多いという都市伝説も

存在する。アメリカの精神医が調べたところ

事件の数は他の日に比べて1.4倍にも

増え、放火事件に関していえばある町では

2倍に事件の件数が増えるそうだ。これには

深く理由がないかと思いがちだが、悪魔の

俺からしてみればなるほどなと思えるデータだ。


 前にも言ったが、満月で悪魔の力は強くなる

という話が関連しているのではないかと

俺は踏んでいる。というのも満月にそうやって

増えているとなれば何かしらの外部からの

干渉がなきゃおかしな話さ。ということは

その外部干渉が悪魔や霊がやっているとなれば

理解ができるということだ。満月に合わせて

悪魔や霊の活動が活発になり、さらにそれに

合わせるかの如く、人間に作用した悪魔がより

劣悪な事件を発生させる。この循環が起きやすく

なっているのだと俺は考えた。


「……」

「……」

「……あ、話し終わった?」

「…………終わったよ」


 ということで俺たちは再び夜の学校にいる。

恒例の夜の学校の探索だ。


「なんでさぁ、満月ってそんなに悪く言われて

 いるの?」

「いや、悪くは言われてないだろ」

「だって狼男とかって満月で悪くなったりと

 満月の日は何かしら悪いことが起きるって

 風潮が海外にはある気がするんだよ」

「あーはいはい」

「それにしても日本ってなんでも芸術に昇華

 させようとするのさすがだと思うよ。十五夜

 だったり月見だったりと月を見るイベントが

 盛りだくさんじゃん。それに藤原道長の…………

 えーーーっと……あれ、ほら」

「”この世をば

   我が世と思ふ

    望月の

     欠けたることも

      なしとおもえば”か?」

「あ、それそれ……ってまさかギドー君が答える

 とは思わなかったけれど……」

「こんぐらい知ってて当然だろ」

「さ、さいですか……」


 改行使って魅せてきたな義堂。だがこれは小説で

そんなことをやっても意味がないのだよ。作者が

こっちの方がかっこいいって言って、こんな

レイアウトにしただけなんだけどな。


「それでさ、ココの意見だったんだけどなんで満月に

 ”学校七不思議”って起こりやすいって思ったの?

 だってここ日本よ? ジャポネーセよ? さっきも

 いったけど日本の霊とかってのは満月がどうこう

 ってあんまり関係ないと思うんだけど」

「ジャポネーセってなんだよ。そりゃあ、もう日本の

 常識にとらわれない霊だっているかもしれないし、

 ほら、狼男とかもそうだけど満月が原因で

 現れるって可能性も無きにしも非ずってことだ」

「ふーん」


 というか俺含め俺の眷属たちはもろに日本の

悪魔や霊の領域には属さない奴らばっかりだ。

俺が学校に偶然”和式の悪魔”を放り込んでない

限り、それに該当しないなんてことはないだろう。

あるいは本当にこの学校には俺が関与せずとも

起きている”学校七不思議”があるのか……


 いや、その可能性の方が高いのか?


