表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
前の祭り
40/446

40.ひとまず集まろう

「生徒会長はなんで俺に仕事をやめる

 ように言ったんだ? まだ。待ってる

 お客だっていたというのに」

「あぁ、そいつは”勘”だっつってたぞ」

「勘?」

「おお、話を聞いた感じからどうも神前

 てめぇがいなくても大丈夫だって判断

 したらしいぜ」


 確かにあの”お化け屋敷”は、ほとんど

俺のおかげで大盛況となったが、厳密には

俺はあの場に一切関与していない。会長は

それを”勘”で見抜いたのか……。心底、

おっかない人だ。いつもはそんな雰囲気の

かけらとして見受けられないが。


 というのもあって、俺はまだ”ゲイジー”

”ヴィーハ”、そして”リア”をあの場に

残したまま部室にいる。学校祭の最終日と

いうだけあって本来は、早めに終わる

予定だったのだが、あそこの”お化け屋敷”が

イレギュラーなだけあって、ほかのブースは

もうとっとと撤去されている。


 ”ゲイジー”たち3人は俺がいなくても

しっかりと頑張ってくれる奴らだ。今頃、

残りのお客さんの相手もちゃんとやって

くれてることだろう。それに、俺が持ち場を

離れる時に客の待ちの様子を眺めたが、

生徒会長の入場ストップの影響でもう

数えられるくらいしかいなかった。だから、

あの3人に任せられるなという判断に

至ったのだが。


 そして今は閉幕式の準備だということで

生徒会や実行委員会が裏で色々と準備を

していて、他の生徒らは待機している。

で、「異能部」は部室に集まり、昨日

佐々木が置いていったジュースの

後始末(飲むだけ)をしている。

後で”ゲイジー”たちにも何か頑張った

お礼か何かをあげないとな。


「ったくあれからずいぶん色々と仕事を

 やらされたぜ。な、ミコ」

「う”-、明日筋肉痛になりそうだよ……」


 どうにも俺が”お化け屋敷”にいる間に

本当なら俺がやるはずだっただろう仕事も

やってくれていたそうで、結果として

ミコと義堂は生徒会長にこきつかわれる

ハメになったそうだ。俺も途中抜けて、

その手伝いに行きたかったが、そんな

情報は俺のもとには入ってこなかったし、

第一、それほどあの”お化け屋敷”に並ぶ

長蛇の列はやばかったといえる。


「それで何やってたんだ? 生徒会長から

 その話を聞いてないだけあって、何を

 やっていたのかを知らないんだ」

「花火の準備がほとんどだったわ。なんか、

 サプライズで閉会式に打ち上げるらしい」


 サプライズを部外者に手伝わせるなよ!

とんだネタバレだよ!!?


「それにしても義堂もミコも大変だったな。

 どっちも言ってしまえばコスプレがメインの

 店だっただろ?」

「え? そうかなぁ。私にとってはいつも

 どーりに過ごしただけだったんだけど……」


 は? ミコ何? いつもそんな生活なの?

 いつもそんな奇抜な恰好で過ごしてんの?


「あー確かにそうだったな。全く問題

 なかったなありゃ」


 ……まさか。


「…………


  ちなみに恰好は……?」

「もちろん! 巫女に決まってるでしょ!」


「他の着ろよ!!」


 いつも見てるわそれ!! 学校祭くらい

なにか奇抜なことをしようとは思わないのか!

”読者”と”結構期待してた俺”が今、嘆き

悲しんでるぞ、オイ!!


