46.鍵を手に入れよう
「急に呼び止めてどうしたん?」
「いや、ミ……御前さんなしd」
「あー、そういうなんかかしこまった
言い方じゃなくていいから、もっと
いつもどーりにしてくれればいいよ」
確かにそうだ。もうマヤには俺たちが
”仲良く”ミコとかココって呼び合っている
事実は知られているし、ここでいきなりに
他人行儀に振舞ったところで意味がない。
それにマヤはさっきから俺たちにそういう
態度が嫌いだって言ってたな。
「そうか、それでミコにこの話は聞かれたく
ないからこう呼び止めたんだけど」
「何ィ? いやーんコイバナ?」
「違う」
それはない。あってたまるか。
それとコイバナだったら男の俺とするなよ。
女の子同士でやるものだろうがそれ。って
あれ? これってもう考えとしてもう
時代遅れなのかな? はぁ、前回から
「年」を感じるタイミングが多いなぁ……
「じゃなくて。さっきさ、俺たちのこと
どう見えてるんだろうなと思ってな」
「どう……っていうと?」
「俺たちってまだ部活として発足してから
まだまだ歴史が浅いし、その学校祭関係で
やっと基盤が完成した程度に過ぎないだろ。
だから、対外的に見て俺たちがどんな目で
見られてるか知っておきたい、とまぁ
そういう具合だ」
「だからさっき言ったでしょ? 楽しそうな
部活だっt」
「そういう、耳に優しい感想じゃない、俺が今
聞きたいことは。楽しいだけの集まりだ
なんて利益的でもないし、その娯楽のために
消費した「モノ」だって必ずしもある。
マヤはそこんところかなりナイーブっぽいし
生徒会を含め学校内での俺たちの評価を
聞きたいんだ。……ってなんとなく何言われるか
察しがつくからミコに聞かれたくないんだが」
理由付けとしてはこれでいいだろう。こういう
シビアな質問というのは考えるのにも時間が
かかるし、マヤの「企業家思考」を考えると
この質問に対してはてきとうに返事するはずない。
思いつきで質問したわりにかなり、ベストな
選択をしたかもしれない。
「……な、る、ほ、ど、ね……。でもなぁ……
これ私個人の感想になっちゃうけど」
「それで構わないし、お前の性格上それが
本来的な俺たちの評価だろ」
「ふふん、わかってるじゃん。いいよ、生徒会
含めた評価なんだけど、実はわからないって
いうのが正しいわ。が、”まだ”ってだけで
今後……というかそろそろわかるだろうけど
言ってしまえば「微妙」って感じになるかな」
だろうな。
「ま、言っちゃうと人によるけど「除霊? バカ
じゃないの!!?」って意見がとっても多くて
それでいて発足から歴史が浅いって言っても
もう一ヶ月近く経っているわけだし、ふツーの
部活だったらもう活動の大まかな流れができてる
もの。でも、「異能部」はまだ何もしていない。
何もやっていないんだよ。そりゃ何処かしらから
文句の一つ二つ出るに決まってるよね」
「……」
「ある人からしてみれば、「異能部」は別名
「無能部」だとも言われている現状だってことも
事実で。評価が出ていないって言っても……」
「よくはない、ただの予算喰らいって思われてる」
「お、そうそう」
ミコがいたら多分、泣いてたな。これはこれで
この場からミコを離しておく理由にしっかりと
なっているからよしとするか。だが、今こうやって
俺たちが立たされている現状を聞かされるとやはり
心に来るものがあるな。
「……というのが一般的な意見で、ここからは私の
君たちへの評価」
「あれ? さっきのは」
「あれは生徒会とかが部活についての情報を集めた
ときに出た評価を簡略にしただけよ。私は
どーーーーんなときでも中立的な立場で考えるし
そうでなきゃ企業家失格だよ」
今更ながら、てきとうに出した俺からの質問に
ここまで答えてくれているのは非常に申し訳なく
思える。すまないが、俺はあの部活については
どうでもいいというのが本音だ。最初から俺は
夜の学校に”合法的に”入る手段があれば
よかっただけだ。
「部活は作ったけど、活動した形跡がない。それで
いて部室には定期的に集合しているってことを
あわせたらもう、一つしか考えられないでしょ?」
