48.学校に行こう
「時は来た……!!
我が、力をここで見せ付けることと
なってしまうとは……っ!!
では!! いくぞ!!
我が、同胞たちよ……っっ!!!」
「うるせぇ! 黙ってろ!!」
時は変わって、今は明日だ。この表現は
よろしくない、というかわけがわからない
から言い直すと、前回から日をまたいだ
放課後で、曜日でいえば金曜日だ。
ってまーた金曜に夜の活動なのかよ。
実はこれがはじめての「異能部」らしい
本来の活動になる。というのも今まで
銅像を祓ったり、学校祭を手伝ったりと
47話にいたるまでにかなりの仕事を
こなしたわけだが、こうやって夜の学校で
活動するのは初だ。今まで何してたんだと
ツッコミたい読者もいるだろうが、まだ
俺たちの部活が発足してからまだ1ヶ月
程度しか経っていないわけで、まだまだ
活動の幅は少ないということだ。未だに
登場キャラも8人しか出ていないため
話も進まないのも無理はない。
ってこれ、ただの言い訳だー。
なんの弁論にもなってねぇー!
「はいはいはい、今回は夜の学校を
探索したいと思います! ……」
「「…………
……はい!」」
俺と義堂は何かを察した。物覚えのいい
部員でよかったなミコ。
「それで、目的だけど
第一目標は鍵の回収!!!
第二に”学校七不思議”を見つける!!
第三に屋上に行きたい!!」
「最後、欲望じゃねーか!!」
お前も思ってたんかい! いや、まぁ
俺も行きたいけど……
俺たちは今は部室にいる。部活動だとしても
こんな時間に学校をうろちょろしている
ところを他の生徒に見られたら、色々と
面倒なことになるからと、活動時間になるまで
部室で待機していてほしいと副会長から
いわれていた。副会長は今日から復帰している。
その理由は単純ではあるが、俺たちを見て
「あw夜、学校にいていいんだwww」
と思われたら、対応に困るからだそう。
そのため俺たちは事前に「部の活動の一環」と
理由づけて生徒会から許可を得ているため
問題はない。そして合法的に夜の学校に侵入
するのもこれが始めてだ。前はミコが壊した
柵の場所から侵入していたが……
俺たちがやったなんてバレてなきゃいいが……
これについては、義堂にも言ってないし。
「それで、生徒会室にどーやって入んだよ。
あそこも閉め切っちまうだろうが」
「おお! ギドー君いい質問するねぇ!」
「……」
なんかうざいな。なんか。
池上彰かよ。
「それは……」
「俺が鍵を開けてある」
ミコがうざいので選手交代。
「あ”? さっき見てきたが、しっかり
閉まってたぜ。俺が鍵をぶっ壊しちm」
「いやーーーーーーーー!!! そんな
ことしなくても問題ないよーー!!」
義堂ならそう言い出しかねないからと
俺とミコで計画してあった。この話から読み
はじめた読者の皆さん、この物語はパンクで
デストロイな話じゃありません。義堂の
この破壊思考が意見として通るほど、この
話は世紀末ではないので、お気をつけて!
「俺たちはこの活動の報告のために事前に
生徒会室に行っているのはしってるよな?」
「あぁ、さっき出て行っただろうが」
さっき、とは言うがもう数時間も前のことで
放課後からここに待機させられて5時間近く
経っている。この間、俺たちは暇だったので
”大宴会”を開催していた。あれはあれで
楽しかったが、それだけやっていたらそれこそ
計画破綻というものだ。
「そのときに生徒会長の隙をついて鍵を
開けでおいたんだ」
「だからいってんだろ、鍵は閉まったまま
だったって」
「違う違う、俺があけたのはドアの鍵じゃない
窓の鍵だよ」
「あ”?」
それもあまり目に付かないまとめたカーテンの
裏側になるような場所の鍵だ。見つけづらいし、
生徒会室の窓は基本的に閉めてあることのほうが
少ないようで、生徒会室は2階にあるから別に
大丈夫だろうと判断したんだろう。
「だがよ、窓開けたところで誰がそこに入る
つもりだったんだよ」
「え? そりゃあもちろん……」
ミコは義堂を指差す。
「って俺かよ!!」
「2階によじ登って入り込むことだって
できるでしょ? ギドー君だもん」
理由が「義堂だから」というのも変な
ものだが今までの義堂の行動や生活で
易々とできそうなのは確かだ。
「ま、できるがその過剰な俺への評価だけは
やめろ。気色悪ぃ」
やっぱりできるんだ。義堂の体力と腕力の
一部を俺に分けてほしいわ。あるいは霊感を
すこしミコに授けてくれ。せめて、”虫以下”
という最悪なレッテルだけははずして
あげたいんだ。
「俺は先に生徒会室前に待機。そして義堂は
開けた窓から生徒会室に侵入して、ドアの
鍵を開ける。その間、ミコは義堂の見守りを
しておいてくれ」
「え? その仕事いる?」
いるって……、せめてできるかできないかの
心配程度はしてやれよ。あるいは、それだけ
義堂の身体能力に信頼を持っているのか……
「一応、深夜に学校の壁をよじ登っている謎の
生徒がいるって話題にされちゃまずいから、
そうならないように周囲の監視をしてほしい。
どうせ義堂そこまで気が回らないだろうし、
誰かひとりいた方がいいだろ」
「ああ、だってよ。頼んだぜミコ」
若干義堂のことを小ばかにした気がするが
当の本人は気に留めていないようだ。前は
「あ”ぁ!!?」とか言われて殺されそうとか
怯えていたが、義堂はそんな野蛮な子に
育てた覚えがないということが分かった。
おやじもばばあもくそとかほざいていた割に
良い教育してるじゃないか。
屋上の鍵……じゃなかった。部室の鍵について
だが生徒会室にあることは確認してある。
さっきも言ったが、生徒会室に赴いた際に
生徒会長が俺たちにブツを見せてきたため、
確信に至った。また、それがどこにしまって
あるのかも確認しているため、生徒会室に
入ってしまえば、かなり楽に事が進むと思う。
そしてそのしまった場所を唯一知っているのが
俺で、生徒会長の気を引く係であったミコは
それを知らない。口でどこにしまったかを
言ってもいいが、別に俺がやればいいだけで
ミコにわざわざ話す必要もないだろう。
「今何時?」
「えーと、12時間表記? 24時間表記?」
「どっちでもええわ」
「んじゃ、21:44」
放課後から5時間近く経っているわけだから
それくらいの時間が妥当だろうな。時期も秋
中旬ということもあって、この部室以外は
すっかりと暗く、人っ子一人として見当たらない。
逆に見当たってしまっては、それこそ俺たち
「異能部」の案件に引っかかるさ。
「そろそろ、動き出してもいいんじゃないか?
