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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
令嬢にしてはずいぶんと不格好
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43.見舞いに行こう

「……というわけで、俺たちは副会長の家に

 突撃したいと思う」

「いや、ちゃんとお見舞いと鍵の預かりで

 いいんじゃない?」


 今は数日たった後の、放課後でミコと

帰路をともにしている。


 あ、違うわ。これ帰路じゃないな。

今俺たちは副会長の家に向かっている

ところなのだ。副会長の家に向かう訳なの

だが、簡略にいってしまえば屋上の鍵を

奪取するためであり、純粋に心配で家に

行くわけではない、決して。


「そういえば、なんで副会長のこの仕事を

 受け持ちたいっていったの?」

「それはもちろん、一人の同級生として

 仕事を手伝いたいって思うのは当然だろ?

 それに、学校祭でああやって色々された

 後じゃこんなくらいじゃ別にこんなこと

 手伝うくらいどうってことない」


「うそつけ」

「……い、いや……」

「ココがそんなことで動く人じゃないって

 私、分かってるから絶対嘘ついてる」

「……」


 じーーーーーーっ


 想像以上にこの巫女から俺への認識は

すさんだものになってしまった上に、

どんどんと勘が鋭くなっている。あれ?

こいつ確か、ド鈍感じゃなかったっけ?


 だが、嘘と見破られたがこのまま

突き通してもいいが、別に隠さなくては

ならない極秘事項と言う訳でもないし、

逆に隠しておく方がめんどくさい。

ここは真実を話してもいいだろう。


「本当はなんでなの?」

「……”学校七不思議”覚えてるか? その中に

 「謎の五階」ってやつがあったよな?

 五階が見えるということは屋上がなくなって

 いるんだし、その五階が見えているときに

 屋上に行くことができれば、一体何が

 起きているかすぐにわかるだろ」

「え、でもこの作業が終わったらすぐに屋上の

 鍵は返すんだよ? そんな、パッと五階が

 見えるわけ……」

「だからだよ。そうじゃないきゃ生徒会とか

 先生方に「調査のため屋上に行く」と言って

 ふつうに入れてもらうつもりだったが、

 その通り、すぐに見れるかもわからないもの

 だから「見つけたらすぐに動ける」状態が

 ほしいんだ」

「……ってことはまさか……」

「あぁ、そのまさかだよ。


  屋上の鍵のスペアを作ることが目的だ。


  そうしたら、いつでも行けるし何より

 このことを先生にちらっと言ってみたところ

 夜の屋上は危ないとか言われて、はなから

 屋上に行けない可能性が高かったからな」


 もちろんだが、学校関連の鍵などの備品は

スペアを作ることは校則違反だ。でもな


「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」

「そのとおりだ」


 ミコよく言った。


 それに屋上に行ってみたいというのも実は

本音で、これは理由なんてない。ただただ

高いところに行きたいという少年の小さな

夢の一つだ。30代だけどね俺。


「いいねぇー、私こういうアブナイことって

 結構好きなんだよね、こう見えて」


 こう見えてって……バールで柵

ぶち壊したヤツが何を今さら。


「いいよ、ということは見舞いを装って鍵を

 とってそのスペアを作ることがこの

 訪問の目的なんだね」

「ま、そういうことだな」


 反対されるとは思っていなかったし、協力も

必要ないし、別についてきてもらっても問題は

ないと判断したため、こうやってミコを俺の

ミッションに参加させている。本当のことを

言うと邪魔なためほったらかしたかったが

比較的、清純な心の持ち主であるミコは

俺の「見舞い」を一緒にしたいと言い出した。

「見舞い」と言ってしまっただけあって、

これを断る理由がなくなったのだ。お見舞いは

俺一人でやるんだなんて意味のないことは

いえない。


「それで私たちは副会長の家に向かって

 いるんだろうけど、周りを見た感じ……」

「……あぁ、奇遇だな。考えてること

 俺と同じじゃないか!」

「私たちは」


「「よく似てるね~」」

「「あ! またそろった!」」


「……よし、行くぞ」

「はい」


 ノルマ達成


 それはそうと、俺たちは同じことを

何度も言っているが副会長の家に向かっている

最中だ。だが俺たちは何度、これは住所を

偽った生徒会長の思惑にはまったのでは?