 前の”ノーティ”の件で俺たちが知らない間に

こうやって別枠の問題が持ち上がっていると

いうのだ。その一つが”学校七不思議”に繰り上げ

されたというのもあり得ない話ではないよな。

つまり、俺が関与せずとも問題となってる

”学校七不思議”もあるということか。もちろん

「見つめる女」「トイレの花子」については

俺の眷属にいるとは考えられないが、他にも

それに該当するものがあるかもしれない。


 ま、それも俺が直接確認すれば問題がない

という程度の問題か。


「とりあえず、前とおんなじ感じで調べれば

 いいか?」

「いいんじゃない? それしか方法なさそうだし」

「おう」


 前回というのは、言わなくてもわかると思うが

生徒会室に鍵を戻しに行ったときのことだ。

もちろん、今回は生徒会室には用事はないため

行く予定はない。


 俺たちはひとまず、一階の探索を始めた。


 が、収穫あらず。


 そして二階に探索拠点を移す。


 が、収穫あらず。


 いや、ここまではどこか予想はついていたこと

ではある。”学校七不思議”の大半はここ3階に

集中しているのだ。この3階には「秘密の部屋」

だったり音楽室があるから「消える音楽室の肖像」が

この階にもあるのだ。さらに前回は”ノーティ”が

この階の女子トイレにいたとなれば、この階に

”学校七不思議”が集中していると考えらえるし

探すには一番、骨が鳴るような場所だ。

そして……


「え、また私取り残されて暗い女子トイレを

 探させるパティーンですか?」

「ああ、俺たちがその間にこの階の探索を済ませる

 パティーンだ」

「えぇー、またー……」


 と言っても、探す場所は限られる。そこまで

長くはならないつもりだし、そこまで怯える

必要はないぞ。


「んじゃ、義堂行くぞ」

「うわ、辛辣だ!!」

「大丈夫だって。俺たちには御前の力を凝縮した

 強力な加護がついてるんだろ?」

「あー、そう、だ、ね。うん! そうだ、なら

 大丈夫だ! うん、大丈夫だ…………うん……」

「自分に言い聞かせてる時点で負けじゃねぇか?」


 これでも巫女かよあんた。いや、ミコ姉を見た

後じゃ全然、ミコは巫女らしいわ。基準を

ガッツリ下げられたってだけだがな。


「それじゃあな」

「わかったー」


 声ふるえとんなぁ…… もっとシャキッと

しろよ。そうじゃないと本当に霊がそこに

つけ込んで憑きにかかってくるぞ。

襲ってくるだけ、霊感ゼロには全く意味が

無いけど。


「それにしても満月だからって、んな簡単に霊が

 出るってもんなのかよ」

「そういわれてるだけで、違うかもしれないさ。

 確率の問題だよ」

「そうか」


 先に言っておこう。というかタイトルで察しが

ついているかもしれないが、その確率に当たった。

そう俺は「秘密の部屋」を見つけたのだ。


 そこは廊下の奥の奥の方になるのだが、俺は

この学校にはなんだかんだ言って半年、いや

半年と3か月も過ごしている。ならばそこに

何もないというのは承知の事実である。が、

そこにはあったのだ「秘密の部屋」が。


「あ”、どうしたんだよ神前」

「いや、あれ見ろよ」

「だぁからなんだって言ってんだよ!」

「え、いやなんだって言われても、ほらあそこに

 部屋が見えないのか?」

「だぁがぁら”ぁ!! それがどこにあんだよ!」

「……ああ」


 義堂に一応、そのことを伝えたのだがそれが

見えないということは、あれは義堂の霊感では

見えないものなのか。無理やりここは「ある」と

突き通しても意味がないため、これ以上は義堂に

そのことを押し通すのはやめよう。


 だが、俺は見えてしまった。そして俺にしか

この場で解決できる人材なんてのはいない。

ならばここは俺が動かないわけにはいかないか。

いや、まずはミコと合流する方が先だな。


「探したけど、”何もない”からミコのとこに

 帰るか。それでまた、屋上にでも探索して

 終わりにするか」

「おう、そうだな」


 俺はひとまず、あの「秘密の部屋」はスルーして

女子トイレまで戻って来た。その間にあの部屋が

消えていたらどうしようかと思うが、それは

それで仕方がなかったという解釈でいい。


「あ、おかえり」

「……ずいぶんとスッキリした顔してるけど何か

 あったのか?」

「……」


 ……なんだ? こっちを見ないで何黙ってるんだ?


「……」

「……」


 ……あぁ、これは俺がデリカシーないだけだな。

これはこれ以上話さないほうg


「おおトイレしてやがったのか」

「ギドー君もデリカシーないよね……」

「んな別に恥ずかしいことじゃねぇだろうが」


 義堂言っちゃうんかい。もっとさぁ、相手は

こう見えても女の子なんだからさぁ…… ってあれ?

ミコさん!? 今ギドー君”も”って言った!?

”も”って俺それ以上言わなかっただけまだ

デリカシーあると思うけど!!?


