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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
令嬢にしてはずいぶんと不格好
45/446

45.本当に見舞いに行こう

 俺たちは麻綾……いや、マヤの家、

というか屋敷という方が正しいかもな。

とりあえず俺たちは屋敷を出たと共に

さっき俺たちと応対した執事に車に

案内された。もちろんと言っては何だが

例の縦にながーーーーい車だった。これも

俺含めミコはお目にかかるのは初だ。


「これ私たち乗っていいの……?」

「はい? 何言ってるの? うちで車って

 言ったらこれくらいしかないわよ」

「さ、さいですか……」


 わかるよミコ、こういうの乗るときって

ちょっと躊躇するよな。


「お嬢様、これから六郷様の自宅に向かえば

 よいのですね」

「六郷……? ……あぁ、副会長ね!」


 名前うろ覚えなのかよ。多分、生徒会内でも

あの副会長は”副会長”とかって呼ばせている

風潮なんだろうな。俺だって人間観察のため

気安く話したいが、ああいう雰囲気の人物には

どうにも気安く話しかけるのは戸惑ってしまう。

……というのは俺だけじゃないみたいだな。


「いや、私は別に話しかけるのに戸惑いとかは

 持たないよ?」

「そうか、ミコはそうだな確かに!!」


 そのメンタル、おいらにも分けてくれよ。

だからって「俺は最凶の悪魔”神前 滉樹”!!」

とかはやらねぇぞ。


「\\ババーン//!!」

「効果音出すんじゃねぇ!!」


 やかましいわ!!


 そうも言っている間に俺たちはもう車に

乗り込んで、ソファーと見まがうような

座席に座っている。本当にこれ車かよ。

って初めて乗った人みたいな感情を持った。

隣でミコも「おぉー」とかいってるし

これが正しい反応なのだろう……


「それで、副会長が休むなんて珍しいわよね。

 馬鹿は風邪をひかないって言うけど、逆も

 然りってところかしらね」

「マヤ、あんたけっこう失礼だな」

「というか聞きたいことがあるんだけどさ、

 なんで君たちは私たち生徒会の仕事を手伝おう

 って気になったの? ふつうはこんな思考に

 至るはずないんだけど……」

「そりゃあもちろん、”思考”で判断するのが

 人の本分だからじゃないだろ。助けたいって

 思いがあれば助けるし、頑張りたいって思えば

 頑張ろうって気になるだろ?」

「いや、その「助けたい」って気になった理由が

 イマイチわからないのよ」

「え」

「だって「異能部」って確か学校祭でさんざん

 私たちにこき使われてたんでしょ? そんな

 連中に手を貸そうっていうのがどうにも、納得

 できる話でもないわよ」

「いや、ああ見えて俺たちにとっては仕事が

 もらえるいい機会だって思ってるさ。俺たち

 まだ活動実態がないだろ? 一応俺たちは

 ”除霊”っていうのが本来の活動なんだが、

 そんな簡単に易々と霊障と鉢合わせることなんて

 めったにないし、そういうこともあって俺たちは

 ”お悩み相談”をやってるんだよ。そこに生徒会が

 目を付けてああやってこき使われたんだがな」


 そうは言っているが、学校七不思議のひとつ

”動く銅像”はすでに解決している。だが、副会長に

言った通りこれは公表されていなく、俺たちはまだ

活動実態は学校祭内でしかない。


「だから俺たちの活動を公にするためにあの

 生徒会の”配慮”はありがたかったということだ。

 それに、その分の給料……要はまぁ、部費だな。

 それはちゃんともらったが、俺たちの働きに

 見合ってない十分に多い額をもらっちまったし、

 だったら、もう少し生徒会の力になろうかなぁ。

 というのが本心だな」

「ふーん」


(きれいごとうまいね、ココ)

(うるせ)


 本当のことなんて言えないし、言ったら

それこそ俺とミコが車に乗る理由なんてない。

そして、俺たちは学校祭での一件については

もう腹いっぱいになるほど働いたし、正直

こりごりだ。”あいつら”のために二度と

働いてやるもんか! って意気込みである。


「それはどうにもキレイゴト甚だしいけど

 ま、そーゆーことでいいや」


 キレイゴトってバレているが、俺たちの

本当の目的には気付いてないようだ。が、

こんな目撃者がいる状態で実行に移せる

はずがない。


(どうする……これじゃ鍵取れないぞ)

(諦める)

(判断早いよ!!)