「?」
「君たち、つきあってるんでしょ?」
「はい?」
それは聞き捨てならないな! と思ったが俺も
今までの活動を客観視してみたらそういう結論に
いたる理由もわからなくもない。
「さっき言ったとおり君たちは仲がいい。それも
恋人みたいにね。だってあんな楽しそうに互いに
あだ名で呼び合うってのも小学生じゃないし
彼女彼氏じゃないとできないことでしょ。
それに、今まで君ミコって言わないように
してたのって「こう仲良くしている」っていう
ことを隠したいからなんだなぁと思ってたよ」
「いやいやいや、それは」
「そう言っても、そう考えるのが妥当だよ。だから
なーんか私に聞きたいってことでコイバナかな
と思ってたんだけど」
一話から言ってただけあって俺はそういう
色恋沙汰には関わらないし、関わる気もない。
そういわれた時に俺は何を思ったかというと、
俺は今までうかつだったという自虐だった。
俺は「半人半魔」であってこの世の条理の
裏側にいる存在で、こうもなれなれしく人と
関わっていたという自分の今の現状に対し考えが
甘かったなんて考えていた。
もうミコと約束した3分を超えそうだったし、
そろそろ切り上げるか。切り上げないとより
俺の考えの甘さと相対しそうだから、逃げの一手を
出したいというのが本音だが。
「俺とミコはそんな関係じゃない。だが、俺たちが
何もしていないという事実は変わらず、そう思われ
しまっても仕方がないだろうな……。けどな、
あの巫女は”除霊”すると言ったら”除霊”するし
”助けたい”って言ったら”助ける”ようなやつだ。
いつかは貢献……? とも違うかもしれないが、
なにか「利益」になるようにはしてやるさ。だから
首長く待っててくれ」
「いやぁ、最初っからそのつもりだって! いきなり
「除霊だー」っていって部活つくるだなんて本気に
してないし、誰も君たちに信用なんてないよ」
……それはそれで悲しくなるな。
「けど、付き合ってないっていうことだけわかった
だけいいか。二人が付き合っているっていうのが
本当なら、この二人に首が突っ込めなかった
からね」
「首、突っ込むつもりだったのか」
もうこの鍵さえ手に入れば生徒会とはできれば
(部費とか以外)縁をぶっつり切りたい一身だ。
もうあんな面倒なことはしたくないし、人に
こき使われる”あの”感覚がプライドの高い
俺という悪魔の癪に障るのだ。
「あとさ! 付き合ってるわけじゃないんでしょ?」
「ああ、さっき言っただろ」
「それなら私も君たちのことココとかミコって
呼んでも問題ないよね」
「え? そりゃ問題ないが……」
あ、そうか。俺たちが”付き合っている”から
あだ名で呼び合っていると思っていたのか。なら
義堂もミコって呼んでるし、ミコが二股してる
みたいになるじゃねぇか。
「じゃあココってよんでいい?」
「……ま、いいよ」
「よっしゃ!」
こうもお子様よろしく喜ぶ姿は「企業家」の
面影を見せ付けない。身長も低くて、より
子供っぽく見えるな。可愛らしい。
「話は終わったならとっとと帰るよ! 長々と
話込んじゃったしミコも待ってるよね」
3分を超え5分近くも話していた。これだけ
隙を作ったんだ。ちゃんと鍵奪取の算段は
立っているのだろうか。
「おまたせー」
「あ、やっと話し終わったの? で、どんな
話してたの」
「んーとねー……私がミコって呼びたいって話
……かな?」
「ココのことを?」
「なんで俺がそう呼ばれるんだよ!?」
そうだよね。呼びたい当の本人その場に
呼んでないからそうなるよね。
「ふふん、まぁその話はさておき早く行くよ。
もう、本当に時間が遅くなっちゃうよ」
俺とマヤは車に乗り込み、それを確認した
運転席で待機していた執事がコクリとうなずき、
車が動き出した。一般家庭の目の前でベンツ
隣に話し込んでいた男女というのは一体
どういう状況だったのだろうか……まぁ、
終わった話だ。もうどうでもいい。それと
ミコの様子自体は変わっていないようだが
何をどう準備したのだろうか……
その答えは、屋敷に帰ってときにわかった。
「あ、忘れてたけど、ミコが今鍵持ってるよね?