「もっとメイドとか着ぐるみとかあったけど

 昨日の私の劇を見てた人がいたらしく、

 なんにも言わずに”巫女服”を持ってきて、

 そのまま流れるように着ることに……」

「だがミコてめぇ他の服のどれもサイズ

 合わなかったっつってたじゃねーか」

「しーーーーーっ!」


 小さいというのはこういう時に不便に

なってくるのか。確かに俺も小さいときは

かなり苦労した記憶がある。と言っても

かれこれ20年と前の話だが。


「ちなみに今着てるこれがそのお店で

 着てた巫女服で、「記念」にって

 もらっちゃった。似合ってる?」

「すまん、いつも通り過ぎて気が全く

 回らなかった」


 ミコは部活のたびに持参した巫女服を

着ている。それも一日たりとも制服でいいやと

妥協することなく。そのため、お化け屋敷に

きたときに何もつっこまなかったが義堂は

普通に制服で入っていたのに対し、ミコは

巫女服でやって来たことに俺は何も疑問を

持たなかったし、まさかそれがコスプレだ

なんて思ってもいなかった。ゆえに、俺は

なにかそれについてここで言っていなかった。


 にしてもこの巫女服のクオリティ

すっげぇ高いな。本物かよ。


「それで、義堂の方は何をやってたんだ。

 リピーターが増えたっていうのはなんとなく

 予想がつくがそれ以外でなんか……」

「とくにねぇよ。夕霧からそれさえやってりゃ

 利益になるっつーこと言われたんで、俺は

 ほとんどあそこだったぜ」


 そうか、生徒会長はまず先に考えるのは

「生徒の負担」ではなく「利益」だったな。

その証拠として俺が休みなくあの場で

さんざん働かされたことだ。いい年こいた

30代学生だからこそこの考えに理解を

持つことができるが一般的には反感を

買いそうな思考だな。義堂はそれをしっかり

理解して、生徒会長を慕っているのか、

はたまた全くわからないままいいように

動かされてるだけなのか……


「それでよ、あの喫茶店には夕霧の野郎は

 来れなかったな。今だって忙しくやってる

 ようだし、時間がなかったんだろうな。

 いつ来るもんかと待ってたんだが」


 義堂、それはもうとっくに”目的が達成”

してあるからだ。もう生徒会長は目的の

ブツは握ってあるし、それを助力したのは

この俺だ。


「というか義堂お前、生徒会長に

 会いたかったのか? 見た感じそんな

 ツンデレキャラだっただなんて

 感じられないが」

「なんだぁ? その”つんでれ”っつーのは?

 よくわからねぇが、夕霧の初仕事だっつー

 のはてめぇもわかるよな。だからあの野郎の

 ことだから何か無理でもしてんじゃねぇか

 と思って顔の一つくらい見たかっただけだ」


 前にも言ったが、この生徒会のシステムに

なってからまだ2か月と経っていなく、無論

生徒会長の手腕を振るうのもこの学校祭が

初となる。それを心配するような性格だとは

思えないのだが……そうだな、うん。


 ミコをエスコートしたりと、かなり

ギャップの激しいヤツではあるな。


「花火の準備は私、かなり頑張ったよ!

 なんかわからない筒、一人で10個運んだし」

「それはすごいな!」


 あれって大の男が抱えてるイメージがあるし

大量に運ぶとなると、かなりの重労働のはず。

バール一つで柵を壊すだけの怪力を持っている

のは知っているし、今さら驚くことではないか。

そのあと義堂の運んだ数が50だと聞いて、

ミコの頑張りは影をひそめてしまったが。


 ピーンポーンパーンポーン


「はいはーい、生徒全員校庭に集合して

 くださーい! これから閉幕式を始めるので

 とっとと集まってくださーい!!」


 昨日のクイズ大会のMCだったなこの声の人。

多分生徒会の人なのだろうが、あの大会の

まえから俺と一切面識がないし、どんな

奴なのかはわかっていない。今の段階で

わかることは、かなりキャラの濃い人物だと

いうことぐらいか。


「あ、準備終わったんだね。いこっか」

「あぁ、そうだな」


 開催式を俺たちはちょこっと遅れて参加した

こともあってできれば、終わりくらい普通に

参加したい。と思ったが、何かを

忘れているような…………あ。


「あ、お化け屋敷に”忘れ物”をしたから

 先にいってていいよ」

「? 私も行こうか?」

「あ! いや、いいよ! 先に行ってろ」

「ミコ、あいつもああいってんだ。別にここで

 立ち往生する意味はねぇだろ。行くぞ」


 そういって、義堂とミコは先に校庭に向かった。

さてと、俺は”あいつら”がまた学校七不思議の

一つに食い込まれる前に回収しておかないと。


(…………あ、マスター)

(ふぁああ、おっそーいマスター)

(あぁ、悪いな。なんか問題なかったか?)