 あきらめんなよォ!

 もっと熱くなれよォ!


((お米食べろォ!!))

(ってんなことやってる場合かよ! なんか

 手を考えねぇと本当に諦めるしかないぞ)

(そんなこと言ってもなぁ……)


「ちょっとさっきから何してるのよ? 鍵が

 どうってどうしたの」

「あ! ああ、鍵は誰が持とうかって話だよ……

 だって俺とミコって副部長と部長だからさ、

 どっちが責任をもって管理しようかって話を

 してたんだよ」

「え? 屋上の鍵は私たち生徒会が管理する

 ことになってるし、今日鍵をもらったら

 私に渡すことになってなかった?」


 ……実はそうである。生徒会長は先に俺に、

副会長の家に行った後にそのまま学校の

生徒会室に向かい、屋上の鍵を渡す

という約束を提示されていた。俺は別に

この約束は問題ないと軽視していた。

副会長の家からの帰りにそのままスペアを

作ってしまえば、本体はもう用済みだ。

生徒会長に渡してしまっても問題はない。


 だが、現状を見てみると俺たちは生徒会

書記に”手厚い”送り迎えをしてもらい、

スペアを作る隙は一切なさそうだ。


(あ)

(? どうした?)

(一つ思いついたけど……ちょっと現実的

 じゃないかなぁ……。この方法使うくらいなら

 息の根止めた方が確実……)

(よぉぉぉぉぉし、その現実的じゃない方法を

 採用しようかぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


 色々と待ってられないし、訴訟沙汰になる

ぐらいなら行動に移すしかない……!!


(って現実的じゃないって何がだよ)


 頑張れば俺は現実的じゃない”奴ら”を出し、

解決を図ることだってできる。というか

こうなってしまった以上これしか方法はない

って思っていた。


(それは……まぁ、ちょいと時間がかかるから

 そんな隙があるとは思えないし……)

(…………


  隙を作ればいいのか? そしたらなんとか

 できるだけの算段ができているのか?)

(え? いや、そりゃまぁ)

(わかった、なんとかするからなんとかしろ。

 もう正直ミコの方法しか使えねぇだろうし……


  っていうか、どんな作戦だよ!! 教えt)


「ってさっきから何ブツブツ言ってるのさ!!

