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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
ナン・マイ・ダー
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58.神社を巡ろう

「ダニィ!? 小恋! この者たちが儂の

 霊障予防の力を受けたいというものかぁ!」

「そ。前に言ってた人たちで私のいる部活の

 友達よ。それと、そろそろそのテンション

 やめても問題ないよ、おじいちゃん」

「おお、そうか。やはり年を取るとこれは

 疲れるわい」


 あ、あれ演技だったんだ。あのテンションの

まま突き通されると俺たちも疲れかねない。


 今はミコとミコのおじいちゃんと一緒に

あったかいお茶を飲んでいる。正直に言うと

山をヒーヒーいいながら登った後のこの

熱いお茶は拷問かとツッコみたかったが、

これも優しさなのだろう。


「それで? (わし)に用があるっていうのは

 そこの二人か」

「あ、はい、よろしくお願いします」

「…………」

「?」

「…………


  貴様「悪魔」か」

「!!?」


 何!? なぜバレたんだ!!? 今の俺は

ミコンもなく、それらしい要素は見たところで

わかるはずない。悪魔としての頭角を現す瞬間が

あるとしたら、血を飲むときぐらいだろう。

だが、現状でばれてしまったのは事実だ。どこか

隙を見て逃げ出さn


「いや、前に部室で「我こそは最強の悪魔!」

 って言ってただけで、そんな真に受けないで

 いいよ。そっちに興味があるとは思ってたけど

 自分にその気があったとh」

「おい、御前小恋(みぜんここ)。ちょっと後で表出ろ」


 この巫女(アマ)!! 俺の最悪の黒歴史を堂々と

何、家族に言ってんだよ!! それと、あのセリフ

だけは俺が言ったことばれてないって思ってたのに

結局ばれてたのかよぉ、畜生!!


 それはそうとばれていないようで助かった。が

それを抜いて何か大事な何かを失った気がする。


「まぁ、儂にかかりゃ別にその予防ってもんをかける

 ってぇのは問題はないが、ちいと準備せないかん

 と言っても、まぁ2時間もかかるか、かからんか

 そんくらいじゃろうな」

「あれ? それにそんな時間かかるんだっけ?」

「なーに、普通はかからんよ。ただ、話を聞くと

 一回だけ耐えればいいってもんじゃあるまい。

 なら、じっくり準備して強めのもんをかけた

 ほうがよかろう」


 俺は予防接種を受けたいと頼んでいないし、

元々俺自体が霊みたいなものだからそんなものは

全く効果がない……と思う。実際俺もこんなこと

やったことないし本当に効果が出るかもな。

前にミコから御守(おまもり)をもらった時はさすがに心配

一つとしてしなかったが、ここまでガチで

(かみ)御加護(ごかご)を俺にかけられたらどうなるんだ?


 と言っても俺は上位種でこの程度のことで

”大変な目”にあうとも考えられない。いや、

このおじいちゃんがこの一族の最終兵器であり、

俺ですら凌駕(りょうが)する存在であれば話は別だが。


「小恋、三好を呼んで来い。準備の手伝いを

 させる」

「いや、それが……お姉ちゃん、(じじい)とは今は

 話したくないとのことで」

「だから呼ぶに決まってんじゃろうが! そう

 易々と(わし)から逃げれると思ったら大間違い

 じゃぞ! また要らんもん買ったことはもう

 バレておるっちゅーに」

「やっぱりまたかお姉ちゃん」


 どうやらミコ姉はこの家で色々と問題はしこたま

起こしているようだな。家の方針というか巫女と

しての生き方を度外視したような……


 これは多分姉だけが「家の方針合わない」って

言って家飛び出すパターンだな。テンプレですわ。

そして、親戚の葬式か何かでまたここに戻って

きたときに「やっと死んだなぁ畜生(ちくしょう)、バカ(やろう)」とか

言ってその場を去るところまで予想がついた。


「ココ、最近「サマーウォーズ」見た?

 あるいは「海街ダイアリー」でも可」

「……金曜ロードショーで「サマーウォーズ」が

 やってるので、見てました……」


 なんでこういうときの心は読んでくるかなぁ。

しかも妄想してるときに限ってさぁ。それと

「サマーウォーズ」めっさ面白かったです。


(わし)はそん準備とかやるから、小恋、三好を呼ぶ

 ついでにお友達を案内でもしたらどうだ?」

「あ、そうだね。って言ってもそんな2時間も

 時間つぶせるほどうち広くないでしょ」

「そんなの気合と仏の力で何とかしれってんだ」

「仏の力って乱用していいものなの!?」


 最後のセリフは俺だ。この小説のツッコミ役の

(さが)がここで出てしまった。


「それじゃこの神社で見たいものとかある?