と疑ったか。


 ここは学校からは近いところなのだが、

こっちの方角はあまりいったことがない。


 理由は明確、「敷地内になる」からだ。

誰のというのは言わなくてもいいだろう。

どこぞの富豪の庭になる。それもかなりの

面積の庭だ。まさか……


「副会長って富豪の……」

「ミコ、それ以上は言わなくてもわかる。

 とりあえず入るぞ」


 どんな環境、状況だとしてもこんなでかい

建物にはいる時は緊張する。が、厳密には

まだ庭であって建物はまだ先のほうにある。

俺たちはその庭の入り口にあたるであろう

でっかい門の目の前に辿り着いた。


「本当に副会長ここにいるの……?」

「生徒会長から住所を聞いたんだ。さすがに

 間違ってるはずはないだろ」


 門の隣にあった、インターホンを鳴らす。

門にインターホン? と思うがボタンの横に

「御用の方はこちらを押してください」って

注意書きしてあるし、インターホンで間違いない。


 キンコーン


 うわ、インターホンがなんかすげぇ。

何がとは言わないがとりあえずすげぇ。


「はい、どちら様でしょうか」

「えーーーーー、はい。あのーーーーー

 私「英嶺高校」の生徒でして……」

「あ、はいはい英嶺の生徒さんね。少々

 お待ちください。今扉を開けます」


 ギギギギギギギギギ


 なんだこれ、これこそアニメとか漫画

でしか見たことない代物だぞ。学校の実権を

握っている生徒会というのも珍しかったが。


「このまま直進したらいいんだな」


 門の先にわかりやすく豪邸があり、俺たちは

ここに行かなければならない。しかも「盗み」を

働くために。気が引けてくる……


「いいか? 俺たちは今から鍵の奪取に向かう

 わけだが、何も察されないようにふるまうぞ」

「え、ええ」


 何か言わないとどうもヘマをしそうなため

ミコに”何か”を言った。もう俺はミコに

何を言ったのか覚えていない。


 ガチャアン


「はい、英嶺の生徒さんですな」


 義堂よ。これが執事だ。

すげーー!! 本物(ほんもの)だ! 物本(ものほん)の執事だ!


「こちらでお嬢様が待っています。どうぞ」

「は、はい」


 ミコが俺の腕の裾を引っ張った。なにか

言いたいことがあるようだ。


(あのさぁ、ここ本当に副会長の家なの?)

(ここまで来て何を……)

(ここって確か、うちの学校の運営とか大事な

 ことをやってるとこだったはず)

(え、そうなの)


 ここの富豪はどうにも、うちの学校の

スポンサーをやってくれているということか。

そしてその”お嬢様”は生徒会で手腕を

ふるっているということになる。


(うん、でも副会長ってけっこうキリッと

 してて真面目そうだったけど、こんなとこに

 住んでるなんて聞いたことないよ?)

(そうだな、ミコの短所を丸ごと長所に変えた

 ような雰囲気だな)

(……)


 ノリ良くツッコんでくれない。すねたようだ。


 ではなく、副会長の情報は前も言ったが

俺はあまり持っていないし、知ってることは

”霊とかにちょこっと興味がある”という活用の

仕様のないもの程度しかない。なのにミコは

生活環境の情報を知っているということは、

やはり”女の子同士”だということが重要なの

だろう。男にはわからない情報も女同士の

仲に流れるというんだし、生活の話が出ても

変ではない。


 あるいは、聞いてないというだけであって、

生活については全く知らないだけかもな。

あ、そっちの方が正しい気がしてきた。


 が、正解は前者だった。


「お嬢様、お客様がおいでになりました」

「え? お客様? ってありゃりゃ?

 「異能部」の御前さんと……えーとー」

「………………神前です」

「おぉー神前かぁ! ごめんごめん、一応

 あの大会に出てた人たちは覚えてたん

 だけど、神前はいきなり出てきたからね」


 この人は学校祭で俺たちが優勝した例の

大会でMCをしていた、生徒会メンバーの

一人で同じ一年だ。が……


「生徒会長が俺たちのここに副会長がいるって

 言ってたんだが……」

「はぁ? 何言ってるの? ここは私の家で

 あの副会長の家じゃないのよ?」


 グイグイとまたミコが俺の腕の裾を引く。


(ちょっと! どゆことこれ!!? 副会長の

 家じゃないじゃん!!)

(いや! だって生徒会長がここが……)


 ……あれ? 生徒会長はあの時、

なんて言ってたっけ、俺に。


 …………


「……生徒会長、副会長の家に行きたいのですが」

「え、あー、そうだね……。〇〇〇〇の住所に

 行くといいよ」

「あ、わかりましたー」


 …………


 あ”!! 生徒会長、ここが副会長の家だなんて

一言も言ってねぇじゃねぇか!!!!!!


(……生徒会長、ここが副会長の家だなんて

 言ってなかったわ、そういえば)

(えーーー!? なんでここ来たの私たち!!?)


「ちょっと! 私に何か用があって来たんでしょ!?

 なんで、こっち見ないで二人で話してるの?」

「あー、いやっ! 別になんでも……」

「なんでもって何よ! なんも用無しに来る

 場所でもないでしょ!!?」


 その文句は生徒会長に向かって言ってくれ。

俺たちは知らなかったんだ。そう知らないのだ。


「副会長の家に行きたかったんだけど、ここに

 生徒会長が行けって言ってたからてっきり……」

「あなたたち、表札は見ない主義なの?」

「……」


 すいません、俺たちここに来るまで

「庭でけー」とか「インターホンなんかすげー」

しか考えてなく、表札に一つとして見てません

でした。はい、俺たちの責任ですね。


「……で、会長がここに行けっていってたのね」

「あ、あぁそうなんだが……」


「ま、あながち間違えってはないわねそれ」

「え」

「だって私しかあの子のいる場所しらないもん」


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