(んー? 別にー?)


 お化け屋敷、というかもう撤収が軽く済んで

もうその原型は残ってないが”ゲイジー”と

”ヴィーハ”と……あれ?


(おい、”リア”はどうしたんだ?)

(え、そこにいるよ)


 !!? ”リア”がよく見たら俺のすねに

ガシッとしがみついていた。普通はこれは

「足に感じる謎の重み」みたいな案件なの

だろうが、これは意味が違うな。


(”リア”どうした? そんな子供みたいに。

 お前は一番真面目でこいつらをまとめれる

 って思ってたんだが……)

(マスター、あなたは私たちのことを

 捨てないよね……?)


 ? 捨てる? この悪魔の俺が?


(もちろんだろ。俺を誰だと思ってるんだよ。

 もうかれこれ20年以上も悪魔として

 お前らの世話をしてきて、お前らに逆に

 世話をされてきたんだし、そんな簡単に

 捨てるわけがねぇだろ)

(そうか……よかった……)


 今まで”リア”を含めこの3人との付き合いは

長いが、こうも”リア”が気を乱したのは

これが初めてだ。俺が何かしたのか?


(どうしたんだよ急に? 夢で俺がお前らを

 捨てるなんてことがあったわけでもないし)

(それがねぇ……、あの”ゲイジー”の言ってた

 「変な客」が来て、マスターが私たちに

 この場を任せてからずっとこんななのよー)


 ”リア”の代わりに”ヴィーハ”が言う。


(何あったか知らないけど、どーもマスターが

 もしかしたら私たち眷属を捨てるんじゃないか

 って心配してた様子だったよ)

(は? 俺はそんなこと……)


 ……いや、そう思われても仕方がないか。

だって今まで一人で生きてきて、仲間と

言えたのがこいつらを含む「悪魔・霊」しか

いなかった。それが今、久しぶりに

こうやってミコンから呼んだかと思えば

今まで縁のなかった「人間」と仲良く

話しているんだ。人の常識で例えると、


「久しぶりに会った恋人が、別の人と

 仲良くやっているところを見せられた」


 ということだ。さらにわかりやすく言えば

俺は浮気をしたということになる。そりゃ、

間違いなくこう心配するのも無理はない。


(で、マスターあの人たちとどんな関係

 なの? 私も気になってたんだけど、

 聞くのも野暮かなぁと思って聞かなかった

 んだけど”リア”がこんなんじゃねぇ……)

(……あいつらは、「人間」の中でも俺に仲良く

 してくれてる奴だ。だけどな、俺は悪魔だって

 しっかりとわかっているし、深く関わる気は

 ないよ。関わったとしてもお前らを捨てる

 なんてことはしないし、お前らが捨てられる

 時は俺が死ぬときだと思ってていい。

 …………これで、いいか?)

(ふーん、だってさ”リア”。よかったね)


 俺は何度もしつこいが悪魔でどこまでも

救えない存在だ。だからこそ居場所を作って

もらったやつらにはそれなりの対価を払う

べきだと思ってる。それが”ゲイジー”たち

悪魔だろうが、ミコのような人間でもだ。


(それと、お疲れさん。俺の勝手な理由で

 こんな真昼から呼んじゃって……)

(そのセリフ遅いよマスター! もっと

 早くに言ってくれれば元気だったのにー。

 といってももうこの部屋だけじゃなく

 外の方も暗いし、目が冴えちゃったわ)


 暗くて目が冴えるというのは変な感じが

するが、悪魔含む夜の住人にとっては

常識的なものだ。今日はきれいな夜だ。

雲一つなく満月がくっきりと見える

良い夜だ。さぞ、花火も映えるだろうな。


 ピーンポーンパーンポーン


「これから閉幕式を始めまーす! これから

 生徒会長の最後のあいさつがありまーす」


 あ、閉幕式が始まってしまった。

 また遅刻か俺は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