 こっちが寂しいでしょうが!!」

「あ、悪い悪い! いや、なんでも……」


 マヤが俺たちのヒソヒソ話を止めた関係で

俺はミコの作戦を聞ける状況じゃなくなった。

って、マヤさん寂しいからって……可愛らしい

呼び留め方をするじゃないの。


「というか「異能部」って楽しそうだよね」

「「はぁ!?」」


 俺とミコは同時に言った。部の発案者と

現部長が言ってはならない気がするが。


「あのクイズ大会の時だってそうだったけど

 ミコー!! とかココー!! ってずっと

 呼び合ってるからよっぽど楽しい部活なんだ

 ろうなー


  って会長が」

「やっぱりな!!」

「ううん、でもこうして面と向かって話してると

 面白い人だなー! って雰囲気を感じるんだ。

 私たち……っていうか”企業”っていうものは

 こーゆー人たちが好きなんだよねー」


 これを言うと失礼かもしれないが、こういう

人種というのは嫌いだ。特にこういう場面で

にじみ出る。こういう人たちは「最低限度」

という言葉がモットーであって、それに反した

事象には必ず違和感を覚える傾向がある。現に、

さっき俺が「助けたいから助ける」と言った時

「利益相反がない」という的確かつ合法的な

理由で否定してきた。俺も”あっち側”の存在だ

といえば確かにそうだが、相手として、敵として

当たるときにはこれほどまでにダルい奴らは

いないだろう。これだから利益集団というのは

何を考えているかわからないし、何をどう

打ち出すのかもわかったものじゃない。俺個人の

計画をはったおされる気分だ。


 車が止まった。ついたようだな。


「あ、着いた着いた! もー、座りっぱなしで

 体が固まるとバキバキィ!! って関節から

 音が鳴るなぁ……」

「わかるわー」


 容姿はこんなだが俺はとっくに30越えの

おじさんの仲間だ。どうにも、体自体は老いを

感じない割りに、体の細かい”コラーゲン”や

”ヒアルロン酸”とかはやはり使えば使うほど

減っていく構造のようで、特にインターネットの

時代となった今は、座りっぱなしだったり横に

なりっぱなしでよりひどくなっている気がする。

マヤはさっきも言ったが「企業家」で多分、机に

座りっぱなしだったりという経験があるの

だろうな。


 というか小説書き始めてから私もかなり

体に負荷がかかるようになりました。(作者)


「って? ありゃ? 副会長って意外と普通の

 家に住んでるんだ。てっきりもっとマヤん家

 みたいなとこに住んでいるもんかと……」

「すごい印象持ってたんだな」


 ピーンポーン、ピーンポーン


 あー、これこれ!!

 やっぱチャイムはこの音がしっくりくる!


「はい、六郷ですけど」

「おーーい、副会長ー! お見舞いに来たよー!」

「お見舞い?」


 インターホンから声が途切れ、しばらくして

家のドアからガチャっと音がした。本当に

一般的な家だな。副会長が出てきた。


「お久しぶりィー!! どうしたんだー!!

 急に休んだと思ったら、しばーらく学校に

 来ないままで!!」

「マヤ、あなたはなんで……、あ、そうでしたね。

 私が”そうしろ”って言ってたのでしたね。けど

 あなたがくる必要はありませんでしたよ」


 副会長は制服を着ていたが、学校に行くつもり

だったのだろうか。


「何言ってんの!? 友達が休んでいるとなれば

 お見舞いにいくっているのは礼儀でしょうに!

 それに病人を外に連れ出すっていうのもよく

 ないから、私がこーやってはせ参じたの!」

「病人って……


  私、風邪なんて引いてませんよ、別に」


「「「はああああああああ!!!!??」」」


「休んだ理由はいいとして、別に体の調子が悪い

 と言う訳ではないので、会長からの連絡通り

 私が同伴して、学校に向かうつもりでしたよ」


 結局、マヤが来ようが来まいが俺たちは最初から

スペアを作る時間というものはなかったようだ。

だが、副会長が付き添うよりはまだ隙を作る

タイミングはありそうだな。


 理由は……その、なんとなくだ。


「しかし、マヤが来てくれているのでしたら私が

 付き添う必要がありませんね。私も実はまだ

 忙しいのでマヤ、後は任せました」

「がってん!」


 そういうと、副会長は家にまた戻っていき

一つ鍵を持ってきた。あれが屋上の鍵か……


「なくさないようにお願いしますね。なくしたら

 大変ですので」

「そうだねぇ、あの垂れ幕が一生垂れっぱなしに

 なっちゃうからね」


「ねぇちゃーん」


 家の奥から声が聞こえた。弟がいたのか。


「すいません。本当はお茶の一つでも差し上げれば

 よかったんですが……」

「いいんだって、副会長。ほら! 弟……さん?

 ……が呼んでるから早く行ってあげて。それじゃ

 まったねー」

「気を付けてくださいね」


 この間、俺はこのふたりから隙を作ることが

できなかった。なんとしてもここで時間を稼ぐ

必要があるのだが……


「それじゃ、受け取ったことだし帰りましょ」

「えぇ、そうね。それじゃ副会長、また学校で

 会おうね」


 ミコのこの挨拶にはことばで返さず、一つ

会釈をするだけだった。


「ってもう時間も遅くなってるし、早く車に

 乗って!! このまま学校にも行かなきゃ

 いけないs」

「あーっと……マヤ、ちょっといいか?」


 隙を作るとしたらここしかない。俺はミコを

先に車に乗せた。奇跡的にもマヤはその際、

なんとなく、ふと鍵をミコに渡していたため

ミコは今、屋上の鍵を手元に握った状態だ。


(ココ)

(あぁ、分かってる。3分間だけ耐えてやる)


 さて、この富豪娘を食い止めたはいいが

なんの話題を出せばいいのだろうか……


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