 と言っても”宗教上の理由”で入れなかったり

 ”入ったら(たた)りがある”とかで進入禁止だったり

 するからいけるところほぼほぼないけど」

「なんでここでネガティブアピールするんだよ」


 逆にそのいけないところ行ってみたいわ。


「まぁいいか、それじゃあ色々と案内するわ。

 それじゃおじいちゃん、よろしくねー」

「いや、ほとんど三好に任そうと思っとるから

 別に(わし)が頑張るとこはないよ」


 俺と義堂はミコに連れてかれるまま、ミコの

おじいちゃんのいる部屋から出た。


 ここでいうのもなんだが、ミコのおじいちゃん

……いや、あの”御前(みぜん) 剛隆(ごうりゅう)”という老人は確かに

かなりの実力者ではあることは、悪魔である俺

から見てもわかる。さっきも使った俺のスーパー

パワーである「霊感診断」によると霊感は

82だった。ミコ姉を見て俺の霊感メーターの

最高値を更新したばかりだというのにもう

更新されてしまったのだが、こうやって数値

として力量がわかるのは便利だな。それは置いて

おいて82とか77あったとしても俺の100を

基準にしているため俺の100分の77か82

程度の力しかない。これには少々安心した。


 ちなみに、俺を「半人半魔」にした「悪魔」は

100を軽くとおりこして300から400

あった記憶がある。もう20年も昔の話だ。

忘却の彼方にあってもおかしくはない。


「んー、とりあえずお姉ちゃん呼びに行くから

 住居スペース的な場所に行こうか」

「ああ、そんなとこあるのか」

「そうだね、軽く50人くらいここに住んでる

 からね。そういう場所も必要でしょ」

「なんか寮みたいだなここ」


 と、こんな話をしていると、ミコの言う

居住スペースに着いたようだ。さほど歩いて

いないが、ここは神宮本堂とは異なり別館で

ここもやはり(おごそ)かな様式の作りの場所だ。

学校から神宮の全貌が見えると言ったが、

本当はもっとそれ以上に御前神宮の敷地は

広かったようだな。


「えーっと、ここが私の部屋でこっちが

 パp……お父さんの部屋で」

「今、完全ボロだしかけただろ」


 ここは廊下なのだが点々とふすまが見える。

これ一つ一つが部屋になっているのだろうな。

そしてミコは今、ヒロインらしく可愛らしい

一面を魅せた。これだよ! ラノベヒロインの

あるべき姿っていうのは!!


「で、ここがお姉ちゃんの部屋だけど……」

「?」

「ここから先がさっき言ってた”(たた)りがある”

 ゾーンになるんだよね……」

「それ(たた)りだしてるのお姉ちゃんだな」


 お姉ちゃんは見たところ二十歳前後だ。

もろにデリケートな時期ではあるが、聖職者が

祟りを盾にしてもいいのだろうか……?


「お姉ちゃーん、おじいちゃんが呼んでる」


 …………


 ガラガラ


「ダーカーラー!! お姉ちゃんは忙しいんで

 パスってさっき言ったでしょうが!!」

「いや、もうその言い訳はノータッチだってさ。

 それで、さっき言った霊障の予防の準備に

 駆り出したいんだとのこと」

「え”-なんで今、忙しいってっつんのに!?」

「どうせまた”編集”ってやつでしょ? それ

 保存とかできないの?」

「今、ネットで話しながら作業してるから無理。

 って言っておいてー」


 それでも巫女服は脱がないんだな、この人は。

多分、業務中は正装を乱さないだったりの

規則があるのだろうな。さっき言っていた

通り「忙しい」ので業務外ではあるが……


「”編集”?」

「あ、私ちょっとイベントがあって……

 …………いや、なんでもない」

「…………」


 ミコ姉、まさかとはおもうが……


 探りを入れるべく、ここはミコに聞いてみる。


「イベントっていっつも”どこ”でやるの」

「いつも同じ場所なのかはわからないけど

 この時期になるとお姉ちゃんはイベントだ

 って言って東京に飛んでいくけど……

 場所が大事なの……?」

「ああ、とーっても大事だ」


 あぁ、なんとなくこの人の性分(しょうぶん)は理解した。

だが、深くは分からないが俺はそんなときに

便利な「魔法の言葉」を知っている。


「お姉さん」

「あ”? 何?」


「サークル名は?」

「”チーム・原揺(バラユリ)”……………


               ……あっ!」

「へー」


 ミコ姉は何も言わず俺のところまで素早く

小走りし、何かに憑かれたように俺の肩を

がっしりとつかんだ。


「あのさぁ、えーっと「悪魔」だっけあんた?」

「お前もその呼び方するのか」

「そんなのどうでもいい。いい? 何か察してる

 様だから言うけどこのこと、そこの馬鹿妹に

 言うんじゃないよ。ましては、あの(じじい)に言うもの

 なら私死ねるから。そのときはあんたと一緒に

 無理心中だからね……」

「一人の聖職者としてその発言は……」


 色々とアウトだろ。


「馬鹿妹! やっぱり手伝うわ。そこの悪魔に

 感謝しなさい!」

「だから「我こそは最(ry」って言ってただけで

 ただの危ない人だってこの人は。そんな呼び方

 しないでよ、一応同じ部活の仲間なんだから」

「いや、ミコ。お前の「危ない人」って表現の

 方がよっぽど失礼だぞ」


 なんでまた俺は傷口をけたぐられなきゃ

ならないんだよ。死体撃ち(はなは)だしいわ!!


