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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
空に笑えば
53/446

53.悪魔にさせよう

「********************」


「”具現召喚・ノーティ”」


「…………あのさぁ…… もっと吾輩の意見とか

 聞いてからこういうことしてくれないかなぁ」

「部下の分際(ぶんざい)で何をほざく」

「それ! それ言われたくないからずっと吾輩

 渋ってたのに……!!」


 別に、口が意外と悪いことなんて気にしない。

一度”ヴィーハ”に似たように対応したときは


「マ、マスター……もっとぉ、その薔薇の棘のような

 罵声をこの”ヴィーハ”に……っ!!」


 などと言い出したから、色々とまずいと判断し

それ以来はどの悪魔にも平等に、かつ親のように

悟らせるような話し方を心掛けている。が、

このボスノーティに関してはもう俺の嫌な

部分を見られているため、それを隠してまで

話す必要はない。


「って”ノーティ”って何!!? 今まで無駄に

 英語とかドイツ語から持って来てたのに

 いきなりネーミングどうしたんだよ!?」

「これしかないだろ」

「いやだから”ノーティ”ってなんだよって!?」


 俺は能力をわかりやすくするため俺の眷属の

悪魔には「その能力に関係した名前」を付ける

ようにしている。が、このボスノーティだけは

俺の失態で、一体どの能力が残ったかわからない

まま俺の眷属になってしまった。そのため、

名前を付けるのにもどうしようか考えたが、


「見た目で”ノーティ”ということで」

「いやだから”ノーティ”ってなんだよ!!」


 ”ノーティ”は”ノーティ”だ。”ボス”が抜けて

ついにただの序盤のザコキャラになり下がったが、

相応の名前だろう。それよりも……


「それで、今お前は何の能力を保有してるんだ?

 さっき得意なことを聞かずに眷属にしちゃって

 どの能力が残っているかが見当がつかないんだ」


 さっきのバトルシーンで一回でも拳を交わらせて

いれば、大方のイメージはついただろうが俺は

拳を構える前に勝ってしまっている。


「これによって”ノーティ”から改名するかも

 しれないから”ノーティ”は仮名だと思って

 くれればいい。”ノーティ”はさすがに酷い

 言い方だから”ノーティ”以外の名前をつけて

 やりたいし”ノーティ”お前もそう思うだろ?」

「あんた、「ノーティ」って言いたいだけだろ」


 というか改名ってできるのだろうか……?

改名というのはやったことがないし、最初に

付けた名前で突き通す必要があると確か

前に言われた気もしないでもない……

正直言うと”ノーティ”で別によくね?

というのが本音だ。


「それで、何の能力を持ってるんだ?」

「うーむ…… よくは分からんが……」


 ”ノーティ”は自分の体を眺める。


 本当は事前に聞いておいた得意なことを残す

はずだったのだが、俺が先を急いでしまったため

結局何が残っているのかわからないままだ。

この場合は、霊本人が「得意だと思っている」

能力が残るとは思うが……


「なら、さっき聞き逃した「得意な事」でも

 いい。何かないのか?」

「だったら吾輩、この巨体を生かした「突進」が

 得意だぞ! こう相手の(ふところ)に飛び込む攻撃が

 強烈であるな」


 なるほど。俺とのバトルはそれを披露すること

なく終わってしまったが、本当はそれが自分の

武器であり、得意な事なのか。


「なら、今ぴょーんと飛んでみろ。そうしたら

 自分の今の状況を理解できるだろ」

「わかった。では…………っ!!」


 ビュン……ッ!


 ビュン……ッ!!


「おお、前よりも飛べるようになっている!