遅くなりすぎたら帰りの時間がヤバくなるし
そろそろ、行動に移すか」
「おう」
「あー! ちょっと待って!
この煎餅だけ食べさせて!」
「「…………」」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
ごっくん
ふぅー
「よしっ! 行こうか!」
「うん、やっぱお前リーダー降格」
「なんでェ!?」
そもそも除霊に向いていない時点で
リーダーの素質の”そ”の字もないが、
俺が部長になりたくなかったため
ミコを餌食にした。俺は今まで、その
関係で色々と部長方面の愚痴を言っては
いなかったが、ここでリーダーの降格を
宣言しておきたかった。
だからって俺が跡継ぎでリーダーをやる
つもりはないし、今後もミコには部長として
職務を全うしてもらう所存だ。この
「円満」の御守に誓ってな。だってこの
御守って確かミコの足りない部分を補う
って意味を込めてあるんだろ?
「それじゃミコと義堂は……校庭に向かえば
いいのか?」
「そういうことだな」
「わかった。俺は生徒会室に向かうから
生徒会室の侵入の方は任せたぞ」
「ああ、ちっ、めんどくせぇ」
ごめんな義堂。言えばよかったんだけど
部活始まるまでお前が学校内で見かけ
なかったのが原因だったんだ。学校で
見かけていたら作戦の旨を話せたのだが、
義堂は学校を休んでいたのだろう。抗争が
一段落した今でも義堂はたびたび学校を
休んでいる。理由はどうってことはない、
「めんどくせぇ」からだそう。
それでも部活には一回たりとも休まず
来ている根は真面目君だ。ミコは前に御守を
作るために帰ってしまっているから、
義堂がこの部活で唯一の皆勤賞だ。
……って、俺も皆勤賞かそういえば。
「とりあえず、電気を消して部室から出るか」
俺は率先して、立ち上がり部屋を出た。
それについてくるように義堂、そして最後に
ミコが出てきた。
「……」
「ん? どうしたんだミコ」
「い、いや、なんでも」
……ははーん、なるほど
さっきも言ったがもう時間帯的にも真っ暗で
明かり一つない。それにここは学校であり、
雰囲気は「わけあり廃校」それである。
この子、ビビッてんな。
「まさか怖いのか? 廊下を進むのが」
「まっ、まっさかーwww 私は巫女で暗いとこ
とか全然平気な人ですけどーwww」
「そうか、じゃあ先に行くから義堂も行くぞ」
「すいませんでした。置いていかないでください」
うむ、正直でよろしい。
「おいてかねぇよ。それに俺だって怖ぇんだ。
んなことでビビッてんじゃ、除霊なんて
できねぇだろ、だったらシャキッとしやがれ」
「…………え、ギドー君怖いの……」
「あ、んなわけねぇだろ」
「ちょっと安心したのに!!」
前にお化け屋敷でも言っていたが、こういう
ものはちゃんと「怖い」と言えるし、義堂には
それなりの人としての感覚はある。って義堂が
人外の生物みたいな言い方をして申し訳ない。
とはいっても、顔と態度でそれが出ない屈強な
精神力を携えているから、別にそれで足がすくむ
なんて冗談めいたことになんかはならないようだ。
恐怖にも競り勝つ能力というのは意外と俺たち
悪魔の天敵のようなスキルだ。なんでって、
憑いても全く効果が出ないのだから。
「おら、んな立ちすくんでねぇで行くぞ。
んな調子じゃ、ほんとに部長降格だぜ」
「そ、そんなこと言っても……」
「大丈夫、俺がいんだろ。ちったあ部員っつー
もん信じてみやがれ」
「……うわぁ、ギドー君がかっこよすぎて
私が情けなさ過ぎて見える……」
「……そいつぁイヤミか? てめぇ?」
情けないのはもう承知の事実だ。ここで
悔いるには遅すぎるぞ。
「じゃ、生徒会室で鉢合わせようぜ」
「ああ、くれぐれもバレるなよ」
「行くぞ! ミコ!!」
「よ、よーーーし!! 行くぞー!!」
そういうとミコは思いっきり真っ暗な
廊下をダッシュしていった。それに続くように
義堂も走って行ったが、別に走る必要は
ないんだけどなぁ……。特にここには
霊は一人たりとも見えてないし。
そうはいっても、これから出すのだがな。
ここからは少し楽をすべく、”俺の”力を
使うとしようか。
「*************」
「具現召喚・”ヴァンダー”」