私に渡してほしいんだけど……」
「あ、あのー……、それが……」
そういうとポケットから鍵を出した。が、
それはもう鍵としては使えない代物だった。
「って!? ええ!? なんでポッキリ
折れてるの!!?」
「イヤー……、それが、ずっとマヤちゃんとココ
話してて暇だったから、この鍵いじってたら
こう、いきなりバキィッと……」
うわぁ、鍵ってこんなにきれいに折れる
ものなのか……。そして、きれいに折れている
というのは鍵の重要な部分であるシリンダーと
かみ合う部分と持ち手部分になっていたからだ。
この折れ方だと確か直せたはず。
あ、なるほど。やっとミコが何をしたいか
理解したわ。
「ごめんなさい……」
「いいのいいの、別にこれって直せるはずだし」
「あのさ、私がやっちゃったことだから、この鍵
直してから学校に向かっていい? そうでも
しないと私の気がすまないというか
なんというか……」
「そんな気にしないでも……」
「ううん、私ってさっき話したとおり「巫女」で
こういうダメなことにはしっかりとした
落ち度をつけないといけないの……」
さっきというのはここに来るまでの道中、
車内で自分の一族自慢になったのがきっかけで
ミコは「巫女、僧侶のエリート軍団一家」を、
マヤは「投機と信頼が売りの町一の企業団体」だ
ということを主張しあっていた。俺は別に
何かすごい一家でもなかったから参加しなかったが。
「だから、この鍵は後で私たちで生徒会室に置いて
くるから、今はこの鍵を」
「甘い」
「「え?」」
「ったく、私がそんな戯言に乗っかると思ってるの?
屋上の鍵がほしいって言ってるって時点でもう
何しようかだなんて予想はつくし、それに活動は
”学校七不思議”の解決だって聞いたら
もう決まりでしょ」
急にマヤは声色を変えて、俺たちに話し出した。
「”謎の五階”
これの解決に使いたいんでしょ、それ?
さっきも言ったけど、ミコとココの行動に以前と
して利益となる部分が見当たらないのよ。
こうも私の考えを理解できている、ココが
これを打ち出したとなれば、そりゃあ疑うし
ココがこんな思考にいたるだなんて今までの
私が関わってきた人物からは対応しない。なら
目的は一つしかないでしょ?
”鍵の奪取”
どう? 当たり?」
「ううん違うよ、それは私が折っt」
「それも嘘でしょ? 実際には見てないけど
私とココが話している間に無理矢理
折ったというのが正しいわ」
「え? だから触ってたら……」
ミコが反論をしようと思ったら、マヤが
それを止めるように鍵を目の前に出す。
俺はミコが何を考えて話しているかよく
わかっていないせいで、横槍をはさむ
ことができない。無理にマヤの猛攻を
止めるのも逆効果になる可能性も考えられ
どの道、俺がここで口出しできるような
立場にいなかった。
「ほらここ、てきとうに触っててもこんな
折れ方なんてしない。これってゆっくり
力を入れて折れた後だから、はなから
折る気で触っていたってことよ」
確かに鍵(の亡骸)をよく見ると
折れた部分にグニッと曲げた後が残っている。
なにかゆっくりと力をいれたような……
「こんなのみて、折れちゃっただなんて虫が
いいことね。私はこう見えても目と直観は
いいんだよね。というか、鍵がほしいんだな
って思ってから注意深く二人を見ていたし、
気付かないわけがない。
だから「甘い」のよ! 生徒会書記兼、
町一の企業家の娘を馬鹿にしないで!!」
俺たちは最初からマヤに見透かされていた
ということか。あの時に、俺との一対一の会話に
乗ってきたのも”余裕で見破れる”という
自信の表れだったのか……
「……って、ごめんね。怒ってはいないよ私。
でも、これからは私含め生徒会の思惑に
外れるようなことはバレバレだってこと。
これがわかってくれればいいよ」
「……」
「ま、この鍵は私が預かるから。鍵を直すのも
こっちでやっちゃうし、もう隙の一つ
だってないよ。だから、悪いけどお仕事は
これでおしまいっ! それじゃ!
あ、後、ミコもココも私のこと嫌わないで!
自分で言うのもなんだけど、こんなことが
なきゃ、私ってフツーの女子高校生だから!
だから、また話そうねーーー!!」
そういうとマヤは屋敷に入っていき、俺たちは
そのまま執事に道案内され、例のドデカイ庭の
外に放り出された。
そう、俺は
俺たちは、
失敗したのだった。