「いや、ココにはないよ」

「え!? なんでそんな断言するの!?」

「…………


  こんな暗いところに女の子一人

 取り残すところとか? 後、人のこと

 その気知れずにじろじろ見たりとか?」

「はい、それはありませんね、はい……」


 その通りだ。認めよう、俺にデリカシーの

かけらとして持ち合わせていないことを。

今までの行動のすべてを否定された気分だ。


「それで見た感じ、お互いに成果はないと」

「そうだね…… ほらぁ、満月だからって心霊現象が

 起きやすいってわけじゃないんだってば」

「そうだなぁ」


 と言いたいが俺はその心霊現象をつい先ほど

見つけてしまったんだよ。これから俺はあれの

解決に向かう必要があるな。それも俺のミコンの力を

使ったりとあまり見られたくないことをする

可能性もある。


「ミコ、義堂。俺もちょっとトイレに行きたいから

 先に4階の探索をしておいて。俺も後で

 合流するからそのまま屋上に行ってても

 いい。確かさ、ミコついでに月見もするんだって

 言ってなかったっけ?」

「あ! そうそう、そのためにほら! 月見の団子

 練ってきたからあとで食べよ。これは甘くして

 作ってないからギドー君用ね」

「なんだ、優しいじゃねぇかミコ」

「えへへ」


 義堂がぐりぐりミコの頭を撫でまわしてる。

ミコの頭が若干ぼさぼさになったが本人は気に

していない風だ。それにミコの髪質はかなり

よく、パンテーンのCMに出れるんじゃねぇ?

と思えるほどなめらかヘアーだ。俺もだてに

人のことじろじろ見てませんからね。髪もその

見るポイントの一つってことさ。これじゃ

ただの変態にしか見えなくもないけど、それは

もうかつての暇だった俺に対して言ってくれ。


「それじゃ、一人でトイレ頑張ってね」

「こどもちゃれんじか!」


 あれか! 青いボタン押すアレか!?


「おしっこかな? うんちかな?」

「うるせー!! とっとと行け!!」

「でたーーーーーーー」

「もういいわ!!」


 これ……怒られないかなぁ。ってかれこれ

何十年前もの前の代物だから、知ってる人自体

いないだろうから大丈夫だろ。ミコは知ってた

らしいけど、なかなか古参なんだなあいつ。


 そして俺を残してミコと義堂は3階を後にした。

一応俺が全然屋上に来る雰囲気がなかったら電話を

一本かけてくれと伝えてあるから俺の身に何か

あっても大丈夫だろう。


「ふぅ……よし」


 俺はトイレなんかに行かずに、そのままさっき

見た部屋の場所に向かった。というか俺みたいな

悪魔にトイレをする概念はない。「悪魔」よりか

「アイドル」の概念みたいに聴こえてしまうが。


 その場所に着いた。同じ3階であるためそこまで

行くのに時間はかからない。そしてもう一度

じっくりとこの部屋のドアを見るとこの学校の

他のドアと同じ形をしているが、これは違う。


 ドアに模した「ゲート」だ。


 「ゲート」と言っても色々と種類があるが

これは人為的に作られたものではないのは悪魔の

俺の感覚で分かる。だが、この「ゲート」が

何のゲートなのかはわからない。そこまで

分かれば苦労しないのだが、俺だって万能な

ヤツではないというわけだ。それにこんな

ドアだけ見てても解決するってものでもない。


 俺はここに入る必要がある。

 そこで何があろうと、何が起きようと。


 俺はミコンを取り出し、名を呼ぶ


「*****************」


「”憑依召喚・ロズ”」


 よし、これで準備はいいだろう。


 俺はそのドアを開けた。中に何がいても大丈夫な

ようにはしておいたが不安であることは変わらない。

俺はその部屋に一歩一歩と足を踏み入れる。


 ……


 中は学校の会議室のようだが、こんな部屋は

うちの学校にはない。やはりここはあの「ゲート」

から送られた別空間だということか。そして

そこの閉め切ったカーテンにむかってピンと

立つ白基調のスーツとシルクハットの男が一人。


「やぁ、お客さん。”私の空間”へ」

「……ここは」

「はい、ここは

 私の!

 

 私による!!


 私のための!!!


 私が作り出した空間です!」


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