 これが貴様の力のおかげということか!!」

「やっぱお前”ノーティ”な」

「いやだから”ノーティ”ってなんだよ!!」


 ”ノーティ”は女子トイレからぴょんと廊下を

跳躍し、軽く廊下の端から端までの距離を飛んだ。

そしてその勢い変わらず廊下の端から、ここ

女子トイレの前まで飛んできた。


 まんま”ノーティ”じゃん。


 ということで改名なくこのボスノーティは

”ノーティ”として俺の眷属となった。言って

無かったが、なぜこいつを眷属にしようと考えた

かというと、別にこいつの能力が今後活躍すると

踏んだわけじゃない。ただ眷属は多いに越した

事はないというだけで、眷属の数はそのまま

その悪魔の価値に直結する。特にネクロマンシー

である俺ならなおさらだ。何かに対してあらゆる

対応策を持っておきたい。それに聞きたいことも

あるからな。


「おい”ノーティ”」

「えー”ノーティ”で通すんだ。別にいいけど」

「この学校内で何か変わったことはなかったか?」

「は? 変わったこと?」

「そう、例えば”屋上に五階が現れた”だったり

 ”この階の廊下に謎の教室が現れた”なんて

 ことを見てないか?」


 ”ロズ”からこれと同じようなことを聞いたが

何分(なにぶん)、”ロズ”は外の銅像に憑いていたため校内の

情報には詳しくはなかった。そのため誰か、校内で

悪魔・霊がいたらそいつから情報を聞きたいと

思っていたが、ボスノーティが釣れるとは思っても

いなかった。


「いや、吾輩もこの部屋で霊となったもので、

 この部屋の外のことはあまり知らないな。

 最近ここで死んだというのもあるし」


 やはりだめか。


 話を聞いたところ、”ノーティ”はここで

息絶えたネズミではあるが元々ここを拠点として

動き回っていたわけではないようだ。多分、

誰かが校内でネズミを見つけ、そのまま捕まえ、

この缶の中に閉じ込め、女子トイレに隠し、

忘れ去られたことで、缶の中で餓死したのだろう。

元々ネズミである”ノーティ”はそこまで

頭はよくなかったため、生前の記憶も

ぼんやり程度しか覚えてなく、とびとびの

記憶の断片から俺が予測しただけであって、

それが本当なのかはわからない。


 が、それはもうどうでもいいことだ。

こいつはもうネズミではなく俺の眷属であり

”悪魔・ノーティ”だ。


 そして、”ノーティ”が問題にならなかった

理由もどうってことなく、ただ単に最近

霊になりたてだったため、問題になる前に

俺が始末したからだろう。


 ……? あれ? こんなに霊って簡単に

現れるものなんだろうか……?


 ……ま、いいや。その度に俺たち「異能部」が

全身全霊で解決に励めばいいか。


一先(ひとま)ず、ようこそ悪魔の世界へ”ノーティ”

 そしてずっと黙っていたが


  俺は「悪魔」だ。半人半魔の神前(こうさき) 滉樹(こうき)だ」

「いや、それとっくにバレてるゥ!!」


 それよりも少しばかり問題ができた。


 それはミコンに骨が格納されたことで、缶の

中の骨がなくなったことだ。本当はミコが

これの成仏をするはずだったため、中から

骨がなくなっているのはおかしい。俺が持ち出した

となれば巫女であるミコからはバッシングが

飛んでくるだろうし、だからって無いまま

缶を渡すのも中身がなく疑われる可能性がある。

しかし、これには一ついいことを思いついている。


 そう、本当に札を貼ればいいのだ。


 そうして「缶を開けるな」と釘を打っておけば

缶の中身を見られることはないし、大丈夫だろう。

それに今さえ乗り切れれば、中身がなくなったと

事がバレたとしても「俺が埋葬した」と

言えばいい。そして、この作戦で一番問題があると

するならば、その札だ。


 仕方がない、札は俺が自作しよう。とりあえず

それを作るために部室の俺のカバンを取りに

行かなければな。


(よし”ノーティ”俺を乗せて部室に行け)

(あいあいさー)


 さっきとは裏腹に従順になったな。いや、単に

強くなった自分の力を実際に使ってみたいだけ

なのだろう。まぁ、俺も歩いて行くべきなのだが

”ノーティ”の背中に乗ってあのスピードで

廊下を駆け抜けたいしな。


 俺は”ノーティ”にまたがる。そうすると

「つかまってな!」と言い、足を踏みしめ

前に吹っ飛んだ。


 ビュン……ッ!!


 おぉ、これは爽快だな。


「着いたぞ」

「おお、ザコキャラのわりにすごいな!」

「え? ザコキャラ扱いだったの吾輩ずっと?」


 俺は部室の中に入り、電気を付ける。別に

電気は必要はないのだが、そこは気分的に

付けたくなったからだ。


「”ノーティ”ちょっとばかしここで待ってろ」

「うむ」


 俺はロッカーからカバンを取り出し、中から

筆箱とノートを一冊取り出す。そしてノートの

一ページを綺麗に切り取り、札のサイズにまで

整える。あとはペンで”それなり”のもの

みたいに作ればいい。が、巫女相手に札を

偽装はできるのだろうか?


 と、思ったがふとさっきの俺のセリフを

思い出した。確かロッカーの後ろに札が

貼ったあったとかなんとか。これはもちろん

冗談で言ったのだが、何気なく本当にそう

だったらな…… なんて考えロッカーの後ろを

覗き込んだ時だった。


 本当に貼ってあった。


 物々しい札が部屋にバッチリ貼られていた。


「? どうしたんだ?」

「……」


 外で”ノーティ”が俺のことを心配している。

俺がこれを見てつい声が出てしまったのに

反応したのだろう。俺もこれ見ちゃったら

「こえぇ!!」って言いたくなるさ。


 って、え? これ使いまわしていいの?


 このタイミングでこれが見つかるってどうぞ

使ってくださいって言ってるようなものだろ。

だが、これははがしても問題ないもの

なのだろうか……? あぁ、ここでまさか

ミコが「使い回しできるの!?」とツッコんだ

意味を知ることとなるとは。


 が、俺は屈しないし、屈する意味がない。

ということで俺はそれを剥がし、缶にべとっと

貼り付けた。よし、これでオーケー!


 ……オーケー……なのかなぁ……?


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