 そんなことを言っていたら、いつの間にか

ミコ姉はいなかった。こういう足が速いところは

ミコそっくりだな。それとミコが俺のことを

そうやって紹介してることがよーくわかった。

これはしっかりと覚えておかないと……ねぇ……


「それで俺たちはこれからどこを見回れば

 いいんだよ?」

「うーん……本殿とかかなぁ? でも確かあそこ

 一般人は入れないからなぁ……」


 本殿とは言ってしまえば、その神宮の主格となる

場所である。ラピュタで例えるなら、飛行石

みたいなところだ。なんで今、飛行石で

例えたんだろう俺……? まぁそれはいいや。


 そここそ、こうやって知り合いというコネを

使って入ってみたい場所ではあるが、この感じでは

行けるような雰囲気ではないな。それと、また

俺たちはこの居住スペースから元の本堂に戻る

必要があるのかよ。しかし、何でこういう神宮に

立ち入り禁止みたいなところがあるのだろうか……


「まぁ、ぶっちゃけ作者がイマイチ神宮に

 行ったことない関係で詳しくないっていうのが

 一番、痛手だと思う」

「あ、それ言っちゃうんだ」


 今も、隣で我らがグーグル先生を開きながら

小説を書いているが、これだけではどうにも

イメージがつかず、かなり手間取っているのは

事実ではある。本当に知り合いにミコみたいな

神社関係の仕事をしてる人はいないものか……

あ、いや俺(神前滉樹)じゃなくてリアルの話な。


「そうだミコ、そういや俺が行きてぇ場所

 あったわ」

「え? ギドー君が行きたいなんて意外」

「ちったぁ墓参りぐらいさせろってことだよ。

 確かここん敷地にちっせぇながらも墓地が

 あったよな?」

「ああ、お墓参りね。それなら居住スペースの

 真後ろにあるよ」

「なんでんなとこに墓地があんだよ!!」


 隣が墓地の家って怖いな。いや義堂

もしかしたら逆で「墓地の隣に家を作った」の

ではなく「家の隣に墓地を作った」のかも

しれないぞ。……そっちのほうが頭おかしい

気がするが……


「それにしても義堂の周りで、亡くなった人とか

 いるもんなのか」

「んなたりめぇだろ、不老不死なやつなんて

 いねぇし、そんな奴は「人」じゃねぇよ」

「……」

「あ”? どうした神前黙りこくって」

「いや、なんでもないさ」


 残念ながら、その義堂の観念からしたら俺は

人ではないな。もちろん俺自身もそれを自覚は

しているが、もし仮に俺が「人ならざる者」だと

知られたら、義堂を含めミコは俺のことを

どんな目で見るのだろうか……


 それと、俺はいつの間にこんな”他人の目”を

気にするようになったのだろう。以前は人と

関わる事すら避けていたというのに。


「それでギドー君、その人ってどんな人なの?」

「ああ、俺の昔のダチだよ」

「「え」」

「ま、こうも色々とやって来たんだ。あんときは

 俺もこんなことになるとは思ってなかったが」

「「……」」

「ちっ、何しんみりしてんだよ! そんな悲しい

 もんじゃねぇよ。こいつぁ俺の昔話で、もう

 とっくに終わってるんだよ。それでミコ、

 ”三沢(みさわ) 夏樹(なつき)”って名前の墓はどこにあるか

 っつーのは分かるか?」

「えーっと”三沢”は……こっちだよ」


 ミコと俺はこれに関しては何もできないし、

これ以上義堂から聞くのも野暮だと判断したのか

お互いに見合って無言になった。暴れん坊の

義堂にも色々とあるのだ。あの抗争のように。


 俺たちはミコに案内され”三沢(みさわ) 夏樹(なつき)”と

書かれた墓石の前に来た。もちろんここには

三沢(みさわ) 夏樹(なつき)”の亡霊なんかはいない。


 義堂はこの墓に「5年ぶり」と声をかけ

パン! と手を合わせて頭を下げた。それに

合わせて流れるようにミコと俺も頭を下げる。


「へっ、ガラじゃねぇなこういうこったぁ」

「別にそんくらい常識だろ」

「”常識外れの化け物”に何言ってんだよ神前」

「でも義堂は「人」だろ? だったら大丈夫だ。

 何度でも常識に従えるし、外れもできるさ。

 だから義堂、お前は「人」だよ。こうやって

 死者を弔うっていうのも「人」のすることだろ」

「うるせぇよ。もういいぜ俺は。その……本殿

 っつーとこに行くぞ」

「ああ、そうだな」


 そうだな、俺は何でこうも他人と関わり

出したのかなんとなくわかり始めた気がする。

俺はまた「人になりたい」そう思い始めたの

かもしれない。その言葉はもう遅いというのに、

俺は幻想を抱いているのに変わりはない

というのに、全く面白くて反吐が出そうだが

これも今までにない経験だな。